大都市、神奈川県川崎市を24時間、災害から守る中原消防署。中でも、過酷な現場で人命救助にあたるのが特別救助隊、通称「レスキュー隊」だ。

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1分1秒が明暗を分ける水難事故 救助の一部始終

2022年9月、午後4時過ぎ。出動要請が入った。

水難事故の出動要請(2022年9月、午後4時過ぎ)
水難事故の出動要請(2022年9月、午後4時過ぎ)

「救助指令。水難事故。河川。指定出場。内容については、川に飛び込んだとの内容」

レスキュー隊 隊長:
川に飛び込んだって。ホット(緊急事態)だよ!

水難事故は1分1秒が明暗を分ける緊急事態。現場へ急ぐ。到着したのは、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川。

レスキュー隊 隊員:
わかりますか?

流されないよう必死に耐える女性
流されないよう必死に耐える女性

女性は高さ約15メートルの橋から川に落ち、流されまいと橋脚にしがみついていた。

この時、すでに川に落ちてから10分が経過。女性の体力が心配される。すると、そこへ無線が入った。

指揮隊:
幸水難救助隊にあっては、敷地内河川敷内には1分で到着。

1分後に水難救助隊が到着するとの連絡が入った
1分後に水難救助隊が到着するとの連絡が入った

レスキュー隊 隊長:
残り1分で水難救助隊到着するから。とりあえず入水準備はしといて。

レスキュー隊 隊員:
了解!

女性に声をかけ励ます隊長「そのまま絶対、しがみついて離さないでね。絶対助けるよ!」
女性に声をかけ励ます隊長「そのまま絶対、しがみついて離さないでね。絶対助けるよ!」

レスキュー隊 隊長:
もうすぐで救助隊そっちに行きますからね。頑張りましょう。絶対助けるから。そのまま絶対、しがみついて離さないでね。絶対助けるよ!

女性に声をかけて励ます隊長。水難救助隊が到着した。

水難救助隊が到着、状況を説明する「すぐ流されちゃうかもしれない」
水難救助隊が到着、状況を説明する「すぐ流されちゃうかもしれない」

レスキュー隊 隊員:
今もう橋の橋脚につかまってて。すぐ流されちゃうかもしれないので。

水難救助隊:
了解。今行くよ!

水難救助隊が女性を助けに向かう
水難救助隊が女性を助けに向かう

隊員はすぐ、川の中へ。

レスキュー隊 隊長:
今、水難救助隊そっち向かってるからね。もう少し頑張りましょう!もう少し。

2人がかりで急いで救助へ
2人がかりで急いで救助へ

別の隊員も続き、2人がかりで急いで救助に向かう。そして…。

女性の足に異常はなく、歩いて救助することに
女性の足に異常はなく、歩いて救助することに

水難救助隊:
OK、歩行可能!

女性の足に異常はなく、歩いて救助することに。しかし、長時間水の中にいたため、女性の体温は…。

長時間水の中にいたため、女性の体温は低下
長時間水の中にいたため、女性の体温は低下

水難救助隊:
低体温感じるので、先にあげたほうがいいと思います。

レスキュー隊 隊長:
了解。

一刻も早く川から引きあげないと危険だ。

レスキュー隊 隊長:
(女性の)足大丈夫そう?ここ上がれそう?

岸に上がれそうか、隊長が確認
岸に上がれそうか、隊長が確認

水難救助隊:
ちょっと厳しい、担架がほしい。

すぐに担架が用意され、通報から20分で無事に女性を救出することができた。

レスキュー隊 隊員:
そこに座れます?

レスキュー隊 隊長:
ゆっくりでいいですよ、ゆっくり。

レスキュー隊 隊員:
痛い?どっか痛いですか?

救助された女性:
大丈夫です。

体が冷え切り、女性の顔色は真っ青 「ゆっくりでいいですよ」と声をかける
体が冷え切り、女性の顔色は真っ青 「ゆっくりでいいですよ」と声をかける

レスキュー隊 隊員:
頭気をつけてくださいね。

救助された女性:
はい。

レスキュー隊 隊員:
ゆっくり。ゆっくりでいいですよ。

体が冷え切ってしまった女性の顔は真っ青。その後、救急車で病院に搬送され、命に別条はなかったという。

住宅街で不審物 「変色あり!」液体の正体は

2022年10月、日の出前の午前5時前。不審物が放置されていると通報が入った。

不審物が放置されているとの通報
不審物が放置されているとの通報

レスキュー隊 隊長:
内容は駐車場敷地内。「塩酸」と書かれた2リッターのポリタンクが放置されているとの内容。

住宅街の駐車場に放置されていた
住宅街の駐車場に放置されていた

現場は住宅街の駐車場。そこに放置されていたのは、4リットルのポリタンクだった。さらに近づくと、容器には手書きで「塩酸」と書かれている。

容器には手書きで「塩酸」とある
容器には手書きで「塩酸」とある

レスキュー隊 隊長:
近づかないように。まだ何かわからないので。1回、救助でガス検知器やります。あと周囲に他に何かないか、塀の向こうとか確認してください。

「近づかないように。まだ何かわからないので」
「近づかないように。まだ何かわからないので」

中身が飛び散る危険もあるため、袋をかぶせる。現場周辺には規制線が張られ、早朝の住宅街は物々しい雰囲気に包まれた。そして…。

現場周辺には規制線が張られた
現場周辺には規制線が張られた

レスキュー隊 隊長:
加賀屋と窪田士長、マイクロケム(化学防護服)着装してもらって。

不審物の中身を調べる隊員は、化学防護服と空気呼吸器を装着する。

不審物の中身を調べる隊員(右)は、化学防護服と空気呼吸器を装着
不審物の中身を調べる隊員(右)は、化学防護服と空気呼吸器を装着

レスキュー隊 隊長:
活動時間は15分。現在時刻は午前5時59分、レギュ設定。5時59分、隊員2名進入します。

万が一のことを考え、風下を避けながら不審物に近づく。

レスキュー隊 隊長:
午前6時01分、キャップ開けるよ。ゆっくりでお願いします。キャップ開放了解。液体の色って見えます?

キャップを開け、液体の色を確認
キャップを開け、液体の色を確認

レスキュー隊 隊員:
透明!フタを開けていると、うっすらずっと蒸気。

レスキュー隊 隊長:
蒸気が出てくる?

レスキュー隊 隊員:
ずーっと継続で出ています。

レスキュー隊 隊長:
了解です。

液体が酸性かアルカリ性か調べる
液体が酸性かアルカリ性か調べる

液体が酸性かアルカリ性か調べるため、pH試験紙を差し込むと…。

レスキュー隊 隊員:
変色あり!

レスキュー隊 隊長:
変色あり、了解です。

レスキュー隊 隊員:
紫色。

すぐにpH試験紙の結果を確認する。

pH試験紙の結果を確認
pH試験紙の結果を確認

レスキュー隊 隊長:
強酸だな。

皮膚に触れるだけでやけどする、危険な液体と判明。果たしてその正体は?

化学物質などの特殊災害に対応する、通称「スーパーレスキュー隊」が応援に
化学物質などの特殊災害に対応する、通称「スーパーレスキュー隊」が応援に

するとそこへ、化学物質などの特殊災害に対応する特別高度救助隊、通称「スーパーレスキュー隊」が応援に駆けつけた。

すぐに特殊な機械を使って、不審物の中身の特定を始める。結果は…。

特別高度救助隊:
硝酸アンモニウムで出ました。

検知されたのは、爆発物の原料にも使われることがある「硝酸アンモニウム」を含む液体だった。特殊な薬品で中和させ、危険性をなくしていくことに。しかし…。

レスキュー隊 隊長:
何が反応してるの!?

突然、あたりに警報音が鳴り響く
突然、あたりに警報音が鳴り響く

突然、異常を知らせる警報音が住宅街に鳴り響く。近くの住民にも不安がよぎる。何が起きたのか?

実は、中和するときに発生したガスに反応したのだ。そして、中和作業を続け約30分。ようやく危険性がないレベルになった。

ようやく危険性がないレベルに
ようやく危険性がないレベルに

周囲の安全も確認され、規制線も3時間ぶりに解除。その後、不審物は警察に引き渡され、放置された経緯などを捜査している。

不審物は警察に引き渡された
不審物は警察に引き渡された

過酷な現場で日夜、人命救助にあたるレスキュー隊。その活動に終わりはない。

(「イット!」12月6日放送)