11月25日、新潟県長岡市のごみ処理施設で作業をしていた30代男性が倒れてきた扉の下敷きになり死亡した事故。施設のずさんな管理体制が指摘される中、遺族はNSTの取材に対し、「人災だったのではないか」と、怒りの声をあげている。

ごみ処理施設で亡くなった男性の遺族「悔しい」

阿部和紘さんの母・由香里さん:
返してほしい。悔しい

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阿部和紘さんの父・均さん:
せがれの命が奪われたというのは、ただ、ただ悔しい

悲しみの中、悔しさを口にしたのは、倒れてきたごみピットの扉の下敷きになり、37歳の若さで亡くなった阿部和紘さんの両親。

亡くなった阿部和紘さん
亡くなった阿部和紘さん

父・均さん:
最後に力を振り絞って「助けてくれ」ということを伝えたらしい

事故があったのは11月25日。長岡市が管理するごみ処理施設、鳥越クリーンセンターで作業をしていた阿部さんは、倒れてきた重さ約700kgの鉄の扉の下敷きになり亡くなった。

父・均さん:
自分の子どもでなんだけど、笑顔がいい子どもだと思う

母・由香里さん:
あの子の生命のロウソクの火を誰が消したのって。大事な私の息子

真面目で責任感の強い性格だったという阿部さん。仕事のために様々な資格を取っていて、2023年2月にも新たな資格取得に向け、試験を受ける予定だったという。

母・由香里さん:
一生懸命勉強しているのに、試験も受けられない

2年前から起きていた不具合 事故発生まで放置

いったいなぜ、若い尊い命が奪われなければいけなかったのか。その原因の一つに、「施設の老朽化」があったとみられている。

記者リポート:
ごみピットの扉は2020年から不具合が発生していて、自動で開閉することができず、常時開けていた状態だったということです

2020年から発生していた扉の不具合。しかし、事故が起きるまで、その不具合は放置されたままだった。

長岡市 環境施設課 平澤秀康 課長:
ごみを投入している箇所になるので、それを市が把握していないということはあり得ない。安全に十分注意をして使用する、開閉は基本的にしないという形で使用してきたのが実態

扉を新しくするためには約2000万円の費用が必要だった一方、施設は2024年には閉鎖する予定で、不具合が解消されることはなかった。

長岡市 環境施設課 平澤秀康 課長:
取り外しや設置に何日もかかるとなると、その間、焼却を止めざるを得ないという状況が発生。逆に運転管理上支障が大きいということでこういう選択になったと思う

すでに外れていたもう1枚の扉 遺族には知らされず…

さらに、事故が起きる約20日前には、今回の事故とは別の扉がすでに外れていた。

出入りする業者:
事故を聞いて初めて、「先に1枚落ちていたんだな」と気付いた。最初は何がこんなところに置いてあるのかなと

鳥越クリーンセンターのゴミピットには観音開きで扉が2枚あり、そのうち1枚が11月3日に外れ、ごみピットに落下。もう1枚の扉は、このときもそのまま放置され、結果として11月25日に事故が起きてしまうことに。

そして、この事実を遺族は知らされていなかった。

母・由香里さん:
11月3日に1回外れていたの?

記者:
左側が。今回外れたのは右側

父・均さん:
なおさら責任問題。信じられない。そんなの初めて聞いた

母・由香里さん:
あまりにもかわいそう過ぎて。防げたんじゃないって。片方だけ取れているのだったら、もう片方も取ればそれで済んだこと

父・均さん:
色んな要素が招いた人災だと思う

遺族からこみ上げてくる怒り。遺族は長岡市や阿部さんが所属していた企業に対し、誠実な説明を求めている。

父・均さん:
古い建物・施設ほど保守管理というのは大切になってくる。その辺がどういうふうにされていたのか、教えていただきたい

母・由香里さん:
警察から結果が出るまで何も聞かせないんじゃなくて、結果が出る前でも、私は色んなことが聞きたい

警察は扉が倒れた原因はネジの緩みか老朽化の可能性があるとみて、業務上過失致死の疑いも視野に捜査している。

(NST新潟総合テレビ)

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