野球でもサッカーでも…
野球はスリーアウトで攻守が交代します。サッカーはボールを奪い合い、ボールを支配した方が攻撃側になります。
例えば野球の試合で、一方のチームが守備ばかりで9回まで戦い、1点でも取られたら相手チームの勝ち、0点に抑えたら延長戦、これはもう野球ではありませんね。
例えばサッカーの試合で、ボールを支配しても自陣から出てはいけないとなったら、スコアレスドローで勝ち点1を狙うしかないわけです。
専守防衛って何?
日本の国防の基本方針は「専守防衛」です。
その専守防衛について政府はこう説明します。
「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し,その防衛力行使の態様も,自衛のための必要最低限度にとどめ,また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」
攻めるは易く守るは難し
北朝鮮によるミサイル発射が本格化しだしたころ、日本は警戒のためにイージス艦を各所に派遣配備しました。海上自衛隊だけでは足りない部分は米海軍のイージス艦がカバーし、アメリカを通じて韓国とも情報を共有しました。

ミサイルは、いつ、どこに向けて発射されるのか?逆に言うと、ミサイルを撃つ側は、好きな時に好きなところを狙って発射できるのです。
野球でいえば、バッターボックスに立つのは1人だけど、守備側には9人の選手が必要だ、ということです。
専守防衛は「持久戦」「消耗戦」
専守防衛は、相手国があきらめるまで守り続ける戦略です。それは相手があきらめたことを確認するまで続く持久戦です。
その間、食料、燃料、弾薬を消費し続ける消耗戦でもあります。消耗するのは「モノ」だけではありません。最前線に立つ人員から一般国民に至るまで心身ともに消耗することにならざるを得ません。
必要最低限度の防衛力とは?
「防衛力の行使を必要最低限度にとどめる」「保持する防衛力は必要最低限度に限られる」といいますが、核弾頭を搭載した弾道ミサイルに対する必要最低限度の防衛力とは、具体的にはどの程度のナニなのでしょう。
そもそも戦力を持っていいの?
国際紛争解決のために相手国が武力を行使してきたら、日本も武力を行使できるのか?
日本国憲法は「国権の発動たる戦争」を放棄しているが、自衛権の行使は認めている、と解釈されています。「国際紛争解決の手段としての武力行使」を明文で禁じているにもかかわらず、自衛のための実力行使は認めていると解釈されています。

「陸海空軍その他の戦力は保持しない」と書かれているのに、自衛のための必要最小限度の実力は戦力に当たらない、と解釈されています。
憲法に出てくるのは「戦争」「国際紛争」「武力」「戦力」という言葉です。
政治の場では「自衛力の行使」「自衛のための実力」という言葉で語られます。戦力はもてないけれど、実力はもてる。武力は行使できないけれど、自衛力は行使できる。
なんとも理解に苦しむ言葉遊びではありませんか。
自衛戦争の意思と能力を
「国権の発動たる戦争」はできないけれど「自衛のための戦争はできる」ということをきちんと確認した方がいいと思います。
自衛戦争を遂行するにはそのための戦力が必要です。言葉でごまかさないで、憲法で明らかにした方がいいと思います。

しかし、戦力があれば戦争ができるわけではありません。また、戦力があっても戦争はしないに越したことはありません。
誰かが守ってくれることに依存しないで、自らできることをする気を養いましょう。
他国との協力は大切ですが、それにはまず独立、自立が必要ですから。
【執筆:フジテレビ解説委員 岡野俊輔】