おばあちゃんの古着がおしゃれなスカーフやバッグに変身だ。使わなくなった着物などを細かく裂いて織り込む“裂き織り”という伝統技法を受け継ごうと、活動している女性たちがいる。そのココロは「物を最後まで使い切る精神」で、まさにSDGsな織物といえそうだ。
裂き織り歴15年の女性が教え子と作品展
静岡県松崎町の大沢地区にある、江戸時代に建てられた旧依田邸。

ここに服やバッグ、スカーフなどの作品、約100点が展示されていた。これらは全て、裂いた布を織り込んで作られたものだ。

裂き織りの会研究会 副代表・曽根 冨喜子さん:
裂き織りというのは昔の人が着ていて使えなくなって、いわゆるゴミ(を再利用する)。例えば旅館等はシーツや浴衣がいらない、産業廃棄物になる。おばあちゃんたちが散々着て、もう着なくなったような物を再生させようと

作品は、伊東市に工房を構える、裂き織り歴 約15年の曽根冨喜子さん(81)と、曽根さんの教え子で松崎町の伊豆学研究会・裂き織り部のメンバー12人が制作した。
古着の生地を細かく裂いて再利用
裂き織りは裂いた生地を横糸にして、麻布などの縦糸と一緒に織り上げる技術だ。

古くなった浴衣や着物などの縫い目をほどいて端切れにし、その生地を細く裂いて再利用する。

作品展の来場者:
1枚の布を裂いてまたそれを糸にしなければならないから、皆さんすごい大作だと思います。大変だと思います。今、お聞きしたらこれは浴衣生地ですって。だから本当にリサイクルで良いですよね

別の来場者:
(布を)ただ裂いてやるのかなと思っていたのですけど、それをまた1本1本の糸にするというのが、すごい工程だなと思います
起源は布が貴重な江戸時代 「もったいない」から
裂き織りは、綿や絹などが貴重だった江戸時代に破れた布をほどいて織り直す「もったいない」という、物を大切にする発想から生まれた。
裂き織りの会研究会 副代表・曽根 冨喜子さん:
江戸時代は(裂き織りが)盛んだったみたいですよ。普通の人たちは、布が無かったからね

この日、旧依田邸では月2回の「裂き織り教室」が開かれていた。
曽根さん:
もう一回、この布を入れる。こうやった時に、ここで押すような形にしていかないと
色の組み合わせやバランスなどを考えながら、織り上げていく。

裂き織りの会研究会 副代表・曽根 冨喜子さん:
この生地は本当にやわらかい。(Q裂き織りの布はそうやって裂く?)古ければ(手で)、切れないものはハサミで。これなんか手でちょっとやっただけで裂ける。横糸が細いから(裂きやすい)
織る前には想像できないユニークな柄に
裂いた布の色や柄は様々で、織っていくにしたがって新しい柄が生み出される。
独特のデザインが、あたたかみを感じさせてくれる。

裂き織り部メンバー:
(Q.元の布は何ですか?)着物です。(裂き織りの良さは)使えなくなった物が再生できるところだと思います。捨ててしまえばゴミにしかならない物だと思いますけど、ちょっと穴のあいたような物でも布に再生できるという所が(良い)

裂き織り部メンバー:
布とまた違った感じにできますよね。布の柄も大きな柄が、また違った感じの布になる。限られた資源をとことん使っていかなければ、これからの世の中、ダメじゃないかなと思いますけど
“物を最後まで使い切る “を広げたい
曽根さんや生徒たちが裂き織りに魅せられた理由は、物を大切にするという考え方と、織る前には想像できないユニークな柄を作り出せることだという。

裂き織りの会研究会 副代表・曽根 冨喜子さん:
やっぱり“物を最後まで使い切る “という精神が、この裂き織りの精神。そしてここ(教室)で何年間も(裂き織りを)やってきた人がまた近所で教え、そうやって広がっていくといいなと思います

デザイン性のある服やバッグなどが安く手に入る時代だが、この裂き織りの作品が、忘れかけていたモノを大事にする気持ちを思い出させてくれる。
(テレビ静岡)