乳製品の値上げは消費者にとって痛いが、酪農家もまた苦境に立たされている。円安やウクライナ情勢で輸入のエサ代が2倍以上に急騰し、年間の負担が3500万円増えたそうだ。廃業に追い込まれた人もいる。エサ自給を試みるが追いつかず、酪農家は消費者に協力を求めている。
乳製品値上げ 消費者も苦しいが酪農家も苦境

2022年11月から値上げされた牛乳などの乳製品は318品目。
生活を直撃し、家庭に大きな影響を与えている。

消費者:
牛乳は毎日飲んでいる
消費者:
毎日飲むから(値上げは)痛い
しかし深刻な痛み、打撃を受けているのは別の場所でも…。

DOI FARM・土井 良太 牧場長:
今 ウクライナ情勢や自然災害の影響もあり、自分が就農した時よりも飼料の価格が倍近く上がってしまって、このままの状態はとても不安です

不安を口にするのは、静岡県富士宮市で酪農を営むDOI FARM(ドイ ファーム)の土井良太牧場長だ。
輸入に頼るエサ 円安などで年3500万円の負担増加
ウクライナ情勢や歴史的な円安の影響で輸入に頼るウシのエサ代が高騰していて、酪農家は苦境に陥っている。

DOI FARM・土井 良太 牧場長:
1kg乾草が45円だったのが今は100円になったり、配合飼料は35円だったのが80円台にまで値上がってしまって、大変厳しい状態になっています

ウシは乾草のほかトウモロコシ・大豆などの配合飼料を食べていて、その量は一日1頭あたり20kgから30kg。
土井さんの牧場では約100頭の乳牛を育てていて、エサ代だけで去年と比べ年間3500万円近く負担が増しているという。

このため牛乳メーカーも生乳の買い取り価格を1リットル105円から115円に上げたが、負担分をまかなうまでには至っておらず、2022年に入り近隣の酪農家は2軒が廃業に追い込まれた。
負担軽減へエサ自給の取り組み
DOI FARM・土井 良太 牧場長:
これはこの地域で育てて収穫したトウモロコシの発酵飼料。ウシにとってはとても貴重な飼料になっている。これをたくさん作って、エサ代を下げるために取り組んでいる

少しでもエサ代をカバーしようと行っているのが、耕作放棄地を活用したトウモロコシの栽培だ。
また稲作農家に協力してもらって稲わらを回収し、飼料に充てる取り組みも行っている。

DOI FARM・土井 良太 牧場長:
自給飼料で何とか頑張っているが、それでも輸入に頼らなければならない状況
酪農はかつてない危機にさらされている。
「値上げでしんどいだろうけど、牛乳を買って」
土井さんはピンチを乗り切るための取り組みを始めたばかりで、エサは輸入に頼らざるをえず、消費者の協力が必要と訴える。

DOI FARM・土井良太 牧場長:
(消費者の皆さんも)値上げで買うのもしんどいかもしれないが、そこを何とか牛乳を買ってもらい、酪農家の手助けになるために牛乳を飲んでもらうことをお願いすることしかできません

県内外の「酪農」と「乳業」を支え守るには、行政の支援に加え、私たち消費者の理解や協力が欠かせなくなっているようだ。
(テレビ静岡)