福井県の漁港に水揚げされるズワイガニ「越前がに」。

越前がに(提供:福井県水産試験場)
越前がに(提供:福井県水産試験場)
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この「越前がに」の今シーズンの漁が福井県で11月6日に解禁された。

福井県水産試験場による2022年度の「越前がに」の漁獲量予測は、21年度比で雄は5~15%の増加、雌は10~20%増加となり、昨年度に続いて、2年連続の漁獲量の増加を見込んでいる。

これまでの漁獲量をみてみると、福井県内のズワイガニの漁獲量は1964年度に1091トンあったが、乱獲の影響で徐々に減り、1970年代~80年代には200トン台の年もある。

2001年度は628トン、02年度に631トンと持ち直したものの、03年度以降は再び、増加と減少を繰り返す状況に…。近年では、18年度は404トン、19年度は362トン、20年度は319トンと、年々、落ち込んでいた。

しかし、21年度には358トンと上昇。
そして、22年度のズワイガニの漁獲量の予測は、21年度比で雄は5~15%、雌は10~20%増となり、2年連続の漁獲量の増加を見込んでいて、さらに23年、24年度も漁獲量は「約5%ずつ増加していく予想」となっている。

2013年度から漁期を短縮

この20年ほど、増加と減少を繰り返しながらも下降傾向だったが、一転、2021年度以降は増加傾向が続く見通しとなっているのは、なぜなのか? また、今後も増加傾向を維持するためには、どのような取り組みが必要なのか?

福井県水産試験場の担当者に話を聞いた。


――2002年度に631トンまで持ち直した後、減少に転じたのは何年度?

福井県だけ見ると、増加と減少を繰り返しており、減少に転じた判断が難しいのですが、日本海西部の動向から判断すれば、2008年度から減少に転じています。


――2008年度から減少に転じた理由としてはどのようなことが考えられる?

具体的な原因は不明ですが、卵から孵化した後の生き残りが悪かったことにより、漁獲対象のカニが少なかった、ということになります。


――地球温暖化の影響による漁場の変化などはみられる?

ズワイガニの漁場は水深200メートル以深(水温はおおむね0~2度)であり、温暖化による漁場の変化は認められません。


――2021年度に漁獲量が上向き、2022年度以降も漁獲量が増加していく予想。これはなぜ?
  

ズワイガニは、生まれてから漁獲対象に成長するまで、約8年の長い期間を要するという特徴があります。

漁業者の資源管理の取り組みとして、2013年度から現在まで、雌ガニ(セイコガニ)の漁期の終わりを「1月10日」から「12月31日」に短縮しています。

ちょうど、この時期に生まれたカニが8年経過し、漁獲対象サイズとなる時期と合致します。

また、調査船「福井丸」で行った資源量調査の結果からも、今年度、来年度、再来年度に漁獲対象になると推定されるサイズのカニが一定数、確認できたことから、増加していくと予想しました。

福井丸(提供:福井県水産試験場)
福井丸(提供:福井県水産試験場)

――「漁期の短縮」はカニ以外にも応用できる?

「漁期の短縮」は、資源が減少してきた魚の漁獲量を制限する手法として、一般的に取られている手法です。


――今後も増加傾向を維持するためには、どのような取り組みが必要?
 

ズワイガニは成長に時間のかかる生き物であり、卵を産む「雌ガニ」の漁期を短縮した効果が8年経過して見えてきました。

このことから、漁業者と研究者が連携して、資源管理に取り組むことが、持続可能な漁を続けていくうえで重要であると考えています。

越前がに「極」(提供:福井県水産試験場)
越前がに「極」(提供:福井県水産試験場)

2013年度から始めた「漁期の短縮」によって、漁獲量の増加が続くとみられている「越前がに」。今後も増加傾向を維持するために、漁業者と研究者が連携して、資源管理に取り組んでいってほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。