高級魚の「トラフグ」が急にとれるように…。そんなことが福島県で起きているという。

福島県によると、福島でのトラフグ漁は「はえ縄」(長い縄に枝縄と針をつける方法)を使い、県北部にある「相馬・双葉地域」の沖合(相双沖)で、9月~翌年1月にかけて行われている。

ただ、トラフグはもともと下関や福岡など、西日本が市場や産地としては有名。福島では、2018年までの年間漁獲量は1トン未満が続いていたという。しかし、近年こうした状況が一変。年間漁獲量は19年が2.8トンに、20年が6.3トン、21年が27.8トンにのぼるなど、年々増えているという。
※漁獲量は福島県全域の合計、はえ縄以外での漁獲も含めた数値

産地市場での価格は1キロ3500円

相馬・双葉地域の「相馬双葉漁業協同組合」によると、22年は1日1トンに迫るペースで水揚げされているという。なぜここまでとれるようになり、どう受け止めているのか。まずは、相馬双葉漁業協同組合の担当者に話を聞いた。


――福島で獲れるトラフグの生態を教えて。市場での価格はどれくらい?

福島県では全長35cm以上のサイズから漁獲しており、大きい個体で全長60cm程度です。福島県沖に生息するトラフグの生態はまだ分かっておりません。産地市場(2021年)における、トラフグ活魚の平均価格は3500円/kg程度です。味が美味しいのはもちろんですが、トラフグ天然魚の漁獲量が少なく、希少価値が高いことも理由だと思います。

トラフグ(提供:相馬双葉漁業協同組合)
トラフグ(提供:相馬双葉漁業協同組合)
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――福島でとれるのは以前は珍しいことだった?西日本の現状は知っている?

福島でも以前からトラフグが漁獲されていましたが、近年のようにまとまった数量が漁獲されることはありませんでした。西日本のトラフグ漁獲量は減少していると伺っております。


――漁獲量の増加はどんなことが関係していそう?

漁獲量が増えた要因は不明です。しかし、この地区の漁業者は勉強熱心で、それぞれが新しい漁法を勉強し、チャレンジしていることも要因の一つかと考えております。

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――トラフグ以外で漁獲量が増減した魚類はある?

漁獲量が増えた魚としては「タチウオ」が、減った魚としては「マガレイ」「イカナゴ」「サケ」が挙げられます。この増減は明瞭な理由が明らかとなっていない状況です。


――トラフグ関連での取り組みや目標を聞かせて。

地元漁業者の発案により「福とら」というブランドを名づけて、PRしております。相馬市では「福とら」活用推進協議会が今年から発足しており、相馬市の観光協会や商工会議所と連携してPRをしていく予定です。トラフグが漁業復興の一助となればと思っております。

「イセエビ」もよく獲れるように…海水温の上昇が影響か

漁協ではトラフグでの漁業復興に期待しているようだ。その一方で漁獲量が増えた明確な理由は分からないとのことだったが、何が起きているのか。県の出先機関で、水産業の振興に関する試験研究などを行う「福島県水産資源研究所」の担当者にも話を聞いた。


――なぜ、福島でトラフグがとれるようになった?

明確な理由は言えないのですが、福島ではトラフグと同時期、3年ほど前から「イセエビ」(温かい海を好むとして知られる)の漁獲量が増えてきています。また、福島を含めた近海の水温が高くなってもいるようです。そのため、海水温の上昇が一因ではないかと思われます。


――そうしたトラフグはどこから来ていると思う?

断定はできませんが、トラフグは東京や秋田の方でもみられているといいますので、津軽海峡などを越えて、福島の海に来た可能性もあると思います。

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――組織としてはどのように受け止めている?

トラフグの漁獲量増加が定着するのか、一時的なものなのか、海の調査をしていく必要があると考えています。トラフグが福島の魚として、認知される取り組みが進めばいいと思います。



断定はできないが、地球温暖化による海水温の上昇が関係しているのだろうか。環境の変化とともに、地元の名産品や名物が移り変わることも起きていくのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。