鯉の生産量日本一の福島県郡山市。東日本大震災と原発事故の風評で、一時半分以下に落ち込んだ生産量も徐々に回復し、地元の鯉食文化を次世代に伝えようとする取り組みが進められている。消費拡大につなげようという鯉だが、長年天敵の被害に悩まされてきた。その対策は・・・

鯉の市町村別生産量で日本一の郡山市

直近の2021年のデータでは、郡山市の生産量は740トンに上る。推移を見てみると、東日本大震災前の2010年は930トンだったが、その後は原発事故による風評などで一時480トンと約半分に減少。
しかし、徐々に回復、最近は700トンから800トンで推移している。

郡山市コイの生産量推移
郡山市コイの生産量推移
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全国有数の生産量を誇る産地ではあったが、消費地ではなかったため”鯉食”を盛り上げるプロジェクトも立ち上がるなど、鯉食文化を発展させる取り組みが行われている。
地元が誇るコイの魅力を知ってもらい、消費拡大に結び付けるため、郡山市は5年前から鯉料理を市内の小中学校の給食で提供している。

学校給食で鯉料理を提供

学校給食で提供された鯉料理
学校給食で提供された鯉料理

11月16日に、郡山第二中学校の給食で提供されたのは「鯉のスパイス揚げ」
食べた生徒は「食べているうちに、福島県のコイを作っている農家さんの思いが伝わってくる」「郡山はコイが有名だから、皆に来て食べてほしいです」と話した。郡山市では、17日も一部の学校でコイ料理が提供される予定。

郡山第二中学校の生徒
郡山第二中学校の生徒

コイの天敵「カワウ」

子どもたちにも好評だったコイだが、実は天敵による被害が相次いでいる。
その天敵というのが「カワウ」。
川魚などを主食にする“魚獲りが上手い”鳥で、1日で2~3キロのエサを食べると言われている。
郡山市のコイは、長年このカワウによる被害に悩まされてきた。

鯉の天敵カワウ
鯉の天敵カワウ

「カワウ」による被害額は右肩上がり

2012年度は700万円だったが、そこから右肩上がりで増え続け、直近の2020年度には3.5倍の約2500万円に増加している。
郡山市の養殖業者は「打つ手がない」と頭を悩ませている。

郡山市のカワウによる被害
郡山市のカワウによる被害

郡山市の熊田水産。
市内など15ヵ所で、オリジナルブランド「磐梯鯉」を飼育し、年間約500トンを県内外に出荷している。
ここには、約15ヘクタールの鯉を養殖する池が広がっている。

鯉の養殖で頭を悩ませているのが、カワウの被害だ。
2021年は、約20トンの鯉がカワウに捕食される被害に遭った。
特に被害が深刻なのが稚魚。
2021年は約4割が食べられてしまい、成魚と合わせると、被害額は1500万円程に上った。

捕食の被害額
捕食の被害額

熊田水産・熊田純幸社長:
困るね。本当に困る。真冬になると餌もやりませんから、人間が1日1回ぐらいまわる冬は、その間にいっぱい(カワウ)が入ってくるんです

有効な対策が見つからない

花火で威嚇し、カワウを追い払う対策を取り入れているが、効果は一時的で、被害はなくならない。
養殖場が広いためカワウが入らないようにネットを設置するのは難しく、有効な対策は見つかっていない。

花火でカワウを威嚇
花火でカワウを威嚇

熊田水産・熊田純幸社長:
もうちょっとカワウがいなければ、コイの単価も多少なりとも安くなると思うんです。カワウによる値上がりを防いで、少しでも安い美味しいコイを皆さん食べていただきたいというのが、私たちの願いです

熊田水産・熊田純幸さん
熊田水産・熊田純幸さん

カワウによる被害はコイ以外にも

福島県が行った20年前の調査によると、阿武隈川ではコイが42%、フナが28%。阿賀川では、ウグイが55%、アユが28%などと、コイ以外の魚も被害を受けていた。
さらに、2021年のデータでは、推定で約1億8410万円の被害が発生していて、対策が求められている。

コイ以外のカワウによる被害
コイ以外のカワウによる被害

カワウによる被害を食い止めるために、福島県は2022年度、約100万円の予算を計上し、狩猟によるカワウの駆除などをサポートしている。
このサポートなどにより、2020年は470羽、2021年は678羽が駆除されている。
しかし、この駆除数では被害を食い止めるまでには至っていないのが実情で、郡山市の食文化を守っていくためにもさらなる対策が必要といえそうだ。

(福島テレビ)

福島テレビ
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