「Yahoo!ニュース」は11月15日から、コメントを投稿するのに“携帯電話番号の登録”が必須となった。

携帯番号を登録することで実際どのような効果が見込めるのか、また悪質コメントが溢れる仕組みなど、ITジャーナリストの三上洋さんに聞いた。
誹謗中傷やヘイト表現を抑止
ーー携帯番号の登録が必須になった背景には何がある?
「Yahoo!ニュース」のというのは、日本で一番表示数が多いニュースサイトで、コメントの書き込みも多く、自分の主張を書き込みたいという人が非常に多くいます。
そのためコメント欄には大量の書き込みがあって、誹謗中傷だったり、一部にはヘイト表現だったり、コメント欄が荒れるという状態がずっとありました。
その防止のためにヤフーニュース側では、例えばAIによる判定を行ったり、あまりに荒れる状態だったらコメント欄を閉じるといった処置をしてきました。
それで軽減はされたんですが、誹謗中傷などを無くすということはできませんでした。
そのために電話番号必須化によって、コメント内容の誹謗中傷やヘイト表現といったものを抑止する狙いがあります。

ーー実際に効果は期待できる?
効果はある程度は期待できます。
まず一人で複数のアカウントを持っている人の投稿を、電話番号登録によって減らすことができます。
そして、もう1つは電話番号必須化で、自分の個人情報が紐づくというところの心理的抑止効果です。匿名でなくなることで、心理的に問題投稿が少なくなるのではないか、という期待です。
ただし、誹謗中傷・ヘイト表現は今後も残ると思います。自分の主張が正しいと思っている人は、たとえ電話番号を紐づけたとしても書き込みをするからです。
例えば、海外での過去の事例では、実名制にしたのにコメント欄が荒れてしまうということがありました。
今回の電話番号必須化によって、誹謗中傷などの量は減ると思いますが、強い主義主張がある誹謗中傷・ヘイト表現というものは残ってしまうと思います。
複数投稿して「いいね」で注目
実際にどういった仕組みで悪質コメントが溢れる状態になるのか。それについて三上氏は、“自作自演”のような形で複数書き込み、「いいね」をし合うことで注目を集めていると話す。
ーー1人が複数アカウントで同じような悪質コメントを書くケースがあるということ?
そうです。自分の主義主張が強い人は、それを大きく見せたいので、アカウントをいくつも持って自作自演のような形でたくさん書き込みをします。
また、お互いに「いいね」をし合うという形で、自分の投稿が注目されるようにしています。そういう人はさすがに携帯電話番号をたくさん持つことは難しいでしょうから、抑止効果になると思います。

ーー実際に取り組みが始まり、何か変化は感じる?
私が見ている感じでは大きな変化はないです。
量的な変化、質的な変化も、以前との違いはそれほど感じられません。
ヤフー側が実際に集計を取ってみないと具体的な効果というものはまだ見えてこないと思います。
建設的な議論の場に
ヤフーが不適切なコメントを繰り返すユーザーを調べたところ、その半数以上が番号の登録をしていなかったという。
ーー携帯電話番号を登録することに対する期待は?
ヤフーニュースのコメント欄というのは、お互いに建設的な議論をしましょうということで、討論する場所として期待されています。
しかしながら、実際には一方的な書き込み、感情的な強い表現というものばかりが目立つ状況でした。
電話番号必須化によって、もうちょっとおとなしい中立な立場での書き込みをする。そして、議論の場にできることを期待しています。
インターネット上のコメント欄というは、それぞれの人が自分の主張が正しいと思って書き込んでいるので、議論の場にすることはなかなか難しいんですが、それでもヤフーニュースはコメント欄をオープンして、いろんな立場の人に見せようとしています。
ヤフーはこれまで、問題投稿をした人に対しては、投稿停止処置を行ってきましたが、この半数が電話番号の登録がなかったということが統計でわかっています。
つまり電話番号を登録することによって、問題投稿が半分ぐらい減ったらいいなあ、というイメージだと思います。

裁判の進行が迅速化
また、コメントをめぐり訴訟になった場合は、電話番号の開示により、裁判の進行がスムーズになるメリットがあると三上氏は指摘する。
「電話番号必須化によって、訴訟する場合の情報開示が速くなるという効果があります。
これは問題投稿があり、相手を訴訟する場合、ヤフーに対して情報開示を行うんですが、この時に電話番号を開示できるんです。
電話番号を開示できれば、そこからは弁護士さんの比較的簡易な手続きで、相手の住所や氏名を特定できるため、今までよりも裁判の進行が速くなるということが期待できます」