東京証券取引所に上場する企業の2022年9月中間決算は、「円安」が追い風となって最高益を更新する企業が続出している。
海運・商社 純利益“大幅増”
SMBC日興証券のまとめによると、14日までに中間決算を発表した1316社(金融を除く全体の99.8%)のうち、395社が上期として最高益となった。
売上高が、合計276.9兆円で、前の年の同じ時期に比べて17.0%増え、本業のもうけを示す営業利益は19.0兆円で0.6%の微増となったものの、最終的な純利益は19.6兆円で10.4%増えた。
注目したいのは、非製造業の純利益だ。
「円安」を背景に、増え幅は23.0 %と大幅に増加した。
この記事の画像(4枚)コンテナ船の運賃が高止まりするなか、大手海運3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)は、そろって過去最高益を更新した。
円安とともに資源高が追い風となった商社でも最高益をたたき出す企業が続出した。
三菱商事は、通期見通しで純利益が商社で初めて1兆円を突破する見通しだと発表した。
鉄道や航空各社も業績が改善している。
円安の恩恵受けるはずの輸出企業は?
一方、製造業では、円安の恩恵を受けるはずの輸出企業が逆風を受ける側面も見られた。
自動車などの輸送機器は、売上高が前の年より17.1%伸びている一方で、純利益は13.3%のマイナスに。
原材料やエネルギー価格の高騰が業績に表れた形だ。
トヨタ自動車は、売上高こそ前年比14.4%増の17兆7093億円と過去最高を更新したものの、純利益は同23.2%減の1兆1710億円と大幅に減少し、2年ぶりの減益となった。
トヨタによると、円安による増益効果は5650億円にとどまった半面、原材料価格の高騰などによるコストは7650億円も増加。
このコスト高を「円安効果」で補うことができなかった。
円安による増益効果は不透明に
海外への生産移管が進み、輸出採算の改善効果が以前より見込めなくなるなか、大和証券によると、対ドルで1円円安が進んだ場合、主な企業で経常利益が押し上げられる効果は、2022年度は0.4%となり、リーマンショック前の2004年度からは半減した。
足下の円相場は、アメリカの物価の伸びが鈍ったことで、 利上げペースが緩まるとの見方が広がり、 ドルを売って円を買い戻す動きが勢いづき、急速な円安進行は一服している状態だ。
「円安」は、円換算した海外事業の収益を押し上げる一方で、原材料などの調達コストを上昇させる。
円安による増益効果がどの程度表れるかが、企業業績に大きく影響するなか、先行きが見通しづらい状況が続きそうだ。
(フジテレビ経済部 兜・日銀キャップ 茅野朝子)