防弾車も・・・4泊7日の強行軍は



4泊7日、飛行機だけでなく白バイ、パトカーに先導され防弾車に乗ってまでしてエジプトの3都市を駆け巡った東京都の小池知事。「かわらないわね」カイロではこう話しながら母校カイロ大学のキャンパスを“闊歩”した小池知事。校舎内の猫をみつけ「アラビア語で猫は「オッタ」っていうのよ。「オッタ」がおった」だじゃれも。
学長との懇談では、50年前に使っていたという教科書を手に、当時書き込んだ文字を二人でのぞき込みながら話していた。また、日本語学科の学生にむけ講演を行うと、日本語学科の学生から「なぜ日本がそんなに繁栄したのか」と問われ「日本は資源がなかったので知恵を使ったから」と答えた。
「ワンピース」「鬼滅の刃」日本のアニメパワー
カイロ大学では2018年に日本語翻訳学科を設立し、毎年約100人の学生が入学しているという。自らが日本に留学した経験を活かし日本語翻訳学科を立ち上げたアリ・リナ学科長は、カイロで日本語を学ぶ学生についてこう話す。「試験の際の面接で必ず「どうして日本語を学ぶのか」と聞くと80%以上が「小さい頃からアニメを見て日本が好きになったから」と言います。中でもワンピースがすごく、圧倒的に人気があります」
日本のアニメ人気はエジプトでも強く、小池知事が視察したエル・ガラー校では「鬼滅の刃」をまねて書いた絵が廊下や教室にいくつも貼られていた。
都の臨海部に「水素パイプライン」構想明らかに


シャルム・エル・シェイクでは地球温暖化対策を話し合う国連の会議COP27で、小池知事は1日に3つの会議に参加。
「Our plans to build a supply chain network including trunk lines to receive green hydrogen from abroad(東京都は、海外で作られたグリーン水素を受け入れるための、パイプラインを作る構想があります)」
国が輸入拠点を置こうとしている神奈川・川崎市から都の臨海部に水素のパイプラインを敷設する考えを明らかにした。
「大統領や首相が出席する会議で都市を代表して1人出席してきました」ハイレベル会合では、エジプトのシーシー大統領やドイツのショルツ首相とともに、同じテーブルについてスピーチした。
高くても世界が狙う「グリーン水素」とは

水素には化石資源由来のグレー水素やブルー水素、太陽光など再生可能エネルギーを使って作るグリーン水素と言われる区分がある。関係者いわく、価格的には現在販売されているグレー水素を1とすると、ガソリンが同等、軽油が1/2、ガス火力が1/6程度で、一般販売されてないグリーン水素はグレー水素の倍、とのことだ。実用化にむけて価格は“大きな壁”となる懸念があるが
「コストの問題は活用されればされるほどさがる可能性がありますね。最初のトライをしておかなければ世界が覇権を決めてしまいますので、日本としてしっかりとその分野で存在を示すためにも東京が先頭をきって様々な水素の活用をしていく必要があります」と述べ、小池知事はグリーン水素活用に強い意欲をしめした。
水素を巡ってはオランダで既存インフラを活用して2027年を目処に水素ネットワーク構築を目指す計画やスペイン、フランス ドイツの民間企業30社が連携し、EU全土にグリーン水素を大規模に供給するプロジェクトなどが進められている。
ウクライナ情勢をうけエネルギー事情が厳しさを増すほどに各国の水素を巡る覇権争いも激しくなっているのだろう。
世界との闘い 勝ち抜くには

日本のパビリオンで対応にあたっていた環境省の水谷好洋参事官は「実際にモノを見せているのが日本のパビリオンの特徴です」と話す通り、他国のブースはほとんどがモニター設置程度だが、日本は新たな技術をモノを使って表現。
東芝エネルギーシステムズ(株)の超伝導モーターは、40~50人乗りの飛行機のエンジンをこれまでの10分の1の大きさ、重さでの製作可能にする。この性能でここまで小型化・軽量化したものは「世界初」とのことだった。
他にも三菱重工の有害物を抑えながら稼働する水素タービンなどのほか、地表の熱を宇宙に放射する素材、SPACECOOLなど全部で11の団体が出展。水谷審議官は「既存のモノの一歩先をどう作っていくか、そこが世界的競争。サプライチェーン全体をおさえるのは無理だが、キーポイントをいかにおさえていくかが重要です」と強調した。
「シンゾウ・アベ道路」 大学に「安倍晋三」エリア


小池知事はシャルム・エル・シェイクに向かう前に、カイロ空港近くを通る幅37メートル、長さ「シンゾウ・アベ道路」を視察。
安倍元総理の日エジプト関係強化や貢献を評価し命名され、今年2月に完成したという。
道路上にはアラビア語や英語の道路標識だけでなく、漢字で「安倍晋三」と書かれた歩道橋やパーキングエリアも。小池知事は「まさか亡くなると思わないで計画されて作られている。すごいですね。」とタブレットで自ら撮影し「安倍さん、ほんとは来たかっただろうな・・・」とつぶやいた。
また夜の陸路移動となった3カ所目・アレキサンドリアには、治安上、パトカーに先導され防弾車でむかうことに。アレキサンドリア近郊にあるE-JUST、エジプト・日本科学技術大学を視察した際には、キャンパスの一角を「安倍晋三」と名付けると聞き、エジプトから安倍元総理への感謝をここでも感じたという。
日本は「存在していない」

「海外のことばっかりやってないで東京のことをしっかりやれ、コロナどうなってるんだ、というのもあるかもしれませんが・・・」小池知事はやや自嘲気味に言いつつも「すごく内向きが激しいなと思います。世界がこんなにダイナミックに動いているときに、こういうときにしっかり東京が動いていかないといけない、という思いで駆け巡っております」と語気を強めた。
今年小池知事が出張したUAE、マレーシア、アメリカ、エジプト、4つの国の共通点は資源があり、日本は資源がないからこそエネルギー危機に他の国より知恵を絞らなくてはならない、日本はこのままでは「遅れて」「置いていかれて」「存在していない」ことになる、東京こそがその「モーター」にならなくては、との危機感を強めているのが見てとれた。
小池知事という人は物事を決めていく際にできるだけ多くの選択肢を持とうとする。
4回の出張でどのような選択肢をどれだけ増やせたのか。知事2期目の任期も半分以上過ぎコロナへの警戒が再び強まる中、これまでとはひと味違う大胆かつ繊細な政策決定が求められているのではないか。
(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)