政府は、パソコンなどの電子機器製造に不可欠な希少価値の高いレアアースについて、政府が小笠原諸島南鳥島沖の海底で採掘に乗り出すことが分かった。中国依存からの脱却を目指す方針だ。

“中国頼み”のレアアース 日本の海底に数百年分埋蔵…試掘開始へ

希少価値の高いレアアースは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器や電気自動車などの生産に不可欠で、日本は6割近くを中国からの輸入に頼っている。

この記事の画像(4枚)

国内調達を目指す政府は、5年以内に小笠原諸島・南鳥島沖の6000メートルの海底で、レアアースを含む泥の試掘を始めることが分かった。この海域には、国内年間消費量の数百年分のレアアースが埋蔵されているという。

2023年度には採掘方法の確立に向け、技術開発に着手し、政府は中国依存からの脱却を目指す方針。

国内自給は安全保障上も重要 課題は技術面とコスト

このニュースについてLive News αでは、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
レアアースというのは、私たちの暮らしを支えるさまざまな電子機器に使われていますから、国内で自給できたらと思いますが、長内さんいかがですか?

早稲田大学ビジネススクール・長内厚 教授:
日本にとって、国境を越えてモノが行き交う自由貿易というのは理想の姿だと言えますが、自国でコントロールしきれないのが国際貿易の現実とも言えます。
今回のように、主に中国に頼っていた資源を自国で確保できるように取り組むというのも重要な施策だということが言えます。

ーー国際情勢の変化を受けて、輸入のハードルが上がることは確かにこれまでも経験してきましたよね
例えば、2010年の尖閣諸島での中国漁船による海上保安庁巡視船への体当たり事件の後、中国政府によるレアアース輸出停止措置があって、日本のエレクトロニクスメーカーなどが一時、レアアース不足に悩みました。この時は日本企業のレアアースの使用量の削減などによって対応することができましたが、国際情勢は非常にめまぐるしく変わるものです。
米中の貿易摩擦、さらにはロシアのウクライナ侵攻など、世界がブロック経済化の方向に向かおうとしている今日、今回の取り組みは、産業政策上も安全保障上も重要な課題ということができるのではないでしょうか。
また、南鳥島でのレアアース採掘操業が始まれば、離島防衛のモデルケースとなど大切な事業ということも言えるのではないでしょうか

ーー事業を軌道に乗せるためには、何が必要になってくるのでしょうか
中国のレアアースは地上にある鉱山から採掘しますが、今回の日本の取り組みは、深い海の底からレアアースを採掘することになるため、技術的なハードルも、そのコストも上がると考えられます。コストに見合うものでないと、これまで通り、輸入ではいいのではないか、そうした議論も起こるはずです。
例えば、東京のどこを掘っても温泉が出てくるということはわかってるんですね。ただ、非常に深く掘る必要があり、当然コストがかかってしまう。せっかく温泉施設ができても、その投資を回収するのに、入浴料が高くなり過ぎるのでは経営的に難しいので、なので温泉を掘らないということがあるわけです。
今回の取り組みは、経済安保としての様相が強い一方で、あくまで民間企業によるビジネスです。ですから事業が軌道に乗るまでは、政府による補助金などの支援、そういったものも必要になってくるのではないでしょうか

三田友梨佳キャスター:
日本のものづくり産業の未来を拓くレアアース。その確保のためにも、技術の確立と民間参入に向けても環境を整えることが求められます

(「Live News α」10月31日放送より)