【前編】より続く
ロシアのウクライナ侵攻で、核の脅威が現実味を帯びる中、被爆者の言葉の重みが増している。85歳の被爆者が広島からアメリカへ行き、自身の被爆体験を伝えた。「2度と忘れません」ー。原爆の惨状は、話を聞いた大学生の心に重く響いた。
不安を抱きつつも、米軍人、大学生の準備兵と意見交換
イベント期間中、小倉さんのエスコート役を担うアイダホ大学の東條さん。ちょっと緊張するプログラムが控えていた。

東條梓さん:
小倉さんが本当に傷つかないような話だといいなと思ってますね

東條さんが不安な思いで向かったプログラム。そこにいたのは迷彩服姿の学生たち。アイダホ大学には将来、軍での活躍を担う準備兵として、大学で軍の戦術などを学ぶ訓練課程がある。

その学生が核をテーマに研究し発表する場に同席することになっていた。

「アメリカの核開発の歴史」「広島や長崎への原爆投下」そして「核開発の今」…。
発表では、過去に行われた核実験で、広島型原爆の3300倍という恐ろしい威力が記録されていることが示された。

空軍士官候補生・アンドレア・Jケルシーさん:
私が一番驚いたのは爆弾の大きさです。広島の3300倍というのは、私には理解しがたい数字です。もちろん非常に恐ろしいことです

これに対し、現役の空軍中佐は核の抑止力を強調。
空軍中佐:
核抑止力は、外交的にも軍事的にもアメリカの政策の根幹をなすものです。これは地球規模の壮大な政治ゲームで放射性物質は無限大に存在している

「広島型の3300倍が使われたらどうなるか想像してほしい」
小倉桂子さん(英語):
広島の原爆が「赤ちゃん爆弾」と呼ばれていることを知っています。でも原子爆弾が落ちたとき、その下で現実に私はそれを経験しました。大切なのは想像力を働かせること。赤ちゃん爆弾の爆発がどんな悲惨な結果を招いたでしょうか。その3300倍という大きさがもし爆発したらどうなるか想像してみてください。あなた方の想像力次第なのです。もう核兵器は使わないでほしいし使ってはいけないと思います

東條梓さん:
ありがとうございます、小倉さんお疲れ様です
小倉桂子さん:
これから皆さん軍隊に入られるだろうし、核兵器の問題とか、そういうさなかにいらっしゃるわけだからみなさんは。あの時こういう話を聞いたし、どういう効果が起きるかっていうのを想像した自分を思い出していただきたいと思うのね

東條梓さん:
みなさんの心に届いたと思います。ありがとうございました
小倉桂子さん:
大変なところに連れてきていただいた。悩まれたと思うけど、私にとっては素晴らしい経験だったと思いますね

「自分と同じ経験をもう誰にもしてほしくない」講演で一人一人の心に「平和の種」を蒔く
「リメンバリング ヒロシマ~ヒロシマを忘れない」過去から学んでいく講演の日。会場は「今こそ被爆者の声を聞きたい」と人であふれていた。

自分と同じ経験をもう誰にもしてほしくない。一人一人の心に平和の種を蒔いていく。

小倉桂子さん(英語):
私たちに何ができるかどうかどうか一緒に考えましょう。今はいい答えは見つからない。
でも、一緒にやりとげましょう


講演が終わった会場には、小倉さんの紙芝居の英語版をつくる決意をしたデヴィンさんの姿が…
アイダホ大学生 マイカリス・デヴィンさん(日本語):
ありがとうございました。
小倉桂子さん(日本語):
わたくしのほうこそありがとうございます。

マイカリス・デヴィンさん:
とても悲しかった。とても重かった。それはとてもとても大切。私たぶん2度と忘れません

小倉桂子さん:
聞きたくはないけれども、これはとても大切なtreasure、宝物だと思う。私たちの今日がきっとあなたにとって勇気を与えると思う。素晴らしいリーダーになってほしいわ

マイカリス・デヴィンさん:
私も望む。それを望んでいます。私は必死に勉強します
小倉桂子さん:
私も必死に勉強します

1週間の旅が終わった。
アイダホで蒔いた平和の種が芽を吹き、折り鶴となって小倉さんのもとに

東條梓さん:
このストーリーの中に小倉さんのメッセージが詰め込まれているから、次の世代に小倉さんのメッセージを伝えていけたらいい。それをアメリカの学生がしてくれたら本当にいい

デヴィンさんは友人たちと大学で佐々木禎子さんの物語を伝え、折り鶴作りは学生の間で広がり、その後、地域の小学生にも、家庭では子供から親へと大きな広がりを見せた。

小倉桂子さん:
すごい。こんなにたくさんすごい。

小倉桂子さん:
本当に世界が平和であるようにと、これからもそのために努力しなきゃいけない

小倉さんの世界への「平和の種蒔き」の道は、これからも続く。
(テレビ新広島)