「クレームを言ってくれることの方がいい。改善すればレベルアップするからね」 

番組出演後に家族からのダメ出しを受けることも度々あるという、「日曜報道 THE PRIME」レギュラーコメンテーター・橋下徹さん(53)。 

タレント弁護士として活躍後、2008年に当時全国最年少で大阪府知事に就任、その後2011年には大阪市長を歴任し、信念を持って戦うその姿や、力強く、突き刺さるような橋下さんのメッセージには、炎のような迫力を感じた人も多いであろう。 

前編で、自身の“強さ”と“発信力”の源泉について明かした橋下さん。後編では家族からされるというダメ出しの裏側や、これからの挑戦について聞いた。 

(【前編】「魔法の杖はあるのか?」橋下徹さんの“強さ”と“発信力”のウラにある情報収集の秘訣

議論で大切にしている“解決策”

政治側から見たメディア、そしてメディア側から見た政治の両方を経験している橋下さん。だからこそコメントをするときは、実際に政治家や官僚たちが動けるような“提案”をしていくことに重きを置いているという。 

そのための学びも欠かさないと前編で明かしていた橋下さん。その知識を元に議論の中でブレることが無い印象がある。 

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ーー橋下さんの強みの一つ、どんな状況においても議論で絶対にブレないところだと感じます。そこは何を意識しているのでしょうか?
現実的な、実現可能な解決策、それが見えない議論は意味がないと思っている。僕が言っていることは100%正しいわけではないかもしれないが、僕はしっかりと問題点に対しての解決策を提案する。

例えばレギュラーコメンテーターをやっている「日曜報道 THE PRIME」、この番組の特徴は(問題を解決する責任のある)当事者、しかも大臣や総理大臣が出てくる。この当事者も相当な知識量を積み重ねていて、外部のコメンテーターが言っていることなんて役所の中ですでに散々議論しているんですよ。

この場で大臣や総理と議論させてもらうということになれば、さらに自分なりに勉強を積みながら問題点とその解決策をぶつけないと、単なる感想的な批判になってしまう。番組の中で大臣とも「こういうやり方は一つの解決策になりますよね」っていうところがお互いに見えた時というのは、きょうはすごく(議論が)良かったなって思うんだよね。

ーー議論を間近で見て感じたのが、橋下さんは発言力と同じくらい「聞く力」を持っているということ。ご自分のことも含めて、俯瞰して見ているように見えます。
それは裁判をやってきているから。常に裁判官の視点で物事を見ないといけないし、自分のことだけを言う弁護士って最後は勝てない。

常に意識しているのは相手がどう考えているのか、第三者がもし公平な立場でいるとしたら、どう考えているかっていうのを意識しながら自分の主張を組み立てる。相手はこう反応するだろうなというのを分かった上で僕はいつも議論しているつもりです。
 

橋下さんによると、それは得意なものを組み合わせる“掛け算の強み”だという。

「みんな、得意とする部分はそれぞれあるわけで、ただ野球をやっている人がみんな大谷翔平選手レベルになれるかというと、なれないですよ。でも誰にでもそれぞれいくつか得意分野があるから、それを広げて組み合わせれば、そこそこのレベルになるんじゃないのかっていう考え方。

今の世の中、あんまり努力しなくていいよね、しんどいことやらなくていいやっていうような風潮もあるけど、僕はやっぱり自分のレベルを上げていくっていうことには魔法のつえはないと思っています」

ーーこれまで様々なゲストと議論してきた、橋下さんだからこそ感じる、一番印象的だった人物はどなたでしょうか?
誰が一番というよりも、大臣や総理は凄いと思います。あの権力闘争渦巻く政治、永田町の中で、あのポジションに立ちながら、霞が関で膨大な行政実務を担っているのは凄い。僕も知事、市長をやったけれども、行政のトップのしんどさは半端じゃないから。責任を負っている大臣や、特に総理は物凄く大変。

だから僕は政治の批評をするときに必ず心がけているのは、(その人が)やっていることへのリスペクトをしっかりと持ちながら、問題点の指摘などを厳しくコメントをするようにしています。

自身のレベルアップの為にも「クレームは宝」 

橋下さんは7人のお子さんがいる大家族だ。番組出演後にはその家族から番組を見た感想がメールで送られてくるという。 

ご家族の話になると笑みがこぼれる
ご家族の話になると笑みがこぼれる

ーーよく番組後にご家族からのメールを読んで反省している姿を見かけます。
(自身の出演している番組を)すごくよく見てくれている。基本はダメ出しばっかり。

最近は妻だけではなく、長女、長男、次女、次男などの成人組はみんな文句言ってくるね。成人組代表4人、高3の三男も入れたら5人くらいが、まずテレビ見た感じの表情が良くない、偉そう、ふてぶてしい、相手に対してあの喋り方は失礼、と。

そこから入って、中身についても極端すぎるって。極端だっていうのはよく言われますね。僕が説明したことに対して成人組は結構意見を言ってくるので面白いですけどね。

ーー良かった点も?
良かった点は言わないね。例えば、自分が政治家だった時に、役所の職員や政治コメントをする番組の人に結構言っていたのが、良い評価はいりませんよ、と。だって、こちらは、ありがとうございますってなるだけじゃないですか。むしろ重要なのは常に問題点。

学生の時に読んだある本で印象的だったフレーズが「クレームは宝」だと。普通人間って評価されることが嬉しいからそっちを集めがちだけど、それは違うと思う。むしろクレームを言ってくれることの方がいい。改善すればレベルアップするからね。だからいかに注意を受けるか、文句を言われるか、これが宝だと思えるかが勝負だって本に書いてあって、僕もそう思っている。
 

「批判を力に変える」。これが橋下さんの強さの源になっているということに気付かされた。

これからの挑戦は「日本を良くすること」

これまでの政治経験やテレビでの発言を聞き、今後橋下さんがどのような道を歩んでいくのか気になっている人は多いと感じる。「もしかしたら?」という期待を込めて、思い切って聞いてみた。

ーー橋下さんのこれからの新しい挑戦はどんなものでしょうか?
日本の政治を良くするためには、両輪であるメディアもレベルアップしていかないといけない。最後は国民の皆さん(視聴者)が政治を動かすんだから、何かそこに少しでも貢献したいなという想いで今はやっているから、今の活動(コメンテーター)を継続していきたい。

それと同時に若い政治家でチャレンジする人を増やしたい。政党を作るんじゃなくて、それこそ人材シンクタンク、そういう感じで政治に参加する人、若い人たちの何か手伝いができないかと考えている。使える政治学、経済学というのを学べる場を作りたいですね。

そして、最後に橋下さんの強さの原動力にもなっている、ある想いについても語ってくれた。

「自分の人生経験が積み重なってくると、やっぱり日本が良くなってもらいたいなと思う。日本好きだしね。こんな素晴らしい国ないと思うから。この素晴らしい国をもっと良い形にして子供らに、生活してもらいたいなって想いがある。日本を良くしようと思えば、僕が今携わっている分野である政治こそが、良くなってほしいなと。

そのためにはメディアからの提言、それから後進を育成するような学びの場の設定。そういうところで、社会貢献したい、日本が良くなることに少しでも貢献したいなと思います」

「すべては日本を良くするために」

そう語った橋下さんがこれからどのような強さを見せ、日本のために戦っていくのか、その姿に期待したい。

(インタビュー・執筆:フジテレビアナウンサー木下康太郎)

(【前編】「魔法の杖はあるのか?」橋下徹さんの“強さ”と“発信力”のウラにある情報収集の秘訣

木下康太郎
木下康太郎

フジテレビアナウンサー。
神奈川県横浜市出身、上智大学卒。
2010年フジテレビ入社。
主に情報、報道番組を担当。
とくダネ!、知りたがり!、めざましテレビ、めざましどようび、グッディ!を担当し、現在は日曜報道THE PRIME・情報キャスター。
厚生労働省・国交省の記者も兼務している。