世界中を飛び回る大手航空会社の客室乗務員たち。コロナ禍の逆境を乗り越え、地元・広島の活性化に貢献しようとする2人の客室乗務員の姿を追った。
コロナ禍に翻弄される航空業界へ就職
10月16日早朝、広島空港に降り立った飛行機。降りてきたのは、私服姿の2人の女性だ。
実はこの2人、世界を飛び回る日本航空の客室乗務員である。広島市出身の3年目、田地里帆（たぢ・りほ）さんと熊野町出身の3年目、橘香帆（たちばな・かほ）さん。
新型コロナの影響が徐々に落ち着き、観光需要も回復の兆しを見せ始めた今は、忙しい日々を送っている。しかし、希望を持って飛び込んだ航空業界だったが、コロナ禍に入社した2人は順風満帆な社会人生活を送ることができなかった。
橘香帆さん：
入社当初は、先が見えずにもどかしい思いや不安な思いが常に襲って来る状況でした。ですが、時間がたくさんあったので自分に何ができるか考えながら過ごすことができたかなと思います
橘さんは空いた時間を使い、手話などに挑戦。乗客がいることの”ありがたみ”を知る時間でもあった。「コロナ禍前は、お客様とのコミュニケーションが当たり前だと思っていましたが、当たり前ではない、すごく貴重で尊いものだと実感しながらフライトできるようになりました」と話す。
一方、田地さんは入社後1カ月以上も自宅待機を余儀なくされた。
田地里帆さん：
乗務できる日数が少なかったので、仕事を覚えられるかなとか、このまま仕事が減っていったら将来どうしようという不安がありました
それでも田地さんは、語学のスキルアップなど常に先を見据えた努力を続けてきた。コロナ禍を振り返り「あの時にたくさん勉強できたので、今の業務を幅広く行えているかなと思っています」と話す。
あふれる”広島愛”で「ふるさと応援隊」に
2人が苦難の時期を乗り越えられたのは「地元・広島」への”深い愛着”があったからだ。
日本航空は2020年から、地域の魅力を発信する「ふるさと応援隊」の事業をスタート。橘さんと田地さんは、自ら進んで応援隊に応募した。
橘香帆さん：
生まれてから社会人3年目まで過ごした広島に、恩返ししたい思いが強くて応募しました
田地里帆さん：
私は大学卒業まで広島で過ごし、祖父母や親戚もみんな広島に住んでいます。広島県は私にとって温かみのある場所です。その広島県を、全国各地の皆さんに知っていただきたいです
「飛行機を身近に…」笑顔で来場者と交流
10月中旬、広島空港で3年ぶりに集客して開かれたイベント「ひろしま空の日」。
2人も「ふるさと応援隊」として初めて参加した。今回のイベントは空港の仕事について知ってもらおうと企画されたもので、飛行機がより身近な存在になってほしいという思いがある。
田地さんに「似合ってる！かっこいいね！」と声をかけられ、嬉しそうな子どもたち。
2人は、マスク越しでも伝わる満面の笑みを浮かべながら、家族連れなどと積極的に交流を深めていった。
橘香帆さん：
「ふるさと応援隊」の活動を通じて、飛行機は新幹線よりも早く東京に行くことができる点などを推していきたいと思います
イベントの最後まで会場を盛り上げた橘さんと田地さん。2人のキラキラした笑顔に、来場した人たちは心惹かれていた。
来場者：
客室乗務員はなくてはならない存在で、すごく尊敬します
来場者：
2人の活動を応援したいと思います
「ふるさと応援隊」として広島を盛り上げるため、全力で駆け抜けた一日。2人は充実した表情に満ちあふれていた。
田地里帆さん：
一日があっという間に過ぎたのですが、たくさんの来場者の笑顔を見ることができたので、とても充実した日になりました
橘香帆さん：
今日は飛行機を利用されない方も多く空港にいらっしゃったと思いますので、このようなイベントを機に多くの方に広島に足を運んでいただきたいと思います
日々、乗客の夢や希望を運びながら、愛する「地元・広島」の魅力発信のために躍動する2人。コロナ禍のもどかしさを振り払うような、明るい輝きを放っていた。
（テレビ新広島）
