長崎市の伊良林地区に、約200年前から伝わる国の無形民俗文化財「竹ン芸」。新型コロナウイルスによる中止を経て、2022年に3年ぶりに奉納された。
伝統を絶やすまいと、妙技復活にかける職人や親子の姿を追った。

本番1週間前…まずは本番で使用する竹の選定

男ギツネと女ギツネに扮(ふん)した2人の演者が、10メートル以上ある竹の上で命綱なしの妙技を披露する。毎年10月14日と15日に、長崎市の若宮稲荷神社で奉納される「竹ン芸」だ。

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五穀豊穣や商売繁盛を願い、200年以上前から伝わり、神様の使いである白ギツネが竹の上でたわむれる様子を表現している。
長い歴史を誇る竹ン芸も新型コロナ感染拡大のあおりを受けて、2年連続中止に。2022年は3年ぶりの開催だ。

準備は本番の1週間前。保存会のメンバーが、奉納に使う竹を選ぶところから始まる。長さや太さ、まっすぐ伸びているかを、本番で演技するように触れながら確かめていく。

竹ン芸保存会 後藤清輝会長:
ちょっと細いかもしれんけど、ものすごくよか。ちょっと細かね。太さがよければ…大工さんに聞いてみる

選定の最終判断は、竹を加工する大工に一任される。

大工 大塚聡棟梁:
まず、けがしない竹を選ぶこと。第一にそれですね、われわれが気になるのは。(演技が)命がけでしょう

大塚さんは、50年以上「竹ン芸」に携わるベテラン。2023年からは 役割を後輩大工に引継ぐ。

後輩大工 川原雄太さん:
なかなか下から見ればまっすぐに見えても、倒したら曲がっていたりとか、なかなか難しい。大工仕事も伝統を受け継がないといけない。誰かがしないといけないから、やるからには一生懸命やろうと思う

キツネ役が命を預けることになる竹を、3時間かけて選んだ。

丸3年のブランク…「恐怖心がなかなかとれない」

本番3日前…。キツネ役が本格的な練習を始めるのは、本番当日の週になってからだ。竹の感触や、しなり具合を確かめながら登っていく。丸3年のブランクもあってか、タイミングを合わせるのが難しいようだ。

男ギツネ役 三浦健さん:
タイミングが…タイミングの遅か!久々というのもありますし、いつ何回登っても慣れない。恐怖心がなかなかとれない

キツネ役は、「竹ン芸」を奉納する地元・伊良林地区の人たちで受け継がれてきた。男ギツネ役のひとり、三浦さんは5回目の奉納だ。奉納が中止の間も絶えず体を作ってきた。
三浦さんの息子2人も子ギツネ役で参加する。6歳の蓮虎(れんと)くんは、前回2019年に3歳で演舞を初披露し、今回が2回目。

4歳の爽空(さく)くんのデビューは、元々2年前の予定だったが、新型コロナのため、2022年が3年越しの初舞台となる。

子ギツネ役 兄・三浦蓮虎くん:
ちょっと怖かったけど楽しかった

母・三浦優麿さん:
登りたい、登りたいとずっと言っていたので…ねえ、爽空くん。爽空くん、どこまで登るの?

子ギツネ役 弟・三浦爽空くん:
一番上まで登りたい!

男ギツネ役 兄弟の父・三浦健さん:
あと何十年と頑張って、子どもたちと一緒に男ギツネ・女ギツネで登るのを目標にしているので、それまではしっかり自分も鍛えて続けていきたい

白ギツネたちの妙技…盛り上がりは最高潮に

そして迎えた本番当日。4歳から9歳の8人の子ギツネたちが、高さ5メートルの竹の上で軽快に芸を披露した。

そして、女ギツネと男ギツネの奉納では、会場の盛り上がりは最高潮に。

高さ10メートルを超える竹の上で、白ギツネたちがダイナミックな舞を息を合わせて披露し、観客に福を呼ぶ手ぬぐいや餅を振る舞った。

観客:
かっこよかった!すごかった!

観客:
子どもたちもかわいかったし、女ギツネ・男ギツネも危ない演目を見事に演じきった

新型コロナによる中心を乗り越え、新しい世代の息吹も宿り始めた「竹ン芸」。
秋空のもと、白ギツネたちは3年ぶりの妙技復活を無事に成し遂げた。

(テレビ長崎)

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