私たちのこれからを明るく照らす、SDGsなアクションに迫る「#ミライにα」。
保管期限を過ぎた企業在庫は、捨てればごみ、活かせば資源になる。

「余剰タイル」をアップサイクル

艶やかで見た目も美しいチョコレートがのったスタイリッシュなお皿。
実は、もともとお皿として作られたものではなかった。

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創業110年を超える老舗食器メーカー・ニッコーが運営する店舗、「LOST AND FOUND」。
実用性の高い日用品をメインとしたセレクト雑貨や自社で製造した食器を販売している。
食器コーナーの一角に置かれていたのは、もともとはお風呂で使われる予定だった「余剰タイル」をアップサイクルした商品。

食器の製造だけでなく、オーダーメイドのシステムバス事業も展開するニッコー。
浴室の床や壁などに使用されるタイルは修理の可能性も考え、一定数を保管。
しかし、期間が過ぎて保管する必要がなくなったタイルは未使用のまま、これまでは廃棄していた。

その量は年間約110トンに上る。そこで、食器メーカーならではのアップサイクルを実現した。

ニッコー 三谷直輝常務取締役:
卓上で使えるぐらいの大きさにカットして、面取りした商品です。
タイル状のお皿というのは世の中にすでにあるので、だったらお風呂で出る余剰タイルを陶磁器の方でお皿として販売する。そういった事業部間を超えるやりとりができないかなっていうことを考えて実現しました。

手に取ったお客さんの反応も上々だ。

女性客:
小物、アクセサリートレーでもいいなと思って、ちょうど見ていて。すごいおしゃれ。食器でもいけると思います。

余剰タイルをカットするだけで、新たな商品として生まれ変わった「アップタイルディッシュ」。
今後の取り組みについては、タイルだけでなく、役目を終えた食器も新たな形で活用したいと考えている。

ニッコー 三谷直輝常務取締役:
陶磁器を粉砕して肥料にする「ボナース」というものがあるんですけど、市場に出回っている我々の商品を回収してきて、それをボナースにして生産者に供給し、そこで食材ができて、それがまた消費者、レストランの元に渡って、口にするという、生物サイクルとしての循環をどんどん活発化するような取り組みを是非やっていきたいです。

「SDGコンパス」を道しるべに

三田友梨佳キャスター:
日本総合研究所シニアスペシャリストの村上芽さんに聞きます。
今回の試み、SDGsに詳しい村上さんの目にはどのように映りますか?

日本総合研究所シニアスペシャリスト・村上芽さん:
SDGsの視点からみると、目標12「つくる責任つかう責任」につながります。
産業廃棄物として捨てられていたものが生まれ変わることは、まさに「つくる責任」になります。さらに、消費者にとっても「タイルがこんなにかっこよく生まれ変わるんだ」 という驚きから、モノに愛着が沸き、長く大事に使うという「つかう責任」へとつながります。

三田キャスター:
消費者としても素敵だなと思って手に取ったものが、SDGsにつながっていると喜びも増しますが、今回の試みにはどんな特徴があるのでしょうか?

日本総合研究所シニアスペシャリスト・村上芽さん:
今回の試みは、タイルと食器という組み合わせだけに「省エネ」という効果も見逃せません。 タイルや陶磁器の食器を作るときには、高温で焼くことから、たくさんのエネルギーを消費します。
これに対して、今回の試みのように廃棄予定のものを「カットするだけでよい」というのは、新しい食器を一から作るのと比べてエネルギー消費が少ないため、目標7「エネルギーをみんなに、 そしてクリーンに」にも貢献しています。

三田キャスター:
企業が事業の中にSDGsを取り込む際に、どのようなことが重要になるのでしょうか?

日本総合研究所シニアスペシャリスト・村上芽さん:
何よりも本業との近さだと思います。今回の試みもそうですが、メーカーにとって、予備在庫をもつことも本業に含まれます。
予備在庫の一部を処分する際、「もったいない、 新たな商品が生み出せないか」と考えるのは自然であり、誰もが納得できるはずです。

三田キャスター:
企業がSDGsなアクションを起こす際に何か参考になるものがあるといいように思いますが、 これについてはいかがですか?

日本総合研究所シニアスペシャリスト・村上芽さん:
国連グローバル・コンパクトなどの団体が、「SDGコンパス」という企業のための行動指針を作っています。
ここでは「SDGsを理解」からはじめて、「優先課題」を決めて「目標を設定」、「経営への統合」を経て、最後に「報告とコミュニケーション」を行う5つのステップが示されています。
持続可能な社会作りのために何から始めればいいのかを考えている企業は、「SDGコンパス」を道しるべにすることができると思います。

三田キャスター:
企業のつくる責任、そして私たちのつかう責任。そのどちらかではなく、両輪がしっかりと回ることで社会は変わるのだと思います。SDGsに取り組んでいる企業の製品を買ってみる、その際に開発ストーリーに注目してみる。小さな心がけが大きな変化に繋がるかもしれません。

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(「Live News α」10月17日放送分)