優れた嗅覚で、犯罪捜査や行方不明者の捜索において活躍する警察犬。1日も早い現場出動を目指し、訓練を重ねる新米警察犬を取材した。
初対面の人の指示にも応えるまでに成長
新潟市西区の新潟県警察学校。2023年の現場出動を目標に訓練を積んでいたのが、1歳3カ月のシェパード「アイ」。リードを握る吉田優也主任とともに、2021年10月に警察犬係に仲間入りした。
この記事の画像(22枚)県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
アイは、おてんばさん。ひとことで言えば天真爛漫な子
警察犬は「鼻の捜査官」とも呼ばれ、人の3000~6000倍といわれる嗅覚を生かし、犯罪捜査や行方不明者の捜索などを担う。
県警 鑑識課警察犬係 遠藤祐一 係長:
秋はキノコ狩りや紅葉狩りで山に入って、道に迷う人がいて出動するときもある
昼夜問わず、要請があれば県内各地に出動する県警直轄警察犬。現在、県警が飼育・訓練しているのはアイを含めて3匹だが…。
県警 鑑識課警察犬係 遠藤祐一 係長:
1匹が12歳を迎えているので、引退させている状況。現在、5歳の黒いラブラドール1匹体制になっている
1匹にかかる負担軽減のため、1日も早い出動が求められている。
配属当時はまだ体も小さく、訓練時も周囲に気を取られ、叱られることも多かったというが…。
県警 鑑識課警察犬係 遠藤祐一 係長:
叱られても、くよくよしないで切り替えて訓練してくれる。すごくいい子
根気強く訓練を続けた結果、今では初対面の人の指示にも的確に応えるまでに成長している。
齋藤正昂アナウンサー:
私の指示を聞いてくれました。本当に頭のいい子なんですね
性格の異なる警察犬たち その相棒として
そんなアイたちの相棒を務めるのは、長年「鑑識官」として道具を使いながら、指紋や血液の採取など事件捜査を行ってきた吉田優也主任。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
道具は使い方を覚えればいいが、警察犬はそれぞれ性格が違うので、使い分けが難しいなというのはある
警察犬係に配属されてからは、犬の習性について学んだり、体力づくりに励んだりと、経験不足を努力で補う毎日だ。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
自分が成長しないと犬も成長しない。だからこそ、自分の成長を大事にした方がいいのかなと思っている
初めて警察学校の外へ 公園での訓練に苦戦
アイと吉田さんが配属されてから約1年。この日は普段、訓練をしている警察学校を初めて離れ、新潟市西区の公園へ。
ここで行われたのは、追跡する対象者の匂いをかがせ、その跡をたどらせる訓練。臭気は時間が経つにつれて分散してしまうため、追跡にはスピードが求められる。
県警 鑑識課警察犬係 遠藤祐一 係長:
やめさせて。探させて
普段とは異なる環境に苦戦するアイ。
県警 鑑識課警察犬係 遠藤祐一 係長:
色んな匂いがあるので、多少コースを外れたりはする
チェックポイントにある、対象の残したペンを見つけることができない。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
1回、戻ります
ルートを見失ってしまったため、再スタートさせることに。
吉田さんと絆深めるアイ 時間かかるも目的物を発見
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
気にしない、気にしない。そうそう、よく嗅いで
すると、アイは先ほど見落としたペンを見事発見。しかし、今度は散歩をしていた他の犬に気を取られてしまう。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
待てよ。あの犬が行ったら行くぞ。アイちゃん、いい子だな。お前、いい子なんだよ。ちょっと周りの匂いが強いだけ。大丈夫
アイに対して、優しい言葉をかけ続ける吉田さん。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
探せ、探せ。そうだ、そうだ。いいぞ、それでいい
時間はかかったが、最後の目的物を無事に見つけることができた。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
私の手綱さばき、リードさばきをもうちょっと上手くやれば、犬もうまく追跡に行かせられた。現場の状況に一番近いと思うので、こういうところで訓練をするのは、非常に自分のスキルアップ、犬のスキルアップにもつながる
課題は残ったが、訓練を終えるとアイをねぎらう吉田さん。そこには仕事を超えた絆があった。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
普段も、ここにいる間は生活を共にしているので、警察犬は家族みたいなもの
互いを理解し、信頼を深めながら、1日も早く現場へ。
県警 鑑識課警察犬係 吉田優也 主任:
何かの役に立てれば一番いい。そのために毎日訓練している。体格が良いもの同士、良いペアを組めれば
県警の「鼻の捜査官」のこれからに期待だ。
(NST新潟総合テレビ)