国産のロケット「イプシロン6号機」は、12日午前9時50分に打ち上げられたが、JAXAは打ち上げ後、ロケットを破壊する信号を出し、打ち上げは失敗した。

2003年以来の破壊指令

イプシロン6号機は、鹿児島・肝付町、内之浦宇宙空間観測所から、午前9時50分ごろに打ち上げられ、約30秒後、雲に入り見えなくなった。

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しかしJAXAによると、打ち上げから約7分後、ロケットの正常な飛行が続けられなくなったとして、宇宙空間でロケットの機体を破壊する信号を出したという。

イプシロンロケットとしては、初めての打ち上げ失敗。日本の基幹ロケットとしては2003年のH2Aロケット6号機以来の破壊指令となった。

会見したJAXAの山川宏理事長は、「深くおわび申し上げます」と謝罪し、布野泰広理事は今後の受注について、「少なからず影響はある」と述べた。

ロケットの向きを調整する姿勢制御に異常が見つかったためとしているが、異常の原因はまだわかっていないという。

固体燃料は精緻な制御が難しい

小澤 陽子キャスター:
早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。
小型ロケット「イプシロン」の打ち上げは残念な形になってしまいましたが、長内さんはどうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール 教授 長内厚さん:
ロケットには推進方式の違いで、固体燃料と液体燃料の2つがあり、精緻な制御とコストの点でトレードオフの関係にあります。

今回、打ち上げに失敗してしまったイプシロンは、固体燃料を使っています。
これはコスト的に有利である一方、精緻な制御が難しいという技術的な特徴があります。

一方、H2AやH2Bなどの大型ロケットが採用している液体燃料は、コストはかかりますが精緻な制御という面では信頼が高いものになっています。
今回のイプシロンの打ち上げ失敗が固体燃料ロケットの特徴によるものなのか、現段階ではわかりませんが、この失敗を次に活かして欲しいと思います。

小澤キャスター:
これからの日本の巻き返しに期待したいですよね。

早稲田大学ビジネススクール 教授 長内厚さん:
日本はロケットの打ち上げに関して成功率の高さで世界に知られています。
小型衛星などの打ち上げ需要が世界的に高まり、国際的な受注競争が激しくなろうとしている中、日本は経済性に優れたイプシロンに期待を寄せています。

そして日本はロケットの打ち上げ実績を積み、ゆくゆくはJAXAに代わって民間企業がロケットの打ち上げを担当し、より効率的、経済的な打ち上げに移管しようとしている最中です。
それが今回の打ち上げ失敗により、スケジュールに影響が出なければいいなと思います。

小澤キャスター:
宇宙を舞台にしたビジネスが広がろうとしている中、日本が存在感を示せるといいですよね。


早稲田大学ビジネススクール 教授 長内厚さん:
実はロケット打ち上げに関して日本は極めて特異な存在なんです。
ロケットの打ち上げ実績があるアメリカ、ロシア、中国といった国々は、軍事用のミサイル開発を行っており、そのノウハウをロケットに応用しています。

これに対して日本のロケット開発は、あくまで平和利用のために進めてきました。
日本が宇宙ビジネスで存在感を示すことは、宇宙の平和利用の広がりを示すことにもつながるのでますます頑張っていって欲しいです。


小澤キャスター:
今回の打ち上げの失敗は残念でしたが、これを糧に次の挑戦に期待したいです。

(「Live News α」10月12日放送分)