子どもたちに自由な遊びを提供して、心と体の成長を見守る。新潟県長岡市の広場で行われている取り組みを取材した。

「自分の人生を手作りするきっかけに」

長岡市西蔵王にある金峯神社。月に一度、夕方の境内は子どもたちの元気な声であふれる。

神社の境内で遊ぶ子どもたち
神社の境内で遊ぶ子どもたち
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かけっこにシャボン玉、さらには大人と水鉄砲で勝負。古典的な遊びに興じる子どもたちに目を配るのは、この遊びの場を提供する星野洸太さん(24)。

星野洸太さん:
プレーパークは子どもが自分の責任で遊ぶ場所

1970年代に東京で始まった、子どもたちの自由な発想による遊びを尊重するプレーパーク。「遊び方は子ども次第」というこの場所で、星野さんが務めるのは子どもをサポートするプレーワーカー。

手で砂を集めて遊ぶ子どもたちの近くに星野さんがスコップを置くと、子どもたちがスコップで砂を集め始めた。

星野さんが置いたスコップを使って砂集め
星野さんが置いたスコップを使って砂集め

星野洸太さん:
こちらから遊びを始めるのではなく、子どもの行動を見越して遊びを広げる。子どもたちが考えて、遊ぶ機会を育む。大人になったとき、自分の人生を手作りするきっかけになれば

子ども食堂の活動に制限…プレーパークで取り戻した“交流の場”

東京のプレーパークでプレーワーカーをしていた経験を持ち、長岡市内の子育て施設で働く星野さん。長岡で2021年4月から始まった「蔵王の杜プレーパーク」は、金峯神社で食による支援活動をしている佐竹直子さんとの思いが重なったことで実現した。

食で地域を支援しようと月に一度、みんなで食事をする「新町みんな食堂」。新型コロナウイルスの感染拡大によって、一緒の食事ではなく弁当の提供となり、交流する時間が失われてしまった。

1食100円で弁当を提供している「新町みんな食堂」
1食100円で弁当を提供している「新町みんな食堂」

2021年に始まった「蔵王の杜プレーパーク」には、「新町みんな食堂」と同じ日に開くことで、失われた交流の時間を補う思いも込められている。

新町みんな食堂 佐竹直子さん:
弁当を渡すだけでなく、交流が食堂の目的の一つ。ウイルス禍、交流の可能性を模索する中でプレーパークを始めたら、想像以上の効果が生まれた

「あえて経験させる」子供の自主性を大切に

いつもは子どもに囲まれている星野さん。この日は、自分より年上の人たちを前に講演を行った。

コミュニティーセンターで活動している人を対象にした講座で、星野さんはプレーパークで育まれる子どもの自主性や社会性について自身の体験を話した。

講演をする星野さん
講演をする星野さん

星野洸太さん:
あえてケンカの経験をさせる。その中で、自分たちでどうしたらいいのか考えるきっかけをプレーパークでつくる

講演終了後、参加者はプレーパークを視察。子どもたちに人気なのは、たき火なのだとか。

子ども:
こんなに火が強くなったら危ないよ

火に注意しながら、たき火を楽しむ子どもたち
火に注意しながら、たき火を楽しむ子どもたち

講演参加者:
たき火で熱い思いをしたり、痛い思いをしたり、そういう経験は大事だと思う

講演参加者:
今の親は遊びに上限をつけたり、誰かの責任問題にしてしまうことがある。プレーパークを始めるのは、かなり勇気がいることだったと思う

“みんなが生きやすい社会”へ 遊びを通し学ぶ社会性

星野さんがプレーパークで大切にしているのは、みんなで同じ空間を共有すること。

星野洸太さん:
この遊び場を通じて、障害がある子とない子が関わることによって、将来お互いが生きやすい社会になるんじゃないかと思う

障害あるなし関係なく楽しめるプレーパーク
障害あるなし関係なく楽しめるプレーパーク

お母さんと遊びに来ていた男の子は、プレーパークの日を楽しみにしているものの、誰かと一緒に遊ぶことが少し苦手。しかし、何気ない瞬間にお母さんはプレーパークでの子どもの成長を感じていた。

男の子の母親:
社会性を学んで、お友達との関わりも上手になってきた

ここでは保護者やボランティアスタッフも本気で遊ぶ。たくさん遊んだあとは、みんな食堂で野菜たっぷり、1食100円の弁当を持ち帰る。

保護者:
ご飯作りはお休み。子どもと遊ぶ時間が増えていい

星野洸太さん:
今、プレーパークで遊んでいる子どもが将来大人になって「自分たちもこういう経験をしたから、こういう場所をつくっていきたいよね」と運営してくれたら、地域の良い循環になる

子どもの成長を見守る夕方の神社に笑い声が響く。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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