新型コロナの感染者数は減少傾向が続いているが、このあと増えるとされているのが後遺症だ。感染者の約10人に1人の割合で、後遺症がみられるという研究データもある。
後遺症に苦しむ患者、治療にあたる医師を取材し、見えてきたのは、患者の増加に対し医療が追いついていない現状だった。

脳の精密検査受け「異常ない」…思考力低下、頭痛、吐き気に苦しみ休職

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
この状況、この頭で生きていくことを考えないといけない。生きる意味があるのかと思うことがあった

2022年3月に感染した、富山市に住む20代の男性。

熱や咳(せき)の症状から回復し、自宅療養があけて出社した際、これまで経験したことのない状況に見舞われた。

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後遺症に悩む富山市の男性(20代):
今、何言っていたっけ。理解できない。今の会話は何だったんだろう。何が何だかわからなくなってしまう

頭に霧がかかったように思考力が低下する「ブレインフォグ」と呼ばれる症状だった。

感染してから半年がたった今も、こうした症状に加え、倦怠(けんたい)感や頭痛、吐き気に苦しみ休職し続けている。

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
たまに、気の持ちようじゃないのかと言われる。働くことを苦痛に思ったことは一度もない。
このあとの人生、いろいろなことに挑戦したい。気の持ちようであれば、一瞬で治していると思う

男性は、これまで県内4つの病院を受診し、脳の精密検査も受けたが、「異常はない」と診断されていた。

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
孤独感の中で感情が…。涙が出てしまう

専門外来で「コロナ後遺症」と診断…医師に「焦ったら負け」と諭され

そして…。

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
きょうはすごく調子がいい。疲れを感じると頭痛や気持ち悪さが出てくるので、誰か一緒に同乗してもらい、運転をいつでも代わってもらえるようにしている

この日、妻と向かったのは、石川・加賀市にある後遺症の専門外来だ。

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
1時間半かかるし、高速代も往復5,000円ほど。ガソリン代もかかる。月1回の受診でも費用と時間の負担が大きい

石川・加賀市の新型コロナ後遺症の専門外来「ながたクリニック」。ここで、典型的なコロナの後遺症だと診断された。今は月に1度通っているという。

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
きょうの朝は調子よかったので、運転してきた。少し頭痛がきて、気持ち悪さがあって、眠気が強くなった。寝たら、1時間ほどで少し回復した

医師:
プッシュという状態があって、良くなると無理してしまう。きょうは奥さんの運転で、寝てきてもらうのが一番良い。
試したくなる気持ちはわかるが、疲れることは一切しないことが大事な治療

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
だらだらしている生活なんて嫌だと思ってしまう

医師:
長くなると焦るのは当然。この状態は焦ったら負け

後遺症に悩む富山市の男性(20代):
頭がボーっとするのは、ずっと残ってしまう?

医師:
ずっとじゃないために、今休んでいる。今日だけで5、6人に同じ話をしている。慎重に無理をせずにやってほしい

3カ月近く学校休み…後遺症が完治した高校生

2021年、後遺症の専門外来を立ち上げ、延べ500人以上の患者を診てきた永田医師。

この日、診療に訪れた後遺症の患者は10人。特に9月は富山からの患者が多く、全体の約7割を占めるという。

ながたクリニック・永田理希 院長:
過去にないくらい、毎日、コロナの後遺症や長引く症状に悩んでいる方が受診している。再診も初診も含めて、制限しないと、一般外来や発熱外来を圧迫しつつあるくらい増えている

デルタ株までの後遺症は、嗅覚や味覚障害が主な症状で、治る時間も比較的短かったという。しかしオミクロン株では、倦怠感やブレインフォグを訴える患者が増え、治療が長期化していると永田医師は話す。

ながたクリニック・永田理希 院長:
治療法のベースはできてきたが、決め手に欠ける。すてきな漢方があり、のどをぐりぐりとすれば良くなるという期待で来ている患者もいるが、基本はペーシング。
体も心も休養させることで、治癒促進させるサポートに、(薬などの)いろいろな治療法が報告されている

この日は、7カ月の治療の末、後遺症が治ったという富山・小矢部市から来た高校生もいた。3カ月近く、学校を休んだという。

後遺症が完治した富山・小矢部市の高校生:
徐々に良くなって、今日で完治した。
(最も辛かったのは)部活動、野球ができなくて。チームと一緒にいたかった

この高校生も、富山県内の病院を3か所回ったあと、この専門外来に行きついたという。

後遺症が完治した富山・小矢部市の高校生:
富山県にも専門的な知識を持った先生がいればいい。ここまで結構時間がかかるので、便利になってほしい

ながたクリニック・永田理希 院長:
対応できる医療機関を連携して増やしていかないと、キャパオーバーになってくる。なかなか終わりが見えない。何とか行政に問題として把握してもらい、動いてほしい

コロナの後遺症について富山県は「まずは症状に応じて、かかりつけ医に相談してほしい」と呼びかけている。ただ、ほかの県では、後遺症に対応する医療機関をリスト化するなど、対策に乗り出す自治体も増えている。

永田医師は、今後、後遺症の患者は確実に増えるとしていて、富山県内でも対策が求められている。

(富山テレビ)

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