新型コロナの流行で、前年(2021年)・前々年(2020年)と、極めて低い感染者数だった季節性インフルエンザ。2022年は流行の兆しがあり、コロナとの同時流行も懸念されている。
インフルエンザ流行の可能性とワクチンについて、専門医に聞いた。

コロナと同時に流行も…インフルエンザ予防接種始まる 

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大阪市では10月から高齢者を対象に、無料のインフルエンザの予防接種が始まった。中央区の小畠クリニックでは、10月4日の午前中だけで、6人が接種を受けていた。

小畠クリニック・小畠昭重 院長:
徹底したコロナ対策がちょっと緩んできたから、インフルエンザも入ってきて、免疫ない世代にはやったんかな…オーストラリアから流れてきたと思うけど

例年、推計1000万人が感染していたインフルエンザ。
昨シーズンは約3000人と大きく減っていたが、日本の流行予測の参考にされる南半球のオーストラリアでは、2022年に大流行となり、新型コロナとの同時流行も起きた。

今後、入国制限も緩和される中、厚生労働省は過去最多となる約7042万人分のインフルエンザワクチンを確保する予定だ。

小畠クリニック 小畠昭重 院長:
同時に流行しないと思ってたんやけど、コロナと併存することが分かったからね。高齢者は(コロナワクチン)4回目接種を終えてるので、5回目来る前にインフルエンザの予防接種しましょうって、今打ってます

インフルエンザのワクチンを打ったほうがいいのか?専門医の解説

インフルエンザは実際に流行するのか。ワクチンは打った方がいいのか。関西医科大学附属病院の宮下修行教授に聞いた。

関西医科大学附属病院・宮下修行 教授(左)
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授(左)

――日本でのインフルエンザの流行について、参考になるのが南半球のオーストラリアなんですか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:

そうですね、日本の夏はオーストラリアの冬です。インフルエンザは冬にはやる病気なので、南半球の冬を参考にして、日本での流行の有無や「型」についての対策を練ります

――そんなオーストラリアでは、去年(2021年)はほとんど見られなかったインフルエンザ感染者が今年は急増していて、コロナ前の平均よりかなり感染拡大している状況です。何が要因なんでしょうか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:
一番は、この2年間インフルエンザがまったくはやらなかったことです。はやらないということは、私たちのインフルエンザに対する免疫が下がっているということで、一度はやり始めると大流行になる。
インフルエンザはコロナと違い、子供から流行が起こります。子供から社会に拡散する病気ですから、一気に広がりやすい。
もう一つ、オーストラリアには、北半球で冬にはやったものが運び込まれてきていますので、重要なのは外国人観光客の受け入れがどうだったのか。これにもよりますね

――日本もこれから入国制限が緩和されますね。オーストラリアでの今年の流行ですが、インフルエンザのウイルス型判明分の8割が「H3N2亜型」だったそうです。この型に対する日本人の抗体保有率は、0~4歳で10%程度、70歳以上で40%程度だそうですが、この数字はどう判断したらいいですか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:

かなり下がっていると思います。「H3N2亜型」は、高齢者の肺炎のリスクがかなり高いです。5歳未満の重症化率は高くありませんが、重症化すると脳症が起こりやすいのがこの型の特徴です。今年は要注意です

――宮下教授は「インフルエンザワクチンを打つべき」という見解ですね。インフルエンザワクチンは、流行の型によって“当たり外れ”のあるイメージですが、今は「4価ワクチン」という、A型のH1N1株とH3N2株・B型の山形系統株・ビクトリア系統株の4つに対応したワクチンを混ぜたものを打っているということです。型による“当たり外れ”はそうないと思っていいのでしょうか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:
そうですね。ただ、H3N2株は変異をします。ワクチンは「継代培養(けいだいばいよう)」といって、ニワトリの卵の中で継代していきます。すると、H1、H3というのは変わっていき、効果が落ちてしまうということが分かっています。H3N2「亜型」というような、マイナーチェンジも起こります

――幅広く対応はしているけれど、“当たり外れ”はまだあるということですね。効果については、65歳以上の高齢者で発症予防が34~55%、死亡予防が82%なんですね
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:
はい、ワクチンの重要なポイントは、発症予防ではなく重症化予防、死亡抑制です。特に今年は高齢者の肺炎リスクが高いので、8割の死亡予防はかなり大きいです

――乳幼児への効果は、発症予防は20~60%。重症化予防は「有効性がある」とする論文は散見されるものの、明確な数字は出ていないと…これはどう見ればいいですか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:
そもそも、乳幼児の重症化率はそう高くありません。少ない中で数えますので、有意差が出たり出なかったりということになります。ただ、脳症は後遺症が残るのが一番の問題なので、僕はワクチンを打つべきだと思います

――コロナワクチンの3回目・4回目接種とインフルエンザワクチンの接種では、どちらを優先して接種するべきか。宮下先生は「副反応が1回で済む」ということで同時接種を理想とされています。左右の腕にそれぞれ接種して、時間の間隔を空ける必要もないということで、「単独接種と比較して有効性・安全性が劣らない」という報告もあるんですね
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:

去年から、インフルエンザとコロナの同時流行を想定して検討が行われてきました。それによると、免疫もきちんとつくし、安全性にも大きな問題はない。
ならば1回で済ませた方が、副反応が少なく理想的であるということになります。同時接種によって副反応が重くなるということも、今までのデータではありません

――高齢者と乳幼児はインフルエンザワクチンを打った方がいいということですが、それ以外の若い世代は、個々の判断で大丈夫ですか?
関西医科大学附属病院・宮下修行 教授:

そうですね。ただ、コロナとインフルエンザが同時流行するとダブルパンチになり、より強く症状が出るということも分かっています。優先順位はありますが、ワクチン接種はやはり考慮すべきかなと思います

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月4日放送)