きょう10月6日は「世界脳性まひの日」だ。
世界では10年前の2012年から各国の支援コミュニティの間で脳性まひへの理解を広げる活動が行われてきた。そして今年日本でも初めて「世界脳性まひの日」に、自治体や企業を巻き込んだ本格的なイベントが行われる。
「グリーンライトアップで取り組みを応援」
「10月6日の夜はシンボルカラーのグリーンに都庁舎をライトアップして、取り組みを応援していきたい」
東京都の小池百合子知事は9月30日の記者会見で「世界脳性まひの日」についてこう語った。
「皆が輝く東京都ということを考えますと、脳性まひに対しての理解の促進、また脳性まひの障がいのある方でも安心して暮らせる共生社会の実現はまさに東京都が目指すことであります」

「イベントと様々な機会を通じて脳性まひの方、あるいは障がい者の方に対する理解が進むことは大変ありがたい」
また加藤厚生労働相は3日の閣議後会見で、「世界脳性まひの日」のイベント開催についてこのように謝意を示した。

そして加藤厚労相は「特に分娩に関連して発症した重度脳性まひのお子さんやその家族に対しては、産科医療補償制度によって補償金の給付を行い、経済的な負担を補償するといった制度も設けている」としたうえで、「引き続き脳性まひの方、さらには障がい者の方への支援を着実に進めていきたいと考えています」と語った。
脳性まひを誰も知らないことに気づいた
「世界脳性まひの日」を日本で初めて本格的にイベント展開するのが、俳優の東ちづるさんが代表を務める一般社団法人Get in touch(ゲットインタッチ)だ。Get in Touchは音楽、アート、映像、舞台などエンターテインメントを通じて、誰も排除しない「まぜこぜ」の社会の実現を目指している。
今回Get in touch は世界各国で展開される「世界脳性まひの日」を、シンボルカラーのグリーンにちなんで「Warm Green Day (ウォームグリーンデー、あたたかなみどりの日)」と名付けた。

9月20日の記者発表で、東さんはWarm Green Dayを立ち上げた理由をこう語った。
「以前一緒に活動した脳性まひの方が『脳性まひの日もあるのに誰も知らない』ってボソッとつぶやいて、『え?そうなの?』と初めて10月6日の『世界脳性まひの日』を知ったのです。そこで日本でもやろうという話になったものの、脳性まひについて皆何も知らないことに気づかされました。『知らない』ということは誤解や差別を生みます。脳性まひについて学びたい、知りたいという思いからイベントを計画しました」
「脳性まひは誰でも起こりえます」
脳性まひという言葉をこれまで聞いたことが無い人はいないだろう。しかしどうして私たちは脳性まひについて何も知らないのだろうか。
「脳性まひは誰にでも起こりえます」
こう語るのは小児科医・新生児科医で一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事の今西洋介さんだ。脳性まひとは、お母さんのお腹の中にいる間から生後4週間までの間に発生した脳へのダメージによって、引き起こされる運動及び姿勢の異常を指す。

今西さんはこう続ける。
「原因は妊娠中の感染症や多いのが分娩時の事故、胎盤がはがれたりへその緒が断裂することで一時的に低酸素になって脳にダメージを与えたり、早産で脳から出血したり。つまりこうしたことによる後遺症と言えます」
脳性まひには様々な症状がある
脳性まひの定義について今西さんは「四肢のうち1つ以上が筋緊張が亢進する(※)状態ですが、症状は人それぞれで、成長に伴って症状が変わることもあります」と語る。実は筆者はこれまで脳性まひ=知的障がいや言葉の障がいと考えていた。それを言うと今西さんは「一般的にそう思われていますね」としたうえで、次のように語った。
(※高い度合いで進むこと)
「だから話すことができる脳性まひの方がいると驚かれたりします。脳性まひの症状や特性は人それぞれです。全く知的な障がいもなく、片手は動かせないけれど普通に歩ける方もいますし、身体が自由に動かせず人工呼吸器が欠かせない方もいます。こうしたことは一般的にはあまり知られていませんね」

心無い言葉を浴びるケースも少なくない
今西さんは医療現場で脳性まひの子どもや保護者と接する事が多いが、「心無い言葉を浴びるケースも少なくありません」という。
「気持ち悪いと言われたり、お母さん同士の集まりで『集まりに来ないでほしい』と言われたり。福祉も高齢者のための制度設計になっているので、子どもの支援や補助は少ない。そうするとお母さんは仕事を辞めざるを得ず、社会的に孤立します。また脳性まひは症状があまりにも多様なので、脳性まひとしての団体が少ないことも課題です」
脳性まひへの差別や偏見は、脳性まひのこうした特性が理解されていないことが理由なのかもしれない。
ランドマークやSNSがグリーンに染まる
きょうは、自治体や企業の協力を得て、各地のランドマークがグリーンにライトアップ(一部デコレーション)される。前述の東京都庁のほか、神奈川県庁、さいたまスーパーアリーナ、千葉県庁、群馬県庁、世田谷区役所のほか、京都タワー、フジテレビ、渋谷エクセル東急、小田原城、平塚駅前噴水などがグリーンに染まる。
なかでも京都タワーは、脳性まひの重度障がい者である娘を持つ父親が、一個人としてライトアップを申し込み実現したものだ。

さらに都内で参加型イベント「生きづらさだヨ!全員集合」を開催するほか、SNS上でグリーンアイテムを身に着けた写真をハッシュタグをつけて投稿しようと呼びかける。
今年の10月6日「世界脳性まひの日」は、日本全国がグリーンに染まる記念すべき第一歩となる。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】