“ひきこもり”ではなく“こもりびと”という独自の名称を使う神奈川県大和市が“こもりびと支援条例”を9月27日に施行した。

大和市はこもりびとを、「様々な要因の結果として社会的参加を回避し、市内においておおむね6か月以上にわたり家庭等にとどまり続けている状態の者」と定義。市の責務のほか、市民、関係機関の各役割、市が実施する施策などを定め、これまでの取り組みを継続して実施するとともに、当事者とその家族が孤立しないよう、様々な側面から支援し、施策の一層の推進を図るとしている。

市が調査した範囲では、「ひきこもりの支援に関する総合的な施策の推進、ひきこもり当事者等が希望する時に必要な支援につながることができる地域社会の実現を目指すことを目的とした条例の制定」は全国で初めてだという。

また、市は満15歳~64歳のひきこもり状態にある人の数を約2300人と推計。市健康福祉総務課によると、これまで大和市が相談を受けているこもりびとの年齢層で見ると、30歳代が最も多く、40歳代、20歳代、50歳代と続く。また、男女比では男性が約7割、女性約3割となっているという。

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今後について、健康福祉総務課の担当者は「引き続き当事者等に寄り添い丁寧に相談を重ねていくとともに、こもりびとが気兼ねなく過ごせる居場所、当事者や家族の集いを実施しながら、保健師等の専門職や関係機関と連携し、課題解決のための支援を行っていく」と話している。

「こもりびと」は市長の発案

近年は特に、ひきこもりの増加が社会問題化しているようにも感じる。このような取り組みには期待したい。

しかし、まず気になるのが、“ひきこもり”ではなく“こもりびと”というネーミングだ。なぜこのように決まったのか? また、今回の条例施行の市民の反応はどうか?

大和市役所健康福祉総務課に聞いてみた。


――こもりびと条例施行により、一番大きく変わるのは何?

条例制定により市の取り組みを広く知っていただき、当事者だけでなく、一般の市民のこもりびとへの理解を深めるきっかけとなり、将来的には誤解や偏見のない地域づくりにつながることを目指しています。そして、より多くの相談につなげていければよいと考えています。


――なぜひきこもりではなく、こもりびとという名称にした?

一般的に「ひきこもり」という言葉は負のイメージで受け取られ、当事者やそのご家族にとっては、レッテルを張られているかのように感じられていました。そのような状況を踏まえ、当事者や家族等の気持ちに寄り添いたいとの思いから、市長の発案で「ひきこもり」より温かみのある「こもりびと」という呼称を使用することにしました。


――大和市ではいつから“こもりびと”という名称を使っている?

令和元年10月のこもりびと支援窓口設置の際から、こもりびとと呼称しています。

市民「ひきこもり問題への理解促進に取り組んでくれるのはありがたい」

――市民らの反応は?

条例において、止むを得ずひきこもることを選択したことを認め、受け止めることに対する賛同の声や、市が取り組む社会問題としては意義深いといった声、当事者等からは市がひきこもり問題への理解促進に取り組んでくれるのはありがたい、こもりびとへの理解促進のための啓発活動に取り組んでほしいといった声が寄せられています。


――市の職員の反応は?

令和元年10月からこもりびと支援窓口を設け、相談支援や当事者やご家族の集い、居場所等の取り組みを行ってきましたが、条例制定を受け、今後さらにそれらの施策の充実や新たな相談支援等から得られた声を施策に反映していくことが出来ると考えています。

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課題解決型支援と伴走型支援が必要

――“こもりびと”に関して、市ではこれまでどんな取り組みをしてきた?

専門相談員による相談を受け付けているほか、こもりびとが自由に過ごすことができる「居場所」の提供、こもりびと当事者やご家族の「集い」の実施、講演会の開催、こもりびと支援のためのハンドブック作成などを行っています。


――その成果はあった?

こもりびとの「居場所」や「集い」に継続的に出席することができるようになった方、相談を重ねた結果、就労支援窓口につながり活動中の方や就労された方、ひきこもりの状態から自立された方などがいらっしゃいます。


――こもりびと支援の一番の課題は?

当事者一人ひとり、経緯や状況は異なり、その対応も千差万別です。その当事者に相応しい支援や対応を的確に判断し対応することが求められます。

また、こもりびとの支援には、当事者やそのご家族等にとって今ある課題に対する支援を行う課題解決型支援と、止むを得ずひきこもっていることを受け入れ、ともに時間を過ごし、信頼関係を築きながら、歩き出そうとしたときに支援を行う伴走型支援の2つの支援を行う必要があり、行政だけで行えるものではありません。市民、事業者を含む地域もこもりびとに対する理解を深め、誰一人取り残さない地域づくりを進める必要があります。


「ひきこもり」より温かみがあるとして「こもりびと」という呼称を使用する大和市。担当者が話すように、こもりびと当事者だけでなく、一般の市民が理解を深め、将来的に誤解や偏見のない地域づくりを目指すことが重要なのかもしれない。