安倍元首相亡き後、その遺志を継ぐと公言する高市早苗経済安全保障担当大臣。BSフジLIVE「プライムニュース」では高市氏を迎え、日本の保守政治の課題、旧統一教会問題、経済安保において国益を守るための方策について伺った。

旧統一教会問題 根本解決のため「反社」の定義を明確に

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反町理キャスター:
岸田内閣の支持率は、世論調査で「支持しない」が「支持する」を超えた。支持率が下がってきた原因として、旧統一教会問題への対応に国民が不信感や疑念を抱いているという指摘も。高市さんはこの問題に対してとるべき姿勢をどう考えるか。議論を終わらせるには。

高市早苗 経済安保相:
旧統一教会問題が出てきたとき、当時の政調会長としてフランスの反セクト法、また日本の宗教法人法の条文を読み込んだ。そこで、これは旧統一教会に限らずさまざまな宗教団体で似たようなことがあるのかもと思った。実はうちにも謎の大黒さんがあって、母が亡くなった後に大変困った。

反町理キャスター:
本当の話ですよね。

高市早苗 経済安保相:
いや本当の話。うちは先祖代々真言宗で、そこはちゃんとしているが、それと別に宗教法人格を持つ個人のお寺の人と母が話して大黒さんを買ったようで。私はそれを知らなかった。母が亡くなったあと、ある日知らないお寺から電話がかかってきた。うちにある大黒さんを遠くから拝んでくださっていて、毎月2万円かかるのだと。亡くなると口座凍結されるから、2万円が落ちなくなったという文句の電話。

反町理キャスター:
(笑)。

高市早苗 経済安保相:
お悔やみの言葉もなく。遠くから拝んで毎月2万円はありえないと思い、床の間の隅にいた大黒さんを宅配便で返したら、それを御供養して処分するお金が40万円かかると。縁を切りたいから泣く泣く40万円払ったが、今回の旧統一教会の話を聞いていたら、これは私も被害者なのではと。

反町理キャスター:
河野消費者担当大臣に問い合わせた方がいい。

高市早苗 経済安保相
高市早苗 経済安保相

高市早苗 経済安保相:
担当の葉梨法務大臣に、旧統一教会以外にもさまざま同様のことは起きていると、大黒さんの話をした。旧統一教会に限定せずきっちりと消費者を守り、信者さんを守る法体系が必要。宗教法人法に、不当な経済活動をしていると思われる場合に法人格をなくしてしまう条文があってもいい、ということを政調会長時代に整理していた。ただ、今のところ内閣としては法改正にまで踏み込む予定はないように見える。

反町理キャスター:
なるほど。

高市早苗 経済安保相:
自民党としては今後、旧統一教会の関連団体も含めてお付き合いしないと言っている。私も自民党員としてこの方針をしっかり守る。だがそれでは根本的な解決にならない。反社会勢力とは何なのかという定義が欲しい。それに該当する団体や企業はどこなのか、国会議員、地方議員、そして国民の皆様にも周知してほしい。

反町理キャスター:
そう! なぜその話をしないのかと何人かの自民党の国会議員に聞いたら、今の世論の風の中では言えないと。高市さんが初めて。

高市早苗 経済安保相:
基準がはっきりしないまま叩いている。また、関連団体まで全部の名前など覚えているわけがない。私も21年前に統一教会系の「ビューポイント」という雑誌に載ったと公表したが、関係を知らなかった。勝共連合の人とも選挙で戦ったし、韓国に対して散々厳しいことを言ってきた。その雑誌がなぜ私を載せたのかもわからない。そう考えると、「ここがこう法に反している」と反社会的団体の一覧表を配ってくれと思う。私もこれから細心の注意を払う。だが、やはり被害を受ける人を減らすことに没頭するのが政府の役目ではないか。

通常国会にセキュリティ・クリアランスの制度を入れた経済安保推進法を提出する

新美有加キャスター:
経済安保における日本の現状で一番危機感を覚える点は?

高市早苗 経済安保相:
経済安全保障推進法は5月に成立した。ここからいろんなことをやっていくが、今回の法律に欠落しているのはセキュリティ・クリアランス。

反町理キャスター:
それは何ですか。

高市早苗 経済安保相:
セキュリティ・クリアランスは、重要な情報にアクセスする資格。安倍元総理が一番苦労された特定秘密保護法では、国家公務員について定められている。一番欠けているのが、重要な情報を扱う民間企業について、例えば海外の政府調達に参加したり重要技術を持つ海外の民間企業と契約したい場合。整備しておかなければ、日本の優秀な企業が一緒に安全保障をやっていく同士国・有志国との取引からも、共同研究からもはじき出される可能性がある。経済安保推進法の改正案として、これを入れたものを出したい。これらの国が、安心して機微な情報を日本と共有しながら一緒にリスクの高い国と対峙していけるかどうかが鍵。

反町理キャスター:
法案として国会に提出するのはこの秋には間に合わないとして、通常国会を目指している? 

新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、高市早苗 経済安保相
新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、高市早苗 経済安保相

高市早苗 経済安保相:
今、どういう場合にセキュリティ・クリアランスが必要か洗い出している。経済安保大臣に就任した日に言われたのは「中国という言葉を出さないでくれ」ということと、「来年(2023年)の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安保推進法を提出することは、口が裂けても言わないでくれ」ということ。

反町理キャスター:
それは……(笑)。年明け早々にぜひもう一度うかがいたい。

高市早苗 経済安保相:
内閣府の長は内閣総理大臣。法律案を書くよう役所の方に命令する権利は私にはない。まずは岸田総理の説得からかかりたい。

「今より後の 世をいかにせむ」安倍氏から保守政治を継ぐ高市氏の決意

菅義偉 前首相
菅義偉 前首相

新美有加キャスター:
9月27日の安倍元総理の国葬には、どのような思いで参加されたか。

高市早苗 経済安保相:
涙が枯れるぐらい泣きました。もうこれでお別れだという寂しさもいっぱい、そして犯人に対する怒り。悔しかった。一番涙が出たのは菅義偉前総理の弔辞。共に戦った者としての話があった。TPP交渉に入ったときの話では、当時の安倍総理と菅官房長官は一体だと思っていたが、けっこう言い合いもしてはったんやなと。私もしょっちゅう安倍総理と言い合いになって。

反町理キャスター:
そうなんですか。

高市早苗 経済安保相:
トランプ大統領になりアメリカがTPPから抜けたとき、日本がリーダーシップをとるチャンスだと言ったら、日米関係を非常に重視される安倍総理は怒っていらした。新型コロナの給付金について、それからポスターに載せる自民党のキャッチコピーをめぐっても言い合いに。

反町理キャスター:
けっこう安倍さんを不機嫌にするケースが多かったんですね。

高市早苗 経済安保相、安倍晋三 元首相(画面)
高市早苗 経済安保相、安倍晋三 元首相(画面)

高市早苗 経済安保相:
とても多かった。ただ安倍元総理のいいところは、2〜3日、長ければ1週間ぐらい口をきいてくれなかったこともありますが(笑)、早ければその日の夜には「ちょっと今日は言い過ぎたよね」と電話をくださったり。ねっちょりしたところと、さっぱりしたところ、両方をお持ちの立派なリーダーでした。

反町理キャスター:
安倍さんは総裁選で高市さんを応援した。何を託したのか。日本の保守の将来に対する危機感を共有されていた?

高市早苗 経済安保相:
こういう政策を言え、などということはなかった。ただ国家の究極の使命として、国民の皆様の生命と財産を守る、国家の主権と名誉を守ると私が申し上げたのは、安倍総理がずっと一生懸命やってこられたこと。長年それは同じだと思ってきた。

反町理キャスター:
日本の保守政治において「安倍ロス」がどの程度深刻なものかが、まだわからない。

高市早苗 経済安保相:
安倍総理の代わりなんているわけないが、やり残されたことはいくつかある。憲法改正、拉致被害者の奪還、防衛力、アベノミクスの完成。先立たれてしまい、これからどうするかというのが私たちの課題。菅前総理の弔辞、山県有朋の歌の引用にうるっときた。

反町理キャスター:
伊藤博文が亡くなったことへの「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」。安倍さんがいない状況で、引き継いだ課題をどう達成していくか。総裁、もう一度狙いますよね?

高市早苗 経済安保相:
それ今聞くん? 8月に岸田内閣の一員になりましたよ。

反町理キャスター:
でも、決意のお話はまた別じゃないですか。

高市早苗 経済安保相:
私には私なりの決意があり、先ほど申し上げたことをやり抜くために政治家をやっています。べつに選挙に勝つことやポストを得ることが目標ではない。やり抜きたいことがあるから、どんな苦労があっても政治家をやっている。今は岸田内閣がしっかり結果を出すため、与えられた仕事を懸命にやらせていただく。

(BSフジLIVE「プライムニュース」9月28日放送)