9月29日、日中両国は国交正常化50周年の記念日を迎えた。
習近平国家主席が岸田首相に新型コロナ罹患へのお見舞いと50周年に触れるメッセージを送ったのが8月22日。安定した関係を模索する動きはあるものの、「相手が中国だけに読めない」(日本外交筋)という。

読めない理由のひとつは、国の仕組みが全く違うからだ。情報が管理され、直接民意が届かない政治体制。選挙もなければ野党もない、そんな体制の指導者はどのような気持ちなのだろうか。

ある外交筋からこんな話を聞いた。「指導部は国民が何を考えているか、全くわからないまま政策を決定している。これほど怖いことはない」。
確かに、中国には世論調査もなければ支持率という概念もない。国民が政府に何を期待し、何に不満を持っているのかがわからない手探りの政治は不安だろう。日本もアメリカも、支持率は政権が安定しているかどうか、また国民の思いを推し量る大事なバロメーターだ。

「見えない世論」を相手に徹底管理
中国もゼロコロナ政策、労働人口の減少、台湾問題、ウクライナ情勢、アメリカとの摩擦など内政、外交ともに様々な課題を抱えている。
「核心」にまでなった習主席にとっても解決策を見出すのは容易ではない。民意と言っても貧富の格差、都市と地方の格差、民族間の格差など、中国には激しい格差があるだけに、民意を探り、国内の安定を図ることは難しい。逆に言えば、中国では国内の安定が政権支持の証明であり優先される。

その安定を図る動きは、10月16日の共産党大会を前に強まっている。江蘇省の蘇州市では8月、日本の浴衣を着ていただけで女性が拘束された。若者のファッションのひとつになった日本のセーラー服を販売する店は、ネットで叩かれることを恐れて取材を断った。

普段の生活で反日を感じることは全くないが、目に見えない「自粛ムード」はじわじわ広がっているようだ。

国民の不満を解消する手段とされるのが、暮らしを豊かにする経済成長だ。だが、ゼロコロナ政策で人の行き来はままならず、2022年の経済成長率目標「5.5%前後」は絶望的だとも言われている。富を分配する「共同富裕」もどこまで実現できるかは不透明だ。「裕福になることは権利意識の向上に繋がり、体制批判の元にもなる」(別の外交筋)という矛盾も抱えることになってしまう。

支持率等に左右されてしまう日本の政治と、見えない世論を相手に徹底管理する中国の政治。全く違う政治制度を持つ中国とどう付き合えばいいのか。ある日本大使館幹部は「中国を容認できないところはたくさんある。でもそういう国が実際に存在していることを前提に考えないといけない」と語った。経済的なつながりや安全保障上の問題は実際に存在する。中国との関係なしには立ちゆかないのが日本の現実だろう。


50年前の日中共同声明には「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが可能である」とある。
制度の違いを前提にしているなら、政府間でも国民レベルでも話し合い、まずはその違いを理解することが肝要ではないだろうか。
【執筆:FNN北京支局長 山崎文博】