沖縄のパイナップル畑から生まれたジーンズとは。

収穫後の株を有効利用

カモメロゴのペンキスティッチが特徴のEVISUジーンズ。

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製品表示タグには「パイナップル」の文字があるが、その秘密は沖縄にあった。

パイナップルの一大産地、沖縄県北部にある東村。道の駅に入ると、至る所にさまざまな品種のパイナップルが置かれている。

そんな中、「Live News α」が注目したのは、収穫が終わったばかりのパイナップル畑。これまで価値のないものとされていた、果実のついていない残された株が一変、“有望株”になっているという。

フードリボン・平良香織常務:
本来であれば使わない部分、今まで残されて使われなかったところを利用させてもらっています。
 

沖縄発のスタートアップが開発したのは、繊維質が多いパイナップルの葉っぱから効率的で高品質な天然繊維を抽出する技術。

この天然繊維は衣料に適しているといい、“ファーマーズテキスタイル"と名付けられ、アパレル企業に販売されている。

EVISUジーンズではデニム生地の横糸に、コットンとパイナップルの繊維を混紡した糸を使用。吸水性や発散性が高く、さらっとした肌触りが特徴だという。

フードリボン・平良香織常務:
(葉っぱ)の重量に応じて、ダイレクトにその場で農家さんに支払う仕組みにしていきたい。最終消費者に、どこの地域のどの農家さんが作った葉っぱから洋服ができているか、きちんとトレーサビリティーがとれるのも新しい価値につながるのではないか。

農家の所得向上にもつながる、どこも捨てるところがない沖縄のパイナップル。

沖縄美ら島ファーム・宮里政智専務:
(葉っぱが)ある程度利用が広がって売り上げが伸びれば、生産性を上げるために雇用、人を増やすなり機械の大型化ができる。

そしてこのアパレル製品は使用後には土に返し、その土を使った有機農業を行うという循環型ビジネスを目指している。

フードリボン・宇田悦子代表:
(天然繊維産業の創出で)新しい沖縄のブランドを日本・世界に向け発信していくことができる。東南アジアと連携し、原材料をしっかり供給できる状態にして、ヨーロッパやアメリカに繊維製品を出していくような拡大をしていくことで、雇用拡大・所得向上などの課題解決に結びつけていきたい。

日本の繊維産業が再び輝く機会に

小澤陽子キャスター:
マーケティングや消費者行動を研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
今回の試み、どうご覧になりましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
パイナップルの繊維からつくったジーンズはSDGsの視点から見ると、世界を変える目標12の 「つくる責任 つかう責任」にあたります。

この「つかう責任」についていうと、いまファッショニスタをはじめ、消費者が洋服をエコで選ぶ時代になりつつあります。 そのため多くのファッションブランドも 「つくる責任」を果たすために、持続可能な素材の使用に積極的になっています。

中でも今回のパイナップル繊維のような植物由来の繊維は、省資源でサステイナブルな代替案として注目されています。
例えば、サルバトーレフェラガモもオレンジファイバーと呼ばれる柑橘類の廃棄物から作られた素材でコレクションを2017年に発表しています。

小澤キャスター:
確かに、地球に優しいものを選ぶ方が増えているように感じます。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ファッション業界において食品の廃棄物などを原料として使用することは今は有利ではありますが、これからコモディティ化する可能性があり、さらにその先を見すえた取り組みが求められます。

実は、ここで日本の繊維産業が輝きを取り戻す機会が訪れる可能性があります。

小澤キャスター:
日本の繊維産業が輝きを取り戻すとはどういうことでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
日本の繊維産業は戦後の復興にも大きな役割を果たしましたが、大量生産、大量消費の時代を迎えると一転して、国内生産は縮小を余儀なくされました。

この逆風の中で生き残った繊維メーカーは強いものづくり力を有し、付加価値の高い素材が世界にも認められています。食品廃棄物を使用した植物由来繊維も日本特有のきめ細やかさや職人技を活かして、付加価値の高い素材を生み出せるのではないでしょうか。

そして企業に求められている「つくる責任」について世界をリードすることを期待したいです。

小澤キャスター:
やはり日本は世界にも認められる技術を沢山持っていて、どこか誇らしい気持ちになります。 その技術を活かして日本は「つくる責任」を果たすために、スピード感も必要なのかもしれません。

(「Live News α」9月20日放送分)