“海の厄介者”が、おいしいおすしに変わった。

キャベツで臭いを軽減

見慣れない名前「キャベツニザダイ」。見た目はよく見るタイのようだが、いったいどんな魚なのだろうか。

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くら寿司が16日から販売するのは、市場であまり取引されない低利用魚「ニザダイ」を使用した、おすし。

ニザダイは、魚の産卵や成長に必要な海藻を主食とすることから、磯焼けの原因とされ、本来は駆除対象の“海の厄介者”として扱われている。

また、主食としている海草の影響で、身は独特な磯の香りが強く、商品化へのハードルも高いとされていた。

そんな中、新たな取り組みとして行われたのが、キャベツを餌としたニザダイの養殖。
漁獲したニザダイを養殖用のいけすで管理し、海藻の代わりに廃棄予定のキャベツを餌として10日間ほど与え続ける。

その結果、問題視されていた臭いが軽減することが判明。ニザダイが本来持つ、良質な脂ののりや食感を生かしたおすしが誕生した。

今回の取り組みは、漁業者との共存共栄を目指し、くら寿司が2010年から実施している天然魚プロジェクトの一環として行われたものだ。

くら寿司 広報部ジュニアマネージャー・小山祐一郎氏:
低利用魚といわれるニザダイの活用は、SDGsと為替への影響に対する対応、いろんな理由でなかなか流通していない魚をうまく商品化すれば、漁師さんにもその分還元ができるし、貴重な海の資源を有効活用することもできる。こういった国産の天然魚、低利用魚も含めて為替の影響を受けないので、お客さまにもリーズナブルでおいしいおすしをこれからも提供し続けていきたいと思います。

回転寿司の魚食文化への貢献に期待

三田友梨佳キャスター:
マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。今回のくら寿司の取り組み、どうご覧になりますか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
せっかく魚を獲ってもサイズの問題で売れない、加工が難しい、人気がないなどの理由で、世界で漁獲された魚の35%は廃棄されています。

一方、消費にまわされる65%の魚は、中国など新興国との食材の買い負け、円安の進行、さらにはグローバル物流の混乱も加わり、日本の思うようにならなくなっています。
そのため、回転寿司チェーンにとっては、捨てられる魚をお客様に美味しく食べていただく魚に変えることが、今後の成長のカギになって来ると思います。

今回のくら寿司の、ニザダイを“食べられるステージ”に上げた取り組みは素晴らしいと思います。

三田キャスター:
いま、「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換が進み、養殖の存在感が増しているようですね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
くら寿司は2010年から、養殖などを通して海洋資源を守るとともに、漁業関係者との共存共栄をめざす「天然魚プロジェクト」を進めていて、今回の廃棄される魚の活用もその一環です。

このプロジェクトでは、定置網で獲れた魚を年間契約ですべて買い取り活用する「一船買い」も行っています。

当然、獲れた魚には廃棄される魚も含まれていて、これまではすり身やコロッケの材料にしていましたが、やはり活用に限りがありました。
そこで、網にかかった成長しきれていない小さなハマチなどを養殖用の生けすに移し、約2㎏になるまで育てる取り組みなども行っています。

三田キャスター:
漁業関係者と回転寿司チェーンがタッグを組むことで、日本の漁業が良い方向へと向かうといいですね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
いま、魚の養殖はAIやIoTの活用によってめざましい進歩をとげていて、ここでの成果は食の安全保障にもつながります。

さらに、冷凍技術の進歩により、日本で養殖した魚を美味しさを閉じ込めて海外に輸出する可能性も出てくると思っています。
かつて、寿司ネタでサーモンはあまり馴染みがなかったのが、回転寿司での提供をきっかけに 今ではすっかりお馴染みとなり、さらに、炙ってマヨネーズを添えるなど新しい魚の食べ方も回転寿司から生まれています。

回転寿司チェーンによる日本の魚を食べる文化への、さらなる貢献を期待したいです。

三田キャスター:
日本の漁業や食文化、そして海を守るためにも、私たちが美味しく食べて社会に貢献できる、こうした取り組みが広がることを期待したいと思います。

(「Live News α」9月14日放送)