コンビニで食品ロスの削減と利益改善を狙ってAIを活用した値引き販売が始まっている。

タイミングや対象商品をAIが手助け

おにぎりやサンドイッチなどの食品に貼られる値引きシール。この値引きのタイミングや額、対象商品を決める手間をAIが手助けしている。

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ローソンは25日、東北で去年6月から行っていたAIを活用した値引き販売を、都内162店舗で9月下旬まで先行して展開、2023年度中の全国展開を目指すと公表した。

これまでは経験や勘に頼る部分が多く、売れるタイミングを逃すことや、値引きしすぎて売り切れてしまうといったこともあったが、今回導入されるシステムでは、AIが現在の在庫やこれから納品される商品の数と過去の販売実績などのデータを元に計算し、店舗の利益を最大化する。

こうした適切な「値引き」を行い、商品を売り切ることで食品ロスを削減し、販売の機会の喪失も防ぎ、利益を改善することができるとしている。

去年6月に東北で行われた実験では、1店舗当たりの廃棄額が2.5%減り、利益額は0.6%増えたという。

ローソン次世代CVS統括部・石川 淳さん:
AIによって一個一個最適な値引きを出せるというのが今回のメリットになります。お客さまにはもちろん、社会に対しても貢献できると考えています

ローソンでは2030年までに廃棄額50%削減、2050年までに100%削減を目指すという。(2018年度対比)

値引き、発注、商品棚の最適化も

Live News αでは大手コンビニで16年間バイヤーを経験したマーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
コンビニ業界で長くお仕事をされていた渡辺さんは、今回の試みをどうご覧になりましたか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
きょう取材に行ったんですけれど、コンビニに値引きの仕組みが入っているというのを現場で目にして、業界32年の者としては大変感慨深いものがありました

内田嶺衣奈キャスター:
スーパーでは夜になるとよく値引き販売を見かけますが、なぜコンビニでは値引き販売自体が少なかったのでしょうか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
売れ残って廃棄するくらいなら値引き販売をしたいのはスーパーもコンビニも現場では一緒です。でも、どれくらい値引きするのか、これは働くスタッフの「K(勘)K(経験)D(度胸)」によって、個人の判断で決めています。そんな中、多くの来店客があるスーパーの場合、 閉店時間が迫まる中、売れ残るよりも値引きして売り切れゴメンにした方が効率的という考えです。一方、24時間営業のコンビニの場合は、安易に値引き販売を行うと機会喪失、欠品するということに加えて、地域での“値引き合戦”となってしまうと、結局、どの店舗もトクしない恐れがあるため、コンビニの本部は廃棄費用がオーナー負担だった事もあり、定価販売を推奨してきました

内田嶺衣奈キャスター:
これからコンビニでもAIによって値引き額の最適化がはかれる効果は大きいようですね?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
AI値引きは、人間では処理しきれない過去の実績に関する膨大な販売データとともに、気候や商品特性などから最適な値引き額を導き出してくれるのは素晴らしいと思います。値引きする商品と、定価のまま売るべき商品の選別や値引きしすぎによって売り場で欠品状態が生まれる弊害を防ぐ事も可能となります。コンビニで廃棄されてしまう商品が、AIを活用して最適な値引き額で売れるようになると、消費者は安い値段で商品が買えて、本部と店舗オーナーは利益を上乗せできる、さらに地球にも優しいなど3者にメリットがあります

内田嶺衣奈キャスター:
コンビニでのAIの活用は値引き販売に加えて、他ではどのようなシーンでの利用が期待できるのでしょうか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
おにぎりや弁当、飲み物の棚で、どの時間にどんな商品を並べると売上げを伸ばせるか、発注のみならず商品棚の最適化も図れます。これによって仕入れやスタッフの配置にも良い影響を与えることが出来るようになると考えます

内田キャスター:
コンビニの新たな可能性が広がりそうです

(「Live News α」8月25日放送より)