東北勢として初の甲子園優勝を飾った、仙台育英高校。100年以上の甲子園の歴史で初めて、東北の玄関口である“白河の関”を、深紅の大優勝旗が超えました。
選手たちが凱旋した地元では、祝勝会やセールで大盛り上がりしていました。

悲願…“白河の関越え” 仙台育英 凱旋フィーバー

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JR仙台駅の改札口付近で、スマートフォンのカメラを構えて待つ多くの人々。
23日午後3時すぎ、その瞬間は訪れました。悲願の東北勢初優勝を果たした仙台育英が凱旋。地元に帰ってきた監督や選手たちを、祝福の拍手が包み込みます。

地元の女子高校生:
生で優勝盾を見たので。優勝したからすごくかっこよく見えた

福島市在住 弟が仙台育英OBの女性:
すごく感動しました。東北の誇りです。東北全体で応援していたので

選手たちが去った後も、興奮は冷めないようで、優勝記念の看板の前で写真を撮る人も。

今回の仙台育英の甲子園制覇が、なぜここまで人々の熱狂を呼んでいるのでしょうか。

街の人:
白河の関を越えたということで、本当に私もうれしいですね

街の人:
ダルビッシュ選手とか菊池雄星選手とか佐々木朗希選手とか、東北出身のスター選手が優勝旗を持ってこられなかったけど、チーム全体、組織全体で優勝旗を持ってこられたことにすごく意味があるのかなと

東北への玄関口「白河の関」。これまで深紅の大優勝旗がこの関を越え、東北地方にもたらされたことはなかったのです。
これまで春に3度、夏に9度、甲子園の決勝に臨み涙を飲んできた東北勢。しかし、23日午後2時18分ごろ、ついに深紅の優勝旗が「白河の関」を越える瞬間が訪れます。

悲願を成し遂げた仙台育英ナイン。母校に凱旋すると、優勝報告会に臨みました。

仙台育英高校・佐藤悠斗 主将:
自分たちにとって、ここにいる全ての皆様にとって、東北の全ての皆様にとって、この夏の良い思い出になったことをすごく嬉しく思います

「東北は弱い」払拭に地元歓喜 “丸刈り0円”など大盤振る舞いも

街にも「祝 優勝 仙台育英高校」と書かれたポスターが貼られていたり、「祝 優勝記念 50%OFF」と手書きの張り紙や号外を掲示しているお店があったりと、祝福ムード一色に。

さらに、理容店が23日から始めたのは、仙台育英高校に通う現役生徒を対象にした、丸刈りの無料キャンペーン。

店内に入ってみると、壁に貼られていたのは、仙台育英の甲子園での活躍を伝えるスポーツ紙。「丸刈りお手本」と示されています。

理容室の人:
高校野球というと、丸刈りが一つのかたちなのかなと。問い合わせは何件か入っています。「在校生だけでなく、卒業生はだめなのか」とか

祝賀キャンペーンは、居酒屋でも。
優勝をお祝いし、ハイボールがなんと1杯98円、刺身が400円など、出血大サービス。この大盤振る舞いに店の親方、三塚史さんは…

さくら亭・親方 三塚史さん:
お客さんと一緒にこの喜びを分かち合いたいと思って。帰ってくる育英の野球部関係者の方々含め、みんなで応援したんだよってことを表現できればなと、こういう企画をしました

今回、仙台育英が成し遂げた「白河の関」越え。東北の人がこだわり続けた理由について、三塚さんはこう話します。

さくら亭・親方 三塚史さん:
東北のチームは昔から、関東のチームよりレベルが低いというような目で見られていた気がするんですよ。大会の抽選とかでも、東北のチームに当たると拍手が起きたり。
東北の人間たちは歯を食いしばって、我慢強く、結果でかたちにして強くなっていこうとする積み重ねが、第104回でようやく実を結んだのではないのかなと

「東北勢は弱い」というイメージ。宮城だけではなく、東北全体でそれを払拭できたということに、多くの人々が熱狂しているというのです。

一方、若者からは、別の理由も聞かれました。

コロナ禍での頑張りに感動…監督は「野球部全員を自分の子供のように」

大学生:
高校時代っていわゆる青春みたいなところで、コロナでできる活動が少ないという中で、頑張って優勝したのは感動しますね。学生だとみんな共感できるんじゃないかと思います

高校生:
私たちの代って、節目節目でできなかったことが多かったので、友達が頑張っている、仲間が頑張っているというのを見ると、すごい、自分も頑張ろう、と思える

コロナ禍で、逆境に負けずに頑張り続けた彼らに、共感するといいます。
そしてそんな高校生に向けて、仙台育英の須江航監督が送ったあの言葉が、大きな感動を呼んでいます。

仙台育英高校・須江航 監督:
青春ってすごく密なのに、でもそういうことは全部「ダメだダメだ」と言われて、活動していてもどこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、諦めないでやってくれたこと、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います

須江監督について、仙台育英時代の野球部の後輩で、20年来の付き合いがある畠山康孝さんは…

須江監督の仙台育英時代の後輩・畠山康孝さん:
一言で言うと本当に生徒のことしか考えてないっていう印象ですね。常にどうしたら選手がもっと良くなるかとか、レギュラー陣とかメンバー陣だけではなくて、野球部全員を自分たちの子供のように考えているのかなというふうに思いました。
(監督は)選手が頑張ったというところをすごく評価されているので、そこは監督と選手の信頼関係というところが、この夏どこの高校よりも強かったのかなというふうに思っています

四六時中、生徒たちのことを考え、「心を密に通い合わせる指導法」を実践していたといいます。東北弱小のイメージを打ち破り、そして、新型コロナにも負けずにつかみとった深紅の大優勝旗。東北の人々の熱狂はしばらく続きそうです。

(めざまし8 8月24日放送)