8月下旬になっても暑さが続いている。熱中症になるのは避けたいところだが、暑さからの時間差で体調不良になったという意見を見ることがある。

例えば、暑い環境で働いている、外出している“その時”は問題なくても、後から頭痛や倦怠感、吐き気などを感じたり、体が火照ったりするというものだ。

ネットでは「翌日熱中症」「時間差熱中症」といった造語で例えられたりもするが、こうしたことは実際に起こり得るのだろうか。症状のサインや予防策のようなものはあるのだろうか。

軽度の症状が長引いている場合は注意

救急科を主に担当する、あいち小児保健医療総合センター(愛知)の伊藤友弥医師にお話を伺った。


――熱中症が時間差で起こることは考えられる?

時間差といっても翌日はやや極端です。あくまでも、熱中症は環境、運動、本人の状態の3つの要素が複合的に関係して発症しますので、何もしていないのに症状だけが出ることはありません。休憩や水分摂取をしたものの、その対応が十分ではなく、自宅に帰ったあとにも頭痛や吐き気などの症状が残っているようなケースは発生しうると考えます。

水分摂取や休憩が不十分な場合は注意(画像はイメージ)
水分摂取や休憩が不十分な場合は注意(画像はイメージ)
この記事の画像(5枚)

――日中は大丈夫でも、その後に熱中症となった患者は過去にいた?

帰宅してから軽い症状が出ていて、熱中症の可能性を考えた子はいました。


――時間差で起きる熱中症はどんなもの?

熱中症の症状が遷延(長引くこと)している場合、重症(熱中症Ⅲ度)がそのまま遷延していることはまずありません。軽度の症状が遷延すると思われます。その際、通常の熱中症と症状が変わることはありません。軽度の症状は、クーリングと経口補水で対応が可能なことがほとんどです。症状が遷延する場合は、根本的な解決ができていない(脱水の改善ができていない)と考えます。

(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)
(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)

――症状が出ると人体にどんな影響が出る?

熱中症の症状が遷延している場合、病態の中心は脱水だと考えます。(重症であればすでに医療機関で対応されているはずです)倦怠感、集中できないという症状や、頭痛、吐き気などが出現しうると思います。いわゆる重症な熱中症に見られる臓器障害が起こることはないと思います。

活動後も「水分摂取」「休息」の意識を

――暑い環境で過ごした場合、どのくらいまでの時間を注意すべき?

一概に一定に時間をお示しすることは難しいです。ただ、スポーツなどのアクティビティーを行った場合、活動中は水分摂取に気をつけると思いますが、活動後には水分を積極的に摂らなくなる方もいると思います。活動後も継続して水分を摂取することを意識していただくと良いと思います。


――特に注意してほしい人などはある?

乳幼児の場合は症状が分かりにくく、症状が遷延していることがあるかもしれません。水分を取らせたと思っても、本人にとって充分な量ではなかった可能性もあります。大人は問題なくても子どもやお年寄りには症状が出るかもしれませんので、そのような目で見ていただくと良いと思います。

子どもや高齢者には一層の配慮を(画像はイメージ)
子どもや高齢者には一層の配慮を(画像はイメージ)

――時間差の熱中症を防ぐためにできることは?

熱中症が起こりうる環境や状態の際に、しっかり水分をとることは重要です。水分は塩分、糖分がバランスよく配合されているものが理想的です。その後も涼しいところで休息を取り、水分摂取を続けることで、症状が遷延することを防ぐことができるのではないでしょうか。

時間が経過しても症状が改善しないなら医療機関に

――時間差の熱中症が疑われたらどう対処すればいい?

日中に活動をし、その後に高体温、頭痛、吐き気など熱中症を疑うような症状がある場合、症状が軽ければ自宅で水分摂取をしていただければ良いと思います。自分で水分摂取ができないようでしたら医療機関を受診してください。

また、熱中症と感染症全般の症状は似ています。日中の活動後に元気に過ごしていたものの、発熱、倦怠感が出現した場合は、感染症の可能性も高いと思います。その場合も症状が軽ければ自宅で経過をみていただき、経口摂取ができないようなら医療機関を受診していただくのが良いと思います。

感染症全般の可能性にも注意が必要(画像はイメージ)
感染症全般の可能性にも注意が必要(画像はイメージ)

夏場の体調不良はもしかすると、軽度の熱中症が改善されていない状態かもしれない。暑い場所から涼しい場所に移動すると「もう大丈夫」と思いがちだが、油断はせずに水分摂取や休息をとることを意識するといいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。