ちょっとしたものを刺してつまむだけでなく、歯の間に詰まった物を取り除くなど、さまざまな用途がある“つまようじ”。今、そのつまようじの検品の様子がTwitterに投稿され「職人技」と話題になっている。

1960年創業で国産つまようじの製造・販売等を営む、菊水産業株式会社(大阪・河内長野市)の公式Twitterアカウント(@kikusui_sangyo)が「#多分私しかやってない」とのハッシュタグと共に投稿したのが、「国産つまようじの検品」の様子を撮影した一場面。

国産つまようじの検品の様子
国産つまようじの検品の様子
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大量のつまようじが積み重ねられていて、中には数本反対を向いているものもあるが、多くは持ち手を奥にして先端が見えるように向いている。そして、ピンセットでつまもうとしている様子が写っている。不良品を見つけたのだろうか。

なお、このつまようじは、一般的(溝がある)な国産つまようじではなく、溝のないタイプ。この後、加工工場で1本ずつ袋入りにするもので、出荷したつまようじはそのまま袋に入ってしまう。そこで、出荷する前の最後の工程として丁寧に検品しているのだそう。

検品している商品「きくすい 日本製 純国産 しらかば楊枝 袋入 約45本入」
検品している商品「きくすい 日本製 純国産 しらかば楊枝 袋入 約45本入」

溝のないタイプのつまようじの検品は、目視で不良品を見つけ、ピンセットで取り除いているとのこと。地味でありながらも相当根気のいる作業であることが伝わる。

ちなみに、実は投稿画像の中にもいくつか不良品があるという。分かった人はいただろうか?

赤丸が付いているのが不良品だという
赤丸が付いているのが不良品だという

一見すると全て同じに見えるが、不良品を見極めることができるのは職人技と言えるのではないだろうか。投稿にも「目視で検品って凄いこだわりです」「すげぇ。職人技」「スゴすぎる!!」などの称賛の声が多く寄せられており、1万以上のいいねがつく話題となっている(9月5日時点)。

多い時で約45万本の納品分を目視で検品

では実際どのような不良品があり、どのように見極めているのだろうか?そもそもなぜ目視で確認しているのだろうか?

菊水産業の末延秋恵代表取締役社長に話を聞いてみた。


ーー検品はどのような体制で行っているの?

これは1人で行っています。大変な作業なので一日ではできませんので少しずつやります。もちろん一日中やる時もあります。袋入加工工場に出荷する日は決まっているので、その日までにコツコツと検品しています。毎回私が1人で全部やってるわけではありません。次の日は社員がやる日みたいに手分けする事もありますよ。


ーーどれくらいの量を検品しているの?

6列で1ケースとなっています。少ない時は2ケース、多い時で5ケース分を納品する時もあるので、1ケースおおよそ9万本なので5ケースだと約45万本とかですね!

6列で1ケースとなっており、1列ずつ別の箱に入れながら検品する。
6列で1ケースとなっており、1列ずつ別の箱に入れながら検品する。

ーーどのような部分を見極めている?

つまようじなので先がちゃんととがっていないものを主に見ています。多分素人の方でもよく見たらわかると思いますよ!ただ、基準があるのでその判断が難しいかもしれませんね。

とがった方を確認する
とがった方を確認する

つまようじの検品の機械がないので…

ーーどんな不良品が出てくるの?

材料が白樺(木材)なので、湿気や気温などの影響で微妙に変化します。なので、材料に刃物がしっかり当たらず、平べったくなってとがっていなかったり、割れていたりするつまようじがあります。また、とがりすぎている物は先がすぐ折れるので鋭すぎる物も取り除いています。

主に先を見てますね!けど、だいたい先が悪いと反対側(溝のある方)も悪い事が多いです。(これは検品していてだいたいそうなので長年の感触ですが…)

不良品例 先が割れてしまっている
不良品例 先が割れてしまっている

ーーどれくらいの割合であるの?

これは何とも言えないのですが、つまようじの製造機械がかなり古い物を使っているので、調子が悪い時はたくさん出ますし、材料が悪い時(湿気てる時)もたくさん出たりします。調子がいい時はそんなに不良が出なかったりします。

不良品例 先が鋭すぎる
不良品例 先が鋭すぎる

ーーなぜ目視でするの?

つまようじの検品の機械なんてないからです(笑)。機械で先付け(とがらす)されたつまようじはどんどん出来ますので、それをすくってケースにつめていきます。

受け皿みたいな所にどんどんたまっていくのですが、この段階で検品もできません。この段階で検品する機械を開発するということになりますが、実際オーダーで検品の機械を製作するとなるとものすごく高くなると思います。1本1円にも満たない商品にそこまでコストをかけられませんので仕方ない部分はあります。

機械からつまようじを出しているところ これをケースにつめていく
機械からつまようじを出しているところ これをケースにつめていく

結構長時間やってると疲れてきます

ーー目視での検品はやはり疲れる?

結構長時間やっていると疲れてきます。ただこれは毎日しているわけではないので、一時的な疲労は若干ありますがなんとかなっています!わかさ生活さんのTwitter公式中の人と親しくさせて頂いてるので、以前たくさん目にいいサプリメントをいただいたのでそれを飲んだりしています。


ーー漏れがないように工夫していることはある?

長時間つまようじの先ばっかり見ていると疲れてきて、焦点が合わなくなってくるので、漏れがないように拡大鏡を使ったりしています。

中にはこんな変わった不良品が見つかることも…
中にはこんな変わった不良品が見つかることも…

「絶対私しかやってないよなー」トレンドに乗っかってみた

ーー検品作業をTwitterに投稿した理由は?

「#多分私しかやってない」というハッシュタグがトレンド入りしているのを見て、見たらすごい技やすごい作品がたくさんあったので、おもしろいなぁと思って乗っかってみました。

軸が丸い一般的なようじを製造するメーカーは国内に20数社ありましたが、現在は全国でも2社、地場産業として河内長野市内で製造しているのは「菊水産業」のみとなりました。なので、「絶対私しかやってないよなー」と思って投稿しました。


ーー投稿には称賛のコメントが多く寄せられているが?

大変びっくりしましたが、実際つまようじがどのように作られてるかなんて皆さん知らないんだなぁと思いました。なので知ってもらえるきっかけになったのと、ねぎらいの言葉が多かったのがとても嬉しかったです。

つまようじに限らずモノづくりはたくさんの工程があります。こうして物が作られている、たくさんの工程があってたくさんの人が関わって商品が出来上がるということを、知ってもらえるきっかけになったら嬉しいなあと思いました。

製造の様子
製造の様子

ーー最後に、検品しているつまようじのこだわりを教えて。

大阪府河内長野市は地場産業がつまようじで、国産つまようじは最盛期の1980年代は年間約700億本を生産していて国内シェア(市場占有率)は9割を超え、世界シェアも5割に達していました。その後、中国でも生産されるようになり国内生産はピークの1%以下に落ち込みました。現在、国内で流通するのは中国製品が大半を占めています。

弊社は北海道産の白樺の木で国産つまようじを作っています。中国製のつまようじはよく折れるのですが、北海道産の白樺は木がしっかりしているので折れにくいと好評です。なにより国内伐採、国内製造で薬品などは一切使用していませんので安全で安心です。

検品していた商品「きくすい 日本製 純国産 しらかば楊枝 袋入 約45本入」
検品していた商品「きくすい 日本製 純国産 しらかば楊枝 袋入 約45本入」

先端がとがっていなかったり、割れていたりする物は不良品と判断されるとのことだが、逆にとがりすぎるものも取り除く必要があるとのこと。絶妙な見極めが必要な作業だからというのも、機械の導入が難しい理由の1つにありそうだ。ちなみに、取り除いた不良品は残念なことに廃棄するしかないという。

投稿で検品していた、1本ずつ袋入り加工されたつまようじ「きくすい 日本製 純国産 しらかば楊枝 袋入 約45本入」は、Amazonで税込み550円で購入できる。なお、ほとんどは百貨店などへ卸しているとのことだが、一般的なパッケージに入っている普通タイプなども、菊水産業では製造・販売している。

菊水産業製造・販売しているつまようじ
菊水産業製造・販売しているつまようじ

今回の菊水産業の投稿によって、普段何気なく使っている物にも、たくさんの工程、たくさんの人が関わっていることを改めて知ることができたのではないだろうか。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。