自民党安全保障調査会長の小野寺五典氏(元防衛相)は21日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、弾道ミサイルを多数配備する中国を念頭に、抑止力強化のため、長射程の巡航ミサイルを「一定数」保有する必要がある、との考えを示した。

関係者によると、政府は、射程1,000km程度の巡航ミサイル、1,000発程度の保有を検討している。

番組では、ロシアによるウクライナ侵攻開始からまもなく半年を迎えるのを踏まえ、ウクライナ情勢と、日本が教訓とすべきことについて討論した。

小野寺氏は、「プーチン大統領は『ウクライナは弱い』と思ったから攻めた。『強い』と思えば、戦争は起きなかったかもしれない」と述べ、反撃能力を含む抑止力強化の重要性を指摘した。

また、小野寺氏は、米航空宇宙企業スペースX社が提供する人工衛星網による高速インターネット通信「スターリンク」を念頭に、有事で自衛隊の通信設備が敵の攻撃により破壊された場合に備え、民間の衛星通信網の導入に前向きな姿勢を示した。「民間の衛星も活用し、しっかり抗堪性を持たせるべきだ、というのが自民党の提言だ」と説明した。

「スターリンク」は、ロシアの侵攻を受けたウクライナが導入し、戦闘が続く中でも通信環境を維持していることが話題になった。

ウクライナ情勢をめぐっては、ロシアが2014年に強制編入したクリミア半島に対し、ウクライナ側からとみられる攻撃が続いていることについて、小野寺氏は「(ウクライナは)一線を越えてしまった。紛争が深刻化し、和平が遠ざかってしまった」との見方を示した。

以下、番組での主なやりとり。


梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
ゼレンスキー大統領が「戦争はクリミアから始まった。クリミアの解放で終わらなければならない」と演説した直後から、クリミア半島で爆発が相次いでいる。ロシア軍の飛行場や弾薬庫などの軍事施設のほか、ロシア本土とクリミアを結ぶクリミア大橋付近で爆発があった。20日にはロシア黒海艦隊司令部の建物が炎上した。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
ゼレンスキー大統領が「クリミア解放」と言い始めた。

小野寺五典氏(自民党安保調査会長・元防衛相):
ウクライナ南部で住民投票が行われ、ロシアに編入されてしまえば取り返しがつかない。(ウクライナは)混乱させるためにクリミアに手を出してしまったのではないか。一線を越えてしまった。和平が遠ざかってしまったのではないか。ちょっと踏み込んでしまったなという感じだ。
ウクライナはもともと「2月24日にロシアが侵攻する前に戻せ」と言っていた。クリミアは2014年にロシアに取られてしまった。それを奪還するとなると、ウクライナが主張してきた線を越えることになる。この紛争がさらに深刻化するということだ。

松山キャスター:
ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく半年を迎える。国際的な安全保障環境は激変した。日本は何を教訓とすべきか。

小野寺氏:
戦争は絶対起こしてはいけない。今回プーチン大統領がウクライナを攻めたのは、「ウクライナは弱い」と思ったから。一週間でキーウを占領できるかもしれない、傀儡政権をつくってウクライナをロシアの支配下にできるかもしれない、と(プーチン大統領は)思った。逆に『強い』と思えば、このようなことは起きなかったかもしれない。戦争を起こさないためには、相手から見くびられない、この国は強いんだと思ってもらうことが大切だ。万が一戦争が起きれば、降参して自国の領土を取られるなんてことは絶対あってはならない。ウクライナは自ら戦うという意思が強く、一生懸命戦っているから欧米は武器を供与している。日本が戦う意思を持たなければ、日米同盟は機能しない。これは基本だ。
平和を保つためには、自分たちが一定の抑止力を持たなければならない。反撃能力を含め日本もそれなりの能力を持つことは戦争を起こさせないための大事な力だ。

松山キャスター:
ロシアが中国に接近しているという話がある。今年、国家安全保障戦略を改定するにあたり、中国の弾道ミサイルへの反撃能力の一環として、政府が長射程ミサイルを1,000発保有することを検討している、との報道がある。長射程ミサイルの保有数についての議論はどこまで進んでいるのか。
            
小野寺氏:
反撃能力を持つことは抑止力につながる。(保有数は)今検討しているのだと思う。日本は島国だから、攻撃されるとすれば、遠くからになる。こちらも遠くに反撃することを考えれば、一定の弾数は持つ必要がある。核を持つということではない。相手国の市民を殺傷することでもない。攻撃してくる対象に反撃をする。攻撃をする対象は長射程のミサイル基地かもしれないし、航空戦力かもしれない。一定の弾数は必要だ。

松山キャスター:
射程約1,000km、中国本土に届くミサイルを、例えば、1,000発等、ある程度の数を保有することも検討すべきか。

小野寺氏:
特定の国を想定する必要はない。日本を攻撃してくる相手に対して十分反撃できるものを持つことが抑止力だ。日本を攻撃してくる国がなければ、この能力を使うことはない。
            
松山キャスター:
ロシアによるウクライナ侵攻で一つ明らかになったのは、通信インフラ確保の重要性だ。政府が「スターリンク」の導入を検討しているという話がある。本格的に導入を図っていくべきだと考えるか。

小野寺氏:
軍事面では秘匿通信ができることが大事だ。ウクライナの事案を見て、通信インフラが真っ先に攻撃対象になり、通信が使えなくなればつらい。民間の衛星も活用して、しっかり抗堪性を持たせるべきだというのが自民党の提言だ。そういう意味では、民間の様々な通信衛星のネットワークを使うことは重要だ。

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