長野県飯綱町の牟礼駅前にある商店街にここ数年、古着店や写真スタジオなどの新規出店が相次いでいる。その理由とは?新たな店の主たちも加わり、にぎやかさを増した夏祭りを取材した。

かつては50軒…駅前商店街に吹く新しい風

射的や金魚すくいを楽しむ大勢の人。8月6日に行われた牟礼駅前商店街の「夏祭り」。通りの屋台は商店街の店主たちが出したもの。その中には、初参加の若い店主たちの姿があった。

ピザを販売したのは、2020年から商店街で古着店を営む宮本武義さん(37)だ。

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宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
これだけ飯綱町に人がいて、催し物があれば人が来てくれるという環境なんだなとつくづく思う

商店街ではここ数年、宮本さんのような新しい経営者の店が増えている。

しなの鉄道北しなの線の牟礼駅から、300メートルほど続く商店街。普段の人影はまばらだ。

牟礼駅前商店街
牟礼駅前商店街

かつての商店街は50軒ほどの店が並び、買い物客でにぎわった。しかし、マイカーの普及で地元で買い物をする人が減り、近年は人口減少もあってシャッターを下ろす店が目立つようになった。

画像提供:飯綱町役場
画像提供:飯綱町役場

金物店だったこちらの建物も長く空き店舗だったが、今はたくさんの服やキャラクターグッズ、小型のバイクが並んでいる。

宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
1960年代のアメリカ海軍の「A2デッキジャケット」の初期型。個人的にミリタリーものの服やアイテムが好き

古着店「宮本商店FLAVOR」を営む宮本さんは地元の出身で、高校卒業後に上京してアパレルの仕事についていたが、自分の店を持ちたいと30歳のころにUターン。商店街にも思い入れがあった。

宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
自分のお店を開きたいというのが夢であり、ちょうどそうした時にこの商店街が、僕が小学生とか中学生の時に比べてだいぶさびれてしまった印象があって、僕がお店をやることで昔の活気まではいかなくても活気が戻ればいいなと

店には「ホンダ・スーパーカブ」など、趣味で集めた古いバイクを30台ほど並べていて、SNSで知ったファンが県外からも訪れているという。(※販売はしていません)

宮本さんの趣味のバイク「ホンダ・スーパーカブ」
宮本さんの趣味のバイク「ホンダ・スーパーカブ」

宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
僕の置いているものや趣味に共感してくれるお客さまが遠方から来てくれるので、好きな人が集まれる場所、そういう場所を提供していけたらいい

「面白い店が来てくれた」商店街会長が仲介役に

新規出店は他にも。

写真スタジオ兼デザイン事務所を開業 中嶋真也さん:
ここにバックペーパーを置いて人物を撮ったり、テーブルを置いて物撮りをしたり

電気店だった建物に2022年6月オープンしたのは、写真スタジオ兼デザイン事務所「MASAYA NAKASHIMA Design&Photo Studio」。

町の地域おこし協力隊員として2021年に移住してきた中嶋真也さん(25)が運営している。ふるさと納税の仕事を担当する傍ら、観光PRポスターなどの制作も手掛けている。

写真スタジオ兼デザイン事務所を開業 中嶋真也さん:
まずはこの街になじめるように、自分の場所をつくりつつ動いている状態。協力してくれる方をちょっとずつ集めて、皆さんと一緒に街が盛り上がるようなイベントとかをやっていければいい

商店街にはここ数年で、裁縫道具などを扱う店やカフェなどが出店した。

栄町商栄会 小林直樹会長:
ありがたい、おもしろい。私の頭には描けないような商店が、どんどん来てくれるのでうれしい

商店街の会長で文具店などを営む小林直樹さんは、新規出店を支えてきた一人だ。長年、「シャッター街」を何とかしようと思っていた小林さん。宮本さんのような出店希望者と空き店舗の所有者の間に入って調整役を果たしてきた。

栄町商栄会 小林直樹会長:
かなり前からこの商店街に出店したいという希望はあった。でも、所有者は「今すぐお貸しするわけにいかない」「いろんな思いがつまっている」と。ここにきて「いいよ」というタイミングが重なった

商店街の小林直樹会長(左)と古着店を出店した宮本武義さん(右)
商店街の小林直樹会長(左)と古着店を出店した宮本武義さん(右)

宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
小林さんも大家さんに頭をさげていただいて、それでお借りすることができた。命の恩人、感謝しっぱなし

栄町商栄会 小林直樹会長:
こうやって昔のにぎわい取り戻していければ、いい街になりますね

3年ぶりの夏祭り「こんなに人が来るとは…」

迎えた商店街の夏祭りの日。新型コロナウイルスの影響で開催は2年見送られ、3年ぶりの祭りだ。

訪れた人:
射的が楽しかった

訪れた人:
こんなに若い子もいっぱいいるんだと思って、楽しい

普段は静かな商店街に人があふれていた。

宮本さんはこの日のために露天営業の許可を取り、アウトドア用の窯でピザを焼いて販売した。

宮本商店FLAVOR 宮本武義さん:
ツナマヨコーンとシーフードをやっている。大忙しで手が追いつかない。みんなが商店街に来てくれるのが、お店を構える身としてうれしい

協力隊員の中嶋さんは、コーヒーを販売する知人と一緒に事務所の前にキッチンカーを出店。

写真スタジオ兼デザイン事務所を開業 中嶋真也さん:
まさかこんなに来るとは思っていなかったので、ちょっとびっくり。定期的にこういうことができれば、この街も盛り上がっていくと思う

栄町商栄会 小林直樹会長:
どうだ、今日の売れ行きは?

写真スタジオ兼デザイン事務所を開業 中嶋真也さん:
いいです、すごく忙しい

屋台に顔を出して回った小林会長。3年ぶりのにぎわいと新しい店主たちの姿に手応えを感じていた。

栄町商栄会 小林直樹会長:
新しいものを考えて売ったり、生き生きとしている。若い人たちの力でこの街が少しよみがえってくれたらと、うれしさがこみ上げてきた

若者のチャレンジとそれを支える地元の人々。駅前商店街に新しい風が吹き始めている。

(長野放送)

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