シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は腫瘍内科の専門医、銀座みやこクリニックの濱元誠栄院長が「胆のうがん」について解説。60歳以上の女性やコレステロールの高い人に多い「胆のうがん」は、初期症状がなく症状が出る頃には治療が難しく5年生存率も低い難治性のがん。早期発見が一番のカギで、定期的な腹部のエコー検査の重要性などについて解説する。

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胆のうがんとは

胆のうがんは、胆のうにできるがんです。

胆のうは、聞き慣れないかもしれませんが、お腹の右上の方にあって、肝臓で作られた胆汁という消化液を貯めておく、袋状の臓器です。

食事を摂ると胆のうがギュッと収縮して胆汁が排出されて、食べ物の中の脂肪を消化するのに使われます。

胆石の方が聞いたことがあるかもしれません。

コレステロールが多い食事を摂っていると胆汁の中のコレステロールが増え、胆のうの中でコレステロールが石のように固まって胆石となります。

胆のうがんのリスク因子

胆のうがんは、胆石のある人に良く見られるため、胆石持ちがなりやすいという特徴があります。胆石はコレステロールが高い人、特に閉経後の女性に多く見られます。

閉経して女性ホルモンが減ってくると、コレステロールが上がりやすくなります。

これまで人生で1回もコレステロールが上がったことのない方が閉経後急に上がることが多いのでリスクが高くなります。

もちろん男性もコレステロールが高い方がいるので、そういう方もリスクになります。

胆石以外のリスク因子には肥満、高コレステロール血症、糖尿病、喫煙などがあるので、生活習慣を改善することが胆のうがんのリスクを下げることに繋がります。

ほかにも、胃のピロリ菌、赤唐辛子の成分がリスクになる可能性があります。

胆のうがんの発症率

胆のうがんは60歳以上の女性に多く見られ、若い世代ではまず見られません。

私も外科をやっていた頃、30~50代の胆のうがんはほぼ見たことがありません。(30~50代で発症しないということではありません)

胆のうがんは全部のがんの中の1%ぐらいの割合です。大腸がんや胃がんよりはかなり少ないです。

胆のうがんは、胆管がんという胆のうのすぐそばの胆汁の通り道とあわせて胆道がんと呼ばれます。

この胆道がんになる確率は、だいたい1年で2万人くらい。1年で日本中で見付かるがんの中の大体1.5%くらいと言われています。

少ないと言っても、そこまで珍しい希少がんというわけではないです。

胆のうがんの症状

胆のうがんは、最後の方まで症状は出ません

胆のうの周りには肝臓や胃、十二指腸といった臓器があるので、それらに浸潤といって、食い込んでいった時に初めて症状が出ます。

症状が出たときはかなり進行した状態で、それまでは症状が出ないと思っていいです。

胆のうがんの症状は、皮膚が黄色くなる、白目が黄色くなる、便が白くなる、尿が茶色っぽくなるといった黄疸による症状が出ます。加えて、がんによる右脇腹の痛みが出てきますので、この5つの症状があると胆のうがんが強く疑われます。

黄疸などの症状が出てくる場合は、ステージ1ではまず出ないので、ステージ3以上です。そういった時には、だいたい転移しやすくなるので、他の臓器に転移していることが多いです。

胆のうがんから転移することが一番多いのは、隣の肝臓です。胆のうの周りのリンパ節にも転移しますが、命に関わる臓器というとやはり肝臓になります。

胆のうがんの治療法と生存率

胆のうがんは基本的に根治を目指すのであれば、手術のみです。

手術以外の方法、例えば抗がん剤や放射線は胆のうがんには効きにくいので、手術できないとなると根治というよりは延命ということになります。

胆のうがんはだいたい進行して、症状が出てから見付かりますが、その時にはすでに手術ができない段階のことがほとんどなので、見付かった時点で延命治療になります。

最近では遺伝子パネル検査という胆のうがんの遺伝子の異常を調べて、それに合った分子標的薬というのを使う場合もあります。ただ、その場合でも根治は難しいので、早期発見して手術で完全に取り切るのが一番の治療法です。

手術ができない進行した胆のうがんというのは、難治性といわれる膵臓がんと同じくらい生存率が低くて、ステージ4の5年生存率が2%と言われています。

ただし、ステージ1で早期発見した場合、手術で根治ができれば、だいたい8割くらいの5年生存率が見込めます。

手遅れになるのはステージ1の段階からだいたい5年くらいだと思って下さい。この5年間の間にできる限り早く見付けるのが一番です。

胆のうがんはいかに早く見付けるかが重要です。無症状の段階腹部のエコー検査で見付けるしかありません。

人間ドックで胆石や胆のうポリープが見付かった方は、胆のうがんになるリスクが高いので、必ず1年に1回は腹部のエコー検査を受けることをおすすめしています。

とにかく早期発見が重要です。

60歳以上、高コレステロール血症右脇腹が痛くなったことがある方は一度、腹部のエコー検査で胆石がないか、胆のうがんがないかを調べてください。

腹部のエコー検査

腹部のエコー検査を受けたことがある人は少ないかもしれませんが、人間ドックではだいたいメニューに入っています。職場検診、特定健診ではメニューに入っていないので、気になる方、特に右脇腹が痛くなったことがある方は近くの消化器内科、もしくは消化器外科に行って腹部のエコー検査を行って下さい。

正直、それ以外は見付ける方法は無いと思った方がいいです。

濱元誠栄
濱元誠栄

銀座みやこクリニック 院長
専門:外科、がん遺伝子治療・免疫療法、再生医療
日本外科学会専門医
日本遺伝子細胞治療学会
日本がん治療学会
日本再生医療学会認定医
日本禁煙学会指導医
2001 年 - 鹿児島大学医学部卒業
沖縄県立中部病院 一般外科
2003 年 - 杏林大学医学部外科
2004 年 - 茨城県地域がんセンター
2005 年 - 沖縄県立中部病院 一般外科
2007 年 - 沖縄県立宮古病院・宮古島徳洲会病院 外科
2011 年 - 再生医療専門クリニック
2018 年 - 銀座みやこクリニック院長