ミャンマーの最大都市ヤンゴンで7月30日、日本人のドキュメンタリー作家久保田徹さん(26)が治安当局に拘束された。2021年2月以降で、取材に携わる日本人が逮捕されたのは2人目だ。
2021年4月、うその情報を流した罪などで約1カ月間拘束されたフリージャーナリストの北角裕樹さんは、「友人でもあり、とてもショックだ」とした上で、「クーデター以降、ジャーナリストやメディアが取り締まりの対象になっている」と指摘する。
拘束の報から一夜明けた7月31日に行ったインタビューの全文を掲載する。
国軍が捕まえたいと思えば誰でも捕まえられる状態
――率直な考えを聞かせてほしい。
久保田さんは私の友人でもあり、とてもショックを受けている。彼はドキュメンタリー作家で、ミャンマーで取材活動をしていたとしても、まったく拘束される理由になることではなく、不当なことだ。一刻も早く釈放されることを望んでいる。
――久保田さんはどういう方なのか。
彼は学生の頃からミャンマーを取材していて、度々ミャンマーを訪れている。初めて出会ったのはミャンマーで、彼は取材に来ていた。彼はそれから何度もミャンマーを訪れていて、ロヒンギャ問題や、政治関係、そして仏教の関係の映像、現地の芸能人たちも取材していた。2021年2月にクーデターが起きてからも関心を持っている様子で、日本でデモを取材していきたいとも話していた。とても真面目で、社会問題に切り込んでいく青年。
――現時点では容疑が明らかになっていない。考えられる容疑は何か。
刑法505条のAというものがある。2021年2月のクーデター後に新設された法律で、非常に広く解釈され、運用されている条項で、デモやメディアの取り締まりによく使われている。ほかにもミャンマーには多くの民衆による活動を取り締まる法律がある。インターネットなどで流した情報によって逮捕されてしまうだとか、取材先がテロリスト指定されていると、反テロ法に引っかかってしまうとか。長い軍事政権下で多くの法律が施行され、国軍が捕まえたいと思えば、誰でも捕まえられる状態に事実上ある。

重要なのは意図して拘束したかどうか
――報道関係者の拘束が相次いでいる。
クーデター以降、メディア関係者は私を含め、次々と逮捕されている。取材活動そのものが拘束の対象になるため、現在現地にいるほとんどのジャーナリストは地下に潜ったり、農村部に逃げたりしながら、国外にいる人間と連絡を取り合い、取材活動を続けているケースが多い。そのように非常に危険な状態でもあるので、久保田さん自身もそういう危険を承知しながらミャンマーに向かったのだと思う。
――現在久保田さんは警察署に勾留されているという情報がある。
重要なのは、治安当局が事前から久保田さんの人となりを認識した上で拘束したのか。それともデモの現場で拘束してみたら外国人だったというのが判明したのかということだと思う。治安当局が意図せずに外国人を拘束したという場合には、当局にとって厄介事を抱えることになるので、早期に開放される可能性もある。
――現状、最も伝えたいことは何か。
全く正当性のない拘束だと思う。取材活動をしていたとしても、それが捕まる理由にはならない。一刻も早く解放するように求めたい。
【取材:FNNバンコク支局長 百武弘一朗】