副産物に新たな価値。ビールから生まれるジーンズに迫った。

麦汁の絞りかすやホップを使用

深いインディゴブルーで落ち着いた印象のデニム。ポケットのビスに見覚えのある星マーク。 腰元のレザーパッチにも「黒ラベル」のロゴマークがあしらわれている。

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サッポロビール マーケティング本部 ビール&RTD事業部 齋藤愛子リーダー:
ただ廃棄をしないということだけにとどまらず「黒ラベル」らしい新しい価値を加えてお客様に提供して行くチャレンジをしたいとブランドの思いも相まって、このような形となりました

サッポロビールが手がけたのは、パッチに「黒ラベル」のロゴマークが描かれた「黒ラベルMalt & Hops JEANS」。

現在は応募を終了
現在は応募を終了

素材として使われているのは、「黒ラベル」をつくる際に出るモルトフィードと呼ばれる麦汁の絞りかすやホップの茎や葉。

モルトフィードとホップの茎や葉をパウダー化して和紙を作り、その和紙をテープ状にカットしてねじり合わせて糸状に。そして、横糸として織り込んだデニム生地を使い、ジーンズへとアップサイクルしている。

和紙の糸は、一般的にデニムに使われる糸と比べると重さが約半分。1年中、軽やかに着られることが特徴だ。

そもそも、なぜジーンズにアップサイクルしたのか。

サッポロビール・ビール&RTD事業部 齋藤愛子リーダー:
動物の飼料であったり、畑の肥料であったり、弊社はこれまでも有効活用しておりました。(黒ラベル)ブランドの思いとして、ビールを通じてもお客様の自己表現の一翼になれるような、そんなブランドになっていきたいという思いがあるので、アパレルのアイテムというのがその自己表現というところと非常に相性がいいと…

履けば履くほど味わいのある色落ちで長い間楽しむことができるジーンズ。

ファンから長く愛してもらう製品という点で、黒ラベルとマッチしていることから今回のアップサイクルを決めたという。

4月1日から30本限定でECショップ内での募集を開始したところ、1600件を超える応募があった。

この反響にサッポロビールは…

サッポロビール・ビール&RTD事業部 齋藤愛子リーダー:
今回のアップサイクルを通じて、再利用の手段の幅が大きく広がったというふうに考えております。今回お届けできなかったお客様も多数いるのでこの先に関しても、前向きに検討していきたいと思います

ビールと消費者を繋ぐサッポロのサステイナブルな挑戦はまだまだ続く。

ブランドと消費者の絆で購入強化

Live News αでは一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
今回の試み、鈴木さんはどうご覧になりましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ビールの麦汁の搾りかすからジーンズを生むことはSDGsな取り組みそのものですが、「環境に優しいブランド」を訴求するのではなく、黒ラベルは若い世代が憧れるブランドでありたいというアプローチの強化としてみることができます。黒ラベルのマーケティングは、ビール会社では珍しくあえて「おいしさ」を訴えることをせず、 代わりにカッコいい大人の世界に誘う世界観の提示を追求しました。これにより去年まで7年連続で売上げが前の年を超え、この10年で20代の購入率は2.2倍に増えています

内田嶺衣奈キャスター:
「美味しさ」ではなく、ふわっとした世界観の提示がどうして若者の心をとらえたのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
大きかったのは10年以上続けている俳優の妻夫木聡さんを起用した「大人エレベーター」CMです。例えば、妻夫木さんがミュージシャンの坂本龍一さんに「自分の音楽を分かってもらいたいと思いますか?」と質問すると、「分かるって誤解ですよ。誤解でいいんです」と坂本さんは答えます。 こういう大人、カッコいいですよね。「あなたが憧れる大人、なりたい大人はこういう人ではありませんか?」という提案によって「自分らしさ」を探す若者を後押しする黒ラベルの姿勢が支持されたのです

内田嶺衣奈キャスター:
確かに、CMの中に「なりたい自分」を見つけるとおもわず、これ欲しいなって思うことがありますよね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
そうしたマインド、あるいはブランドと消費者の絆をマーケティングでは、SBC(Self-Brand Connection)という言葉で表します。SBCを構築するためには、そのブランドが消費者のアイデンティティに強く関連することが求められます。 そしてSBCが強いとそのブランドの商品を購入する可能性が高くなることが実証研究でも明らかになっています。今回の黒ラベルのジーンズも、SDGsに「自分らしさ」を求める提案でありながら、若者と黒ラベルの絆を深めるための試みだと感じます

内田嶺衣奈キャスター:
自分らしくありたいというのはいつの時代も共通の願いだと思います。だからこそ確固たるポリシーがあるとそれがかっこよく見えたり、憧れの存在になるなど大きな魅力を感じるのではないでしょうか

(「Live News α」7月14日放送分より)