福島第一原発の事故をめぐって、東京電力の株主が、旧経営陣5人に対して、およそ22兆円の損害賠償を求めた「株主代表訴訟」の判決が、午後3時に言い渡された。東京地裁は、経営責任を認めて、旧経営陣5人のうち4人に対して、13兆3210億円の損害賠償を命じた。
民事裁判の賠償額としては、国内では、過去最高とみられている。賠償を命じられたのは、勝俣元会長と清水元社長、武黒元副社長、武藤元副社長の4人。小森元常務については責任を認めなかった。
原告側の株主は、原発事故で東京電力が巨額の損失を受けたのは、旧経営陣が安全対策を怠ったためと主張。東電が、旧経営陣に対して損害賠償を求めなかったため、事故が起きた翌年の2012年3月に、株主代表訴訟を起こしていた。
株主代表訴訟は、会社が損害を被ったにもかかわらず、会社側が役員に法的責任を追及しない場合、株主が代わって訴えを起こすことができる制度。今回の裁判の主な争点は、旧経営陣が、●巨大な津波が襲来することを予見できたか、●防潮堤を建設したり、施設を水密化するなどの対策を講じることができたか。
株主側は、政府機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」をもとに、東電側が15.7メートルの津波が押し寄せるとの試算を出していたと指摘し、「巨大津波を予見できた」と主張していた。
これに対して、旧経営陣側は、当時、この長期評価は信頼性に欠けたもので、「津波は予見できなかった」と反論。仮に、対策を進めたとしても、津波の襲来には間に合わなかったなどと主張していた。
きょうの判決で東京地裁は、長期評価について「相応の科学的知見を有していて、地震対策を義務づけるものだった」と指摘し、津波の予見可能性を認定した。その上で、旧経営陣には「最低限の津波対策を行う義務があったのに、これを怠った。安全対策を行わず先送りしたもので、著しく不合理で許されない」と経営責任を認めた。また判決では、「安全意識や責任感が根本的に欠如していたものと言わざるを得ない」などと経営者としての姿勢を厳しく批判した。
福島第一原発事故をめぐっては、東電の旧経営陣個人の責任を問う動きが、刑事裁判でも進められ、元会長ら3人が強制起訴された。検察官役の指定弁護士と旧経営陣側の主張は、株主代表訴訟とほぼ同じで、東京地裁は、2019年、元会長ら3人に無罪判決を言い渡した。この裁判の控訴審も、先月、結審している。