京都新聞ホールディングスが、創業者の一族で大株主の女性に約19億円の不透明な報酬などを支払っていた問題。子会社の京都新聞の記者たちが女性らを刑事告発する、前代未聞の展開となった。

白石家は「殿上人」 長きにわたり経営に関与

「いくら何でも、これを放っておくわけにはいかない」
「おかしいのではないかなと。けじめをつけないといけないのではないか」

会見で怒りの声を上げたのは、創業143年の有力地方紙「京都新聞」の現役記者たちだ。

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京都新聞ホールディングスが、創業者の一族で大株主の女性に、約19億円の不透明な報酬などを支払っていた問題で、子会社の京都新聞の記者たちは6月29日、女性らを刑事告発。親会社の姿勢に疑問を感じ、記者らが個人的に加盟する関西新聞合同ユニオンを通じての刑事告発だった。

事の発端は、2022年4月。京都新聞ホールディングスなどが、大株主で元相談役の白石浩子氏(81)に対して、2021年までの34年間にわたり、不透明な報酬などを支払っていたことを明らかにしたのだ。

その額は年間で数千万円以上、約19億円に上る。巨額の報酬を受け取っていた白石浩子氏とはどのような人物なのだろうか。

京都新聞では、地方新聞社出身として初めて全国新聞協会の会長となった白石古京氏や、息子の英司氏が社長を務めてきた。そして、35年前からは相談役に英司氏の妻である浩子氏が就任。浩子氏は白石家の当主として長年、大きな影響力を持ち、経営に関与してきたのだ。

京都新聞の中で、白石家はどのような存在だったのか。

京都新聞の記者:
日頃意識することは全くない、殿上人

会社から浩子氏に支出された19億円には、浩子氏が暮らしていた山荘の警備費用や庭園の清掃費用など、約2億6千万円が含まれていた。

放置されてきた問題に記者たちは…返還求め訴え

現在の経営陣は、大阪国税局から再三の指摘があったにもかかわらず、改善を図ろうとしてこなかったのだ。2022年4月の会見で、当時の京都新聞ホールディングス社長は次のように述べている。

京都新聞HD 山本忠道社長(当時):
A家(白石家)に対する過剰な聖域化が、前例踏襲や事なかれ主義による思考停止につながり、順法意識の欠如を招く結果となってしまいました

社内でこの不透明な支出が問題となり、会社が立ち上げた第三者委員会は、浩子氏に勤務実態がないにもかかわらず報酬を支払ったことは、利益供与にあたり違法だと指摘。

そして6月29日、京都新聞の記者たちは、浩子氏に加えて息子で取締役の白石京大氏の2人を会社法違反の疑いで刑事告発した。

時効が成立していない3年前から2021年までの間、浩子氏が経営に口出しをしない“口止め料”として、息子の京大氏から少なくとも約5700万円を受け取った疑いがあるということだ。

京都新聞社の記者:
(刑事告発を)やらないと見透かされますよね、市民や読者に。新聞社は「我らは正義を守る」「我らは自由を守る」「我らは真実を守る」という社是を掲げてきている。その社是は何なんだということになる

京都新聞ホールディングスは、6月29日の株主総会で京大氏が取締役から退任したと発表。また浩子氏に対して、約5億1000万円分の返還を求める訴えを京都地裁に起こしたということだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月29日放送)

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