ベトナム人技能実習生の男性が、岡山市の建設会社で日本人従業員に暴行を受けた問題。
男性は今、広島市の会社で新しい生活を始めている。実習制度にはらむ問題点と、あるべき姿を渦中の男性を例に考える。

技能実習制度の“歪み”

午後7時半。仕事を終えて会社の寮に帰る、ベトナム人技能実習生のグエンさん。過酷な日々を抜け出し、2022年4月から広島市の建設会社で新しい生活を送っている。

グエンさん(仮名):
広島の生活はとても楽しくて、仕事も良い

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妻と5歳の娘を残し、2019年に来日したグエンさん。待っていた岡山市の建設会社での生活は過酷なものだった。

グエンさん(仮名):
岡山の生活は寂しかった。みんなと打ち解けられず、気持ちもわかってもらえなかった

グエンさんは、複数の日本人従業員から2年にわたって暴行を受け続け、2022年1月に広島・福山市の労働組合に保護された。

グエンさん(仮名):
家族やまわりの実習生に迷惑をかけたくないので、我慢した

会社と監理団体は、日常的な暴行や保護責任を果たせなかったことを認め、謝罪し、補償金を支払うことで示談が成立している。
今回のような問題が、なぜ起きてしまったのか。
労働組合の武藤貢執行委員長はこう指摘する。

福山ユニオンたんぽぽ・武藤貢執行委員長:
技能実習制度は、そもそも大きな問題があった。もうまっとうな移民政策、労使対等の原則が守られて、働く人の人権が保障・担保されるような制度設計をすべき

外国人技能実習制度、1993年に始まった。国内の技能実習生は現在約35万4,000人。このうち約6割がベトナム国籍となっている。

制度の目的は「発展途上国へ技術を伝えること」。
しかし、目的を果たせず、「人手不足を補う労働力」として扱われ、過重労働や賃金不払いなどの例があとを絶たない。

福山ユニオンたんぽぽ・武藤貢執行委員長:
今回の件は(グエンさんが)暴力を訴えて、写真も提供して、監理団体に言っている。速やかにほかの会社に移すというのが当たり前だった。それをやらない。会社に対する忖度(そんたく)があると思う

実習生と会社を仲介する監理団体。海外から実習生を受け入れ、会社に紹介し、実習が適切に行われているか会社を指導することで、毎月一定の監理費を受け取っている。

今回のケースでは、グエンさんが解体作業中にしたけがが、自転車での転倒事案として処理されるなど、監理団体の対応も問題視された。
実際、今回の岡山市の監理団体は、適切な対応ができていなかったとして、国から許可を取り消され、今後5年間、実習生受け入れ業務ができなくなった。

福山ユニオンたんぽぽ・武藤貢執行委員長:
人権侵害だよね。実際に彼は会社もわからず、仕事の具体的な中身もわからずに日本に来て、配属される。だから奴隷制度と言われる

技術を学ぶために来日した技能実習生。
しかし、期待とは違う現実に苦しみ、失踪するケースも増えている。

心機一転、希望を胸に広島へ

グエンさんの受け入れを決めたのは、広島市の建設会社。

建設会社 大斗・堀井直規専務:
何か1つでもベトナムに帰って、日本の文化や言葉を覚えて帰ってもらえたら。良いところだったよと思ってもらいたい

会社では、すでに2人のベトナム人実習生が働いている。その2人が、同じ仲間であるグエンさんの境遇を知り、一緒に働きたいと会社に思いを伝えた。

同じ会社で働く実習生:
同じベトナム人技能実習生が暴行されている動画を見て、とても嫌な気持ちになって、グエンさんを助けに行った。一緒に働きたいと思った。今、広島で一緒に仕事ができて、少しずつがんばっている

同じ会社で働く実習生:
優しい。一生懸命働いている

グエンさんが実習生として働ける期間は約1年。試験を受けることで2年延長することもできるため、グエンさんはもう少し日本で頑張りたいと前を向いている。

グエンさん(仮名):
暴行を受けたことは、家族を心配させないように言わない。これからも自分の胸に秘めておきます

希望を胸に新生活を送るグエンさん。胸に秘めると決めた岡山での日々は、外国人技能実習生の制度の在り方に一石を投じた。

(岡山放送)

記事 1206 岡山放送

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