AI(人工知能)で育てられたハマチが回転寿司に登場した。

全国の店で3日間販売

大手回転寿司チェーンの「くら寿司」は、AIを活用した餌やりの機械でハマチの養殖に成功し、6月24日から全国の店で販売を行う。

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これまでは、餌やりのために毎日船でいけすに行く必要があったが、このAIのおかげで行く回数を減らすことができ、燃料代の削減につながるほか、AIが魚の食欲に応じた適切な量の餌を与えるため餌代も1割削減できる。

今後、漁業における労働者不足問題の課題解決にもつながると期待されている。

今回は20トンを水揚げし、全国の店で3日間販売する。

2024年には、くら寿司で販売されるサクラダイやハマチの3分の1ほどをこのAIで養殖した魚に切り替えるという。

漁業者不足&価格上昇の解決策に

Live News αでは早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
AIを活用した養殖のハマチ、どうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
人は情緒的に物事を判断しますので、技術的な合理性だけでは理解されにくいのが食品産業の技術の特徴ともいえます。 ただ、このAIで養殖したハマチは美味しそう、食べてみたいという方は多いのではないかと思います。これは食品産業では例外的なことだと思います

内田嶺衣奈キャスター:
例外的とはどういうことなんでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
日本は戦後から高度成長期にかけて食品を工業的に作るというのは、衛生的で安全、栄養があり安心というイメージでとらえられてきました。しかし、物が溢れた1980年代以降は、工業的につくられた食品は本物ではない、体に良くないというイメージが醸成されていき、自然のままが良い、手作りが良いと思われるようになりました

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
こうした空気の中、養殖した魚は天然物と比べると味が落ちるというイメージを多くの方がもっていた時期があったと思います。それが今、「近大マグロ」のようにブランド化された養殖魚もあり、天然だけでなく養殖も美味しいんだなと理解されるようになりました。今回のAIを活用して養殖したハマチも、関係者の努力によって美味しさが担保されているのではないでしょうか

内田嶺衣奈キャスター:
養殖の技術が向上して漁業そのものが良い方向に向かうといいですよね?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
漁業は市場での価格の変動による「不安定な収入」や荒れた海上での作業を強いられることもあり、 担い手不足が大きな課題となっています。さらに、海外での魚の消費量の拡大によって魚の価格が年々上昇している中、安定した価格と量の供給を確保するのに養殖技術の向上は欠かせません。また食糧安全保障上の問題もあります。食糧自給率が低い日本で、貴重なタンパク源である魚は養殖技術の向上によって国内で自給できる状態を作り出す必要があります

内田嶺衣奈キャスター:
AI技術の活用によって、味の良さはもちろんですが、漁業にたずさわる方たちの働く環境が少しでも良い方向へと 変わっていくことを期待します

(「Live News α」6月23日放送分)