もしあなたが、参院選の比例代表の投票で「政党名」で投票しているとしたら、一票の半分の役割しか使っていないことになり、もったいないかもしれない。7月に行われる参議院選挙の前に、投票の仕方をちょっとおさらいしておこう。
「個人名」での投票は一票で2つの役割!
参議院選挙の比例代表は全国区の非拘束名簿式で、政党名か個人名で投票することができ、個人名での投票は所属する政党の票にカウントされる。政党が獲得した議席数に従って、比例候補者の中で個人名での得票数が多い順に当選者が決まる。つまり、参院選比例の個人名で投票すると、政党への投票とで人への投票、一票に2つの役割をもたせることができるのだ。
ところが、2019年に行われた前回の参院選で比例代表の投票約5007万票中、個人名での投票は25%だった。言い換えれば、比例代表で誰が当選するかは 実質的にたった25%の人の投票行動で決まっているのだ。
この記事の画像(4枚)個人名での投票、一票のチカラは小さくない!
2019年の参院選比例代表の候補者は、13政党で155人だった。特に支持する候補者がいない場合、たくさんの候補者の中から、個人名で投票すべきたった一人をどうやって決めればいいのだろうか。。2019年の参院選比例代表で、個人名での得票を得て当選した候補者の顔ぶれを見ると、大規模な支持団体がある候補者、タレント、現職の有名政治家などが多いのが実情だ。
しかし、投票した政党で誰が当選しても構わないと思わない限り、個人名で投票した方が、より参政権を生かしていると言えるのではないだろうか。例えば、比例代表の候補者に女性や若者を多く擁立している党を応援したいと思っていても、政党名を書いただけでは、当選者が女性や若者にはならないことがあるが、個人名で投票する方が、より当選結果に影響を及ぼすことができる。2019年の参院選比例代表の個人名得票数による当落の票数差は、自民党が17,131票、立憲民主党が23,371票だった。比例代表は全国区であることを考えると、個人名で投票した一票の当落への影響は決して小さくない。
個人名での得票数に関係なく当選する「特定枠」
ここまで参院選比例代表では個人名で投票する意義を説明してきたが、個人名での得票数に関係なく当選する制度がある。2019年から始まった特定枠制度では、政党が比例代表の任意の数の候補者を「特定枠」として指定することができる。比例代表での政党獲得議席のうち、特定枠の候補者がまず当選となり、その後に個人名での得票が多い順に当選となる。つまり、個人名の得票数で名簿の順位を争う比例代表の候補者がいる一方で、主要政党の特定枠候補者は、ほぼ確実に当選する。
2016年の参院選で、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差、いわゆる「一票の格差」の縮小のために、鳥取と島根、徳島と高知の選挙区が「合区」され、議席を失う地域ができた。特定枠導入の理由は、総務省の資料によれば、「政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなる」ように、ということで、自民党は候補者を擁立できなかった県の代表を特定枠にしている。なお、特定枠の候補者名を記載した投票は、政党等の有効投票とみなされる。
衆院選の比例代表では個人名での投票はNG!
参議院の比例代表では、政党名・個人名どちらで投票してもよく、候補者の名簿に順位がついていない「非拘束名簿式」だが、衆議院の比例代表では、候補者の名簿に順位がついている「拘束名簿式」で、政党名でしか投票できない。もし個人名で投票してしまった場合、無効票になってしまうので注意が必要だ。また参議院の比例代表が全国区であるのに対して、衆議院では、全国を11のブロックに分けた比例代表になっている。
夏の参院選挙では、「推し」の候補者を見つけて、2枚目の比例代表の投票用紙に個人名を書いて投票して、選挙権をフルに活用する人がどのくらい増えるか、要注目だ。ただし、安易に知っている名前を書くのではなく、本当に政治を任せたい「推し」の候補者を選ぶことが大切だ。