人生の終わりに備えて、身の回りの整理などさまざまな準備をする「終活」。自らの死と向き合う難しい取り組みだ。鹿児島テレビではこの終活を終えたという女性を取材した。まもなく80歳、終活を経て第二の人生を生きる女性がたどり着いた新たな目標とは?

変化した「終活」のイメージ

人生の振り返りや、葬儀の希望などを記す「エンディングノート」。

「令和元年6月25日。今年10月で77歳になる。そろそろ終活すべきと、このノートを購入した」

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ある女性の”終活の決意”が記されている。

榊和子さん:
父が残した大事な手紙とか。全部処分はしましたけど、これはうちの家訓だったんです。出水兵児の。私たちが寝たら目の前に家訓が見えて、これを小さい時は暗唱させられてたんです

幼い頃の思い出を振り返る榊和子さん(79)。20代のころ離婚し、会社勤めをしながら娘を育て、今は鹿児島市で1人で暮らしている。終活を終え、第二の人生を歩んでいる。

人生の終わりに備えて身の回りの整理などさまざまな準備をする「終活」という言葉は、2009年に雑誌で使われて以降、世間に広く知られるようになった。

「終活イベント」も盛況で、企画する冠婚葬祭企業の担当者は終活に対するイメージの変化を感じている。

ユウベル 鹿児島店・霧島店 外務部 松田博之統括マネージャー:
10年前ぐらいであれば、お客さんのところに訪問した時に「葬儀の話は縁起が悪い」「帰れ」と罵声を浴びせられたことも多々ありましたが、葬儀の時の備えをどういう形で自分が執り行いたいのか、前もって決める方が増えてきているのは事実です

8割が「興味ある」 お墓問題を話し合った人も

そうした一方で、終活は人生の最期、つまり「死」と正面から向き合わなければならない。街でも複雑な思いが聞かれた。

悩んでいる女性(70):
終活を考えはするけど、子どもたちにどういう風に切り出してよいかわからない

終活したくない女性(79):
まだ元気な証拠かな。まだ終活したくない。まだ先、とか思っちゃう

中には、息子からある日突然「お墓問題」を切り出され、困惑したという人も…。

お墓問題を話し合った女性(74):
え~なんでそんなこと聞くのよ?っていう感じで。「今は考えついてない」って言ったんですね。それから「ああ、やっぱりちゃんと子どもに言っておかなきゃいけないなぁ」と思って、それからしばらくして夫とも話して

2021年、民間企業が50歳から80歳の約1100人を対象に行った終活の実態調査でも「終活に興味がある」と回答した人が約8割に上った一方、継続的に終活をしている人は2割にとどまっている。

買い物に友人との食事 自分のための時間

終活に興味はあるものの実行に移せないという人が多い中、榊さんの背中を押したのはバスで一緒になったご近所さんの何気ないひと言だった。

榊和子さん:
「終活したの」と言われて。「も~便利よ」と言われたもんですから。ふと気がついたら自分も75歳ですよね。あと何年生きるかわからないから、これからの人生を一人で楽しく過ごそうと。限られた時間を

思い立った榊さんは、洋服や食器、家具などの多くを近所の人などに譲り、鹿児島市の郊外にあった家と車も手放した。

運転免許証も返納し、現在は買い物や通院に便利な鹿児島市中心部の賃貸マンションに引っ越した。買い物に出かけたり、友人と食事をしたり。一日一日が充実していると胸を張る。

榊和子さん:
気が楽ですね。あれをしなきゃ、これをしなきゃというのがないし。働きながら生きてきて、親の面倒見たりして。今はもう自分のために、お友達とグループで食べたり、同窓会の幹事をしてますので。お友達と過ごすのがやっぱりうれしいですね

2022年10月で80歳を迎える榊さん。いろいろなものを手放した中で、この春から新たに始めたことがある。それは、離れて暮らす一人娘に捧げるエッセーの執筆だ。

テーマは「私の一生」。書き上げた暁には、大切な書類の間にそっと忍ばせるつもりとのこと。

榊和子さん:
あの子(娘)が知らなかった部分を書いておこうかなと。それが私の終活ですかね。娘に残してやれる財産かなと

(鹿児島テレビ)

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