壁一面にずらりと並べられたランニングシューズ。

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トップアスリートが愛用するモデルなど、様々なシューズが並ぶ中…何やらちょっと変わったシューズが。

よく見るとそこには、自動車メーカーの「MAZDA」の文字。これは一体…。

マツダ×ミズノ「ドライビングシューズ」を共同開発

兵庫県にあるスポーツ用品メーカー、ミズノのシューズ工場。

ここで作られているのが、自動車メーカーのマツダと共同開発した運転用の靴、「ドライビングシューズ」。

足首の周りに伸縮する素材を使用し、ペダルの踏みかえをしやすくするなど、長時間の運転でも足が疲れにくいというこのシューズ。

去年7月にクラウドファンディングサービスで予約の受け付けを始めたところ、わずか2日で予定数を“完売”。この春から購入者への発送を順次始めたという。

実際に履いて運転してみると…

取材ディレクター:
では早速、ドライビングシューズを履いてみたいと思います。多少、厚みがある感じがしますね。

取材ディレクター:
さらにポイントはこのベルト。足首をカバーするベルトがあって、これを留めます。足は比較的動かしやすいですね。

実際に運転してみると…。

取材ディレクター:
実際にシューズを履いて乗ってみました。非常に足首がサポートされていて、アクセルやブレーキを踏むのがラクなので、運転が楽しくなる、そんなシューズだなと思いました。

 
 

“異業種コラボ”実現のきっかけは…

ところでなぜ、全く業種の異なるメーカーがタッグを組むことになったのか。

ミズノ グローバル研究開発部 佐藤夏樹氏:
もともとシューズの開発をしている時から靴の走り心地というのをちょうど研究しておりまして、走り心地って結局乗り心地なんだというので。ちょうど自動車業界ってまさに乗り心地を極めているというのを知っていたので、ぜひ、やらせてくださいと。

マツダ 車両開発本部 梅津大輔氏:
最初はシューズを作ろうという取り組みではなかったんですね。本当に純粋に技術、お互いが持っている人間研究の技術であるとか、知見というものを共有して。その中で、もしかして両社の技術を組み合わせたら、ものすごいものができるんじゃないかと。

“走る喜びを提供する“という思いは同じ。機能やデザインなど試行錯誤を繰り返して、今回のドライビングシューズが誕生した。

マツダ 車両開発本部 梅津大輔氏:
エンジニア同士、デザイナー同士がぶつかって。お互いに引かないし、そこはやっぱり、日本のものづくりのすごく大事なところだと思うんですけれども。

マツダ 車両開発本部 梅津大輔氏:
そのぶつかり合いというのがなぜなのかをひもとくことが、お互いできたというところが、ブレイクスルーにつながったかなと思いますね。

シューズは一足一足全て手作り。熟練した職人が細かい部分まで丁寧に仕上げるため、1日に生産できるのはわずか9足。

運転時はもちろん、乗り降りする前後の歩きやすさなど、至るところにマツダとミズノ、技術者たちのこだわりが込められている。

異業種間のコラボが生み出した新感覚のシューズ。新たなビジネスチャンスのヒントが隠されていそうだ。

ミズノ グローバルフットウェアプロダクト本部 南場友規氏:
やっている間は色々と意見のぶつかり合いもあったんですけれども、我々にないものも見えてきたり。今回マツダさんと一緒に、クルマを運転するということを分析して作った技術コンセプトを生かして、今後の商品展開を考えて、計画を考えていきたいと思っています。

内田嶺衣奈キャスター:
デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに伺います。松江さんは、この試みをご覧になりますか。

成功の秘訣は「共通の価値観」

デロイト トーマツ グループ執行役 松江英夫氏:
技術者による異業種コラボレーションのモデルになるのではないかとみています。今回の取り組みが、技術者の単なる交流で終わらず新製品開発にまでつながった。この秘訣は、早い段階から根底にある共通の価値観を共有できたこと。具体的には、人を中心にしたモノづくり、この価値観を共有できたことにあると思うんですね。

内田キャスター:
人を中心にしたモノづくりというのは、どういったものなんでしょうか。

松江英夫氏:
自動車メーカーにとっては、クルマと人の接点であるブレーキやハンドル、こういったものに今までは携わってたんですが、さらにドライバーの満足度を高めるためには、「クルマと人の間」にあるスペース、ここのシューズにも実は関心があったんですね。

半面、シューズメーカーにとっては、今までスポーツを中心とした人の動作は特に走るということ。これが中心にあったわけなんですが、さらにはスポーツ以外、車も含めた「走る」、ここにも領域を広げたいニーズがあった。こういった両者が交わることによって、「クルマと人の間」にあるスペースに開発の余地が生まれて、ドライバーに寄り添った特別な商品開発につながったという見方ができると思います。

「人とモノとの接点」に着眼を

内田キャスター:
異なる業種のメーカーがタッグを組んで新製品開発を成功に導いていくためには、何が鍵になるんでしょう。

松江英夫氏:
ヒントは、人とモノのインターフェース、接点。ここに着眼するという視点にあると思うんです。

これからのモノづくりは、モノを使う側の満足度をいかに高めるか、ここの重要性が増していきますから、人とモノの接点、インターフェースの重要性はますます高まる。言い方を変えれば、そこに携わるプレイヤー同士のコラボレーションの余地が、ますます広がっていくのではないでしょうか。

内田キャスター:
モノと人との接点に着目したコラボレーション。今までは、どんなものがあったのでしょうか。

松江英夫氏:
例えば、子どもの歯に注目してトイレタリーメーカーと電機メーカーによる音が鳴る歯ブラシ、爪に注目して化粧品メーカーと電機メーカーによるネイルプリンター、こんな取り組みも出始めているんですね。こういったモノづくりを通して、その向こうにある人の満足度や幸福。ここに向けて異業種同士のコラボレーションがますます広がることを期待したいと思います。

内田キャスター:
互いの強みを生かすことで、自社の課題解決につながる。さらに、消費者にとっても、より便利で「あったらいいな」が、もっともっとカタチになることを楽しみにしたいです。

(「Live News α」6月3日放送より)