3893件。これは札幌市内で2000年に発生した交通事故の件数だ。このうち約4分の1が、65歳以上のドライバーの過失で、事故につながったとみられている。

道交法改正で講習に加え、運転技能検査も

札幌市東区の住民センターで5月19日、特別に設けられた「運転免許返納コーナー」。

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2022年5月、道路交通法が改正され、75歳以上の免許の更新が厳しくなった。過去3年間に信号無視などの違反をした場合、講習を受けるだけでは済まなくなったのだ。

札幌東警察署 伊藤賢一 交通官:
運転技能検査が設けられました。一定の課程を実際の車で走行し、基準の点数に達しないと不合格になります。検査を合格するまで更新できない

北海道警察は法律の改正について高齢者向けの説明会を開催し、運転技能を確認するシミュレーションなどを行っている。

「怖さはある」「家族のサポートがあれば」それぞれの事情

70代の参加者:
妻に「だんだんと見えなくなっているんじゃないの?」と言われる。「見落としているよ」と。運転に怖さはあります。返納するのが良いかと思う

75歳の参加者:
今は返納できないと思う。本当は70歳くらいで返納しようと思っていた。免許がなくなってもいいという思いはあるが、そうなると健康的にもだんだん閉じこもってしまうと思う

免許を返納しに来た70歳の女性は、どこへ行くにも家族が送り迎えをしてくれるという。

70歳の参加者:
年を取ると事故を起こしやすいと、子どもたちも知ってるから。「気をつけた方がいい」と。(免許返納は)自分で決めるのならいいじゃないって

家族によるサポートが免許返納を後押しする面もあるが、親を説得するのは簡単ではないという人も…。

70代の親が車を運転する40代女性:
あんまり強く言うのもどうかなと思う。(運転には)気をつけないといけないし、区切りは大切だと言っています

林幹夫 ディレクター:
親に強く言えないはなぜですか?

70代の親が車を運転する40代女性:
気持ちが落ちこんでしまうかなと。年寄り扱いされると、どう思うのかな

返納が死活問題となるケースも…求められる支援

もう一人の女性の両親は70代。現役で働いていて、趣味のゴルフでも車の運転は欠かせないという。

国から補助金が出る、安全運転の機能がついたサポートカーに乗り換えた。

70代の両親が車を運転する40代女性:
車がなくなると、趣味も仕事も全部取り上げたような感じになる。車も危険だと思うが、全部がなくなった時に心の病気になっても困るから

免許返納で生活が維持できなくなるケースもある。公共交通機関が整備されていない地方都市だ。

人口減少で、自宅周辺に病院やスーパーがなくなってしまった地域では、運転できなくなることでこれまで通りの生活ができなくなる。足腰の悪い高齢者にとっては、死活問題ともなりかねない問題だ。

北海道内では免許自主返納のサポート制度として、車の売却で商品券1万円、タクシー乗車料金を1割引、水道修理などの作業料金1割引などの支援を行っている。

暮らしに欠かせない車。返納する世代にも、説得する世代にも、それぞれの悩みがあった。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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