ウクライナから京都にやって来た25歳の留学生、アンナ・クレシェンコさん。学業の傍ら、自ら会社を立ち上げた。負けず嫌いな起業家の日々を取材した。

女性の健康を支えるアプリ開発

アンナ・クレシェンコさん:
きょうは本当にありがとうございます。もう本当に、率直な意見をいただいて全然いいですので、今回はアプリについて色々質問させていただきたいんですけど…

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巧みに日本語を操る、アンナ・クレシェンコさん(25)。2017年にウクライナから日本にやって来た留学生だ。学業の傍ら、自ら「Flora」という会社を立ち上げた“新米起業家”でもある。

アンナさんの事業は、女性の健康を支えるアプリの開発。生理が始まった日や体調、気持ちの状態などを記録し、その情報を解析して必要なケアを提案する仕組みだ。利用者の感想も自らリサーチする。

アンナ・クレシェンコさん:
抽象的な質問なんですけど、もっと追加して欲しい希望とかありますか? なければ全然いいんですけど

ユーザーとのやり取りを終えたアンナさん。こんな場面はいつも緊張すると話す。

アンナ・クレシェンコさん:
毎回緊張しますね。自分が作ったものを他の方に見せて、他の方の意見を聞いてるときはめっちゃ緊張してますね。でも今回は良かったので、安心しました。ほっとしました

京都に来て5年。今では時々、関西弁が出るほどになったそうだ。

アンナ・クレシェンコさん:
京都は、チャリでどこでも行けるところが大好きですね。試食で八つ橋めっちゃ食べられるじゃないですか。それ言わない方がいいですね。卵かけごはんも好きです。わけ分かんないですけど

陽気なアンナさんだが、異国の地で起業をしたきっかけは、大きな挫折を経験したことだった。

閉ざされたオリンピックの夢

アンナさんのもう一つの顔、それは空手の選手。

アンナ・クレシェンコさん:
家の隣に道場がありました。6歳か7歳のときに道場に通い始めて。武道の歴史にも興味があって。『葉隠』とか読みました

負けん気が強く、一度始めたことはやり通す性格だというアンナさん。中学3年生でヨーロッパ大会3位になり、その後もプレミアリーグなどで輝かしい成績を残した。しかし…。

アンナ・クレシェンコさん:
東京オリンピックを目指して、絶対出場したいと思っていたんですが、頑張ってもやっぱりそのとき、出場選手の枠も10人くらいでしたし…

2018年のヨーロッパ大会でトップ10に入れず、オリンピックの夢は途絶えた。

目標を失っていたその時、妊娠中だったアンナさんのいとこが、うつ病のためお腹の子供を亡くしてしまったのだ。

アンナ・クレシェンコさん:
家族全員にとって大きなショックでしたし、私にとって発見でもありました。女性の健康という領域において、まだまだ解決されていない課題がすごくあると分かって。私も課題の解決のために頑張りたいと思いました

挫折と悲しみを経験して見付けた、次の生きる道だった。

留学生2人で始めた会社 社員10人を超える規模に

ウクライナは、旧ソ連時代から科学技術の開発に秀でた「IT大国」と呼ばれている。日々新しいアプリが生まれる環境で育つ中、アンナさんはデジタル技術が発展途上の日本に成長の可能性を感じていた。

そこで、同じウクライナからの留学生と2人で、日本での起業に踏み切ったのだ。

今では社員が10人を超えた。

アンナ・クレシェンコさん:
フォントが読みづらくない? 私の個人的な感覚かな? ちょっと読みづらいよね

この日は、アプリを多くの人に知ってもらおうと、広告についてミーティングをしていた。

Flora 高田涼太さん(21):
僕はぬるま湯に育ってきた典型的な日本人なんで、我慢しちゃって自分で抱え込んだり、批判をすごく遠回しに言ったりとか時間がかかるんですけど、アンナさんは普通に言うんですよ。最初は「そんな言われんの?」って思うんですけど、そのいいところを享受して自分の価値観が広がって

負けず嫌いな起業家。目標を共有し、毎日最善を尽くす。

アンナ・クレシェンコさん:
うちの会社は、家族ではなくてスポーツチームです。遅れている人が出たら、全員が負けるんで

故郷ウクライナに暮らす母 迫る戦争の影

アンナさんの母親は故郷・オデーサで一人暮らしをしていて、2人は毎日のように連絡を取り合っている。ロシアによる軍事侵攻が続き、街は度々攻撃を受けている。

アンナさんの母:
地下室を開けて作業員を待っているの。自分たちで防空壕を作るのよ

アンナ・クレシェンコさん:
私がどんな娘かって、記者さんが尋ねているわ

アンナさんの母:
泣かせる気ね…。あなたはこの世で最高の娘よ。あなたがいることを神に感謝しているわ。これこそ世界一の幸せよ。泣いちゃってごめんなさい。本当に愛してる。周りにもあなたを愛してくれる人がいてくれて本当に良かったわ

アンナ・クレシェンコさん:
私をめちゃくちゃ愛していると言いました。私を、世界中で一番いい娘だと言ってくれました。日本に来てほしいですけど、実家を離れたくないとずっと言ってますね

それでも、アンナさんの頑張りがきっと故郷にも届くと信じている。

アンナ・クレシェンコさん:
スポーツをやっていた時には、本当に毎日頑張れることに意義があったように、いま毎日頑張っている事にも意義があると感じています。本当にやらなければならないことが多すぎて!最近は焦っていますね。瞑想(めいそう)を始めないといけないと思っています

挫折や悩みを乗り越えて道を見つけてきたアンナさん。「やると決めたこと」をこれからもやり通す。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年5月17日放送) 

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