介護業界の課題を“当事者”たちに寄り添いながら解決に導こうとする企業がある。
株式会社シルバーウッドの代表取締役・下河原忠道さんは、現場での気付きがきっかけとなり、鉄鋼業界から介護業界へ参入した。

「鉄鋼会社の出身ということもあり、『サービス付き高齢者向け住宅』という新しいジャンルが始まって、日本中の高齢者施設を自分の目で視察して回りました。どこの高齢者施設も管理、管理で必ず玄関の鍵が閉まっていたんです」(下河原さん)
掃除も配膳もできる限り入居者が行う
そこで2011年に、下河原さんは“入居者を管理しない”サービス付き高齢者向け住宅の運営を始める。
建物の入り口には、入居者が店番をする駄菓子屋があり、地域の子どもたちはお菓子を買って、そのまま中で遊ぶこともできる。

玄関は常に開いているため、入居者の家族が訪ねて来たときに自由に出入りができるようになっている。
「役割があれば生活に張りが出る」ため、共有スペースの掃除や配膳はできる限り、入居者が行う。

部屋では自宅から持ってきた好きなものに囲まれて過ごすことができ、希望があれば自分の部屋で最期を迎えることも。そして、「お別れの会」を開くこともできるという。
最期までその人らしくいられる場所を提供する、下河原さんが目指す高齢者住宅のカタチとは。
「人がより良く生活する場というのは、どういう場なのかということをずっと追求してきました。いくつになっても役割を持って楽しく生きている姿に意味があると思います」(下河原さん)
VRで“疑似体験”して理解する
高齢者向け住宅を運営する傍ら、下河原さんは2016年に、認知症を疑似体験できるVRコンテンツを開発した。

「認知症は我々にとってかなり未知なものです。最初に接するのは家族なので、怒っちゃったり、中には叩いちゃう人もいるかもしれない。正しい知識、理解で接していくことによって、もしかしたら抑えられたかもしれない」(下河原さん)
介護職や社会福祉士の研修会など、これまでに8万5000人が「VR認知症」を体験している。

VRコンテンツでは、認知症の人が車から降りる時の視点も再現。「視空間失認」という、車から降りる際にまるでビルから飛び降りるように見える症状のイメージも疑似体験することができる。
この体験を通して「車から降りられない」や「突然騒ぎ出してしまう」などの行動に理由があることも理解できるのだ。
こうした映像は若年性アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の当事者から取材を重ねて制作した。
研修会の体験者は「こんな見え方をしているんだと、すごく驚きました」と感想を述べた。

他にも発達障害やワーキングマザーを疑似体験できるVRコンテンツがある。
他者の視点に立ち、みんなが生きやすい社会を望む下河原さんは「さまざまな“一人称体験”を疑似体験することで、少し理解が及ばなかった部分にみんなが理解を示して、年の差も性別も何もかも関係なく、みんなが楽しく過ごしている姿を見ると、『これだよな』って思う」と未来を見据えた。
株式会社シルバーウッド
https://www.silverwood.co.jp/
「フューチャーランナーズ~17の未来~」
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