新型コロナウイルスの感染拡大で不自由な生活が続く反面、状況を逆手にとった新しい商品やサービスが生まれている。

営業自粛で売上7割減 2人の若手が奮起

岩手県一関市の入浴施設では、新型コロナウイルスの影響による利用客の減少に歯止めをかけるべく、全国的にブームとなっている「サウナ」で活路を見出そうとしている。

静かなサウナ室で日々の喧騒を忘れ、90度近い熱気でじっくり体を蒸し、火照った体を水風呂で一気にしめる。外に出るとさわやかな風…何とも言えない心地よさに包まれる。

東北自動車道一関インターチェンジを降りると見えてくるのが、入浴施設「古戦場」。80年以上にわたり、一関市民の心と体を癒してきた。

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そんな古戦場にも、新型コロナウイルスの影響が…。

施設全体の収益の8割以上を占めていた宴会場などの飲食部門が、一時営業自粛に追い込まれ、大打撃を受けた。

そんな困難な状況の中で立ち上がったのは、気持ちよさそうに汗をかく古戦場のスタッフ、井上心太さん(24)と中村淳平さん(24)だ。

古戦場・井上心太さん:
自分たちは最初、厨房で働いていて、飲食部門の売り上げは7割減。本当にやることが無くなってしまった

特許のサウナハットと「アウフグース」で人気に

そこで2人は3カ月分の給料を前借りし、古戦場オリジナルのサウナグッズを購入。それを全国各地の入浴施設で販売する旅に出た。

2021年10月までの約3カ月で全国15カ所の入浴施設を巡り、売り上げは約280万円になった。中でも特に人気があったのは「サウナハット」。かぶることでのぼせにくくなる。

古戦場・井上心太さん:
古戦場が特許を取った。タオルをこうやって通すと顔が隠れる。これが一番売れたかもしれない

さらに旅では、サウナでより発汗を促すために室内で発生させた蒸気をタオルで送る「アウフグース」と呼ばれるサービスを身につけた。

岩手県内では珍しい「アウフグースが楽しめる施設」としてその口コミは広がり、サウナ検索の人気サイトのランキングで岩手1位、東北では3位になった。

特に若い年代の利用客は新型コロナウイルス流行前の水準を上回り、まさに「サウナで活路」を見出した。

ホール担当から熱波師に 年の差約50歳の師弟関係

その起爆剤となったアウフグース。熱い風を送る人を「熱波師」と呼ぶ。

古戦場では、2022年3月に新たな熱波師がデビューした。2022年9月で70歳になる新人の「熱波熊谷」こと、熊谷秋男さんだ。

サウナハットを持ち、熊谷さんの熱波を浴びてみることに。

細田啓信アナウンサー:
すごく気持ちがいい。強い風で来ると、熱さの伝わり方が全然違いますね。満足を通り越してうれしいです

熱波師を始める前は施設内のレストランでホール担当だった熊谷さんも、古戦場を助けようと熱波師になった。そこでアウフグースの師匠となったのが、全国で技を磨いてきた井上さんと中村さんだった。

細田啓信アナウンサー:
孫の世代から教えられる立場じゃないですか?

古戦場・熊谷秋男さん:
そうですね、孫です。(厨房では)黙々と仕事をしている姿が熱波に乗り移って、真面目な孫だと思っている

古戦場・井上心太さん:
こんなおじいちゃんみたいな人に教えると思っていなかった

年の差は約50歳。新型コロナウイルスにより社会に閉塞感が広がる中でも、2人からは充実感が感じられた。

古戦場・熊谷秋男さん:
熱波師になり、「よく頑張っている」と褒められ、励みになっている。お客さんに喜んでもらえるような熱波師になりたい

古戦場・井上心太さん:
東北では、まだ熱波やアウフグースという文化が根付いていない。古戦場から、東北エリアでも熱波というのを広めていきたい

(岩手めんこいテレビ)

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