大手商社7社の2021年度の決算は、資源価格の高騰などにより、最終的な利益が全社で過去最高となった。

資源価格高と円安

大手商社の2021年度の決算が出そろい、最終的な利益は、三菱商事が2020年度と比べて5.4倍の9,375億円、三井物産が2.7倍の9,147億円、伊藤忠商事が2倍の8,203億円となるなど、7社全てで過去最高となった。

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新型コロナウイルスで落ち込んだ世界経済の回復やウクライナ情勢の緊迫化で、原油、石炭、鉄鉱石などの資源価格の高騰が大きく影響していて、円安により利益がさらに押し上げられたかたちだ。

一方、2022年度の最終的な利益は、新型コロナウイルス再拡大のリスクやウクライナ情勢など先が読めない不透明な状況が続いているとして、三菱商事が8,500億円、三井物産が8,000億円とするなど、7社のうち6社が2021年度を下回る見通しを示した。

再エネ、デジタル分野への投資加速へ

三田友梨佳キャスター:
経済アナリストの馬渕磨理子さんに聞きます。
円安と資源高の追い風を受けて商社の好決算、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
5月決算の読み方は終わった期の「成績」とこれから始まる今期の「見通し」の2つ発表されます。

まず、終わった期の商社の成績は、資源高の恩恵を受けて好調ですので、大手商社は軒並み過去最高益です。
一方、これから始まる今期の見通しについてですが、ロシアのウクライナ侵攻による影響はありますが資源高も一服する見通しもあり、10~20%「減益」に転じる見通しを出している企業が多いです。

実際、本日の決算発表後の株式市場の値動きを見てみると、一旦利益確定の動きが見られました。マーケットは「終わった成績」よりも、これからどうなるのかの「未来予想」というメッセージで動きます。

三田キャスター:
予想される未来の商社のカタチとはどういったものですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
資源ビジネスは莫大な利益をもたらすため、商社の稼ぎ頭である一方、今回の決算でもわかるように資源価格の影響を受けて業績が大きく左右されてしまいます。

さらに、石油や天然ガスに代表される化石燃料はいまは稼ぎ頭であっても、これからの「持続可能な社会」「脱炭素社会」にとって存在意義さえも考え直さなければならないという大きな課題を負っています。

そこで今回の資源で得た利益をどう上手く、非資源分野の拡大に繋げるかがこの先の商社のポイントになります。

三田キャスター:
新たな成長を求めてどのような分野への投資が必要なんでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
コロナ以前から各商社は「脱資源」を掲げて、非資源分野の事業を拡大することを進めてきました。なかでも伊藤忠商事は非資源分野の利益が占める割合が7割を超え、暮らしに関わる生活消費関連の事業を拡大させてきた代表例です。

今後はカーボンニュートラル社会の到来を見据えて「脱資源」を果たし、成長が期待できる「再生エネルギー」やデジタル分野などへの投資を加速させることが求められています。

世界的な投資家であるバフェット氏は、日本の商社が 「割安に放置されている」と指摘しているように、非資源分野でも十分に戦える力があると思います。

三田キャスター:
資源高もいつか落ち着くと考えると経営体力が十分な今だからこそ、次世代の事業に向けて開拓していくことが重要なのかもしれません。 

(「Live News α」5月10日放送分)