ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、ロシア軍に包囲されているマリウポリの製鉄所から、国連も関与する形で市民の避難が始まったと明らかにしました。
市民は北西にある街、ザポリージャを目指していて、すでに第一陣約100人は移動中だということです。

製鉄所の市民避難開始 一方で迫る「5.9」に“宣戦布告”のおそれも?

製鉄所の内部には、市民1,000人がいたとされ、順次避難させる予定としています。プーチン大統領が「ハエ一匹も通れないよう」封鎖を命じていたこの製鉄所からの避難は初めてです。

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そんな、プーチン大統領がこだわる一つの期日が、第2次世界大戦で旧ソ連がナチスドイツに勝利した日である“戦勝記念日”です。
この記念日に合わせて、ウクライナへの侵攻に関連してある可能性が指摘されています。

イギリスのウォレス国防相は、軍事侵攻を「特殊軍事作戦」と位置づけていたプーチン大統領が、戦勝記念日である5月9日に、ウクライナと「戦争状態」にあることを宣言し、国民に総動員をかける可能性があるとの見方を示しました。

特別軍事作戦の“勝利宣言”のはずが一転、“宣戦布告”ともとれる見解です。果たして、プーチン大統領の思惑とは一体何なのでしょうか。
ロシア政治に詳しい、筑波大学の中村逸郎名誉教授はこう指摘します。

なぜ?戦勝記念日に“宣戦布告”の可能性 中村名誉教授の見解は

筑波学院大学教授 中村逸郎さん:
プーチン大統領は、宣戦布告という最後のカードを切らざるを得ない状況にまで追い込まれてしまっているということなんです。泥沼化すると思いますよ

5月9日の「5.9」というのは非常にロシアにとっては大きい意味合いの日になります。このような中で、イギリスのウォレス国防省は「戦勝記念日である5月9日に『戦争状態』にあることをプーチン大統領は宣言する可能性がある」と指摘をしていました。

なぜ“戦争宣言”なのか。

中村教授はロシアの意図について、「これまでは『特別軍事作戦』という言い方をしていたウクライナへの侵攻が思いのほかうまくいっておらず、失敗をしている」「“宣戦布告”いわゆる“戦争宣言”をすることで巻き返しを図り、国家総動員で動いていきたい、あとは、NATO、これで欧米をけん制していきたい」と説明します。

めざまし8はプーチン大統領の思惑について、フジテレビの風間晋解説委員にも話を聞きました。

愛国心誘う「祖国防衛戦争」…核兵器を使うハードル下がるおそれも

フジテレビ解説委員 風間晋:
いま、戦争っていう場合には、プーチン大統領には「侵略戦争」っていうのがないんですよ。
この戦争は「祖国防衛戦争」だっていう言い方をして、それでいま9日を前に、ロシア国内は愛国心が非常に高まっているタイミングではありますから、ここでさらに国民の愛国心に訴えていくということだと思います。
それから、祖国防衛戦争っていうことになると防衛のためであればを何やってもいいと。それこそ、化学兵器だとかあるいは小型の核兵器を使うハードルが下がるっていう懸念がある、そこは心配です

Q.『祖国防衛』を理由に、別の国・ウクライナに攻め込んでいるわけですが、プーチン大統領としては旧ソビエト圏を全部取り戻すという意味で、ウクライナもロシアと一緒という意味になるのでしょうか?

フジテレビ解説委員 風間晋:
そこは、裏テーマですよね。要するに、表立ってはそういうふうに言っても国内的にも国外的にもそんなに受け入れられる話じゃないです。でも、祖国を守るために戦っているということになればそれは少なくとも国内的には受け入れられる可能性がずっと大きくなるという計算があると思います

Q.他の国に侵略していてもそれは祖国の防衛のためということでしょうか?
フジテレビ解説委員 風間晋:

建前的にはそういうことであって、うちは今、侵略戦争をやっていますっていう国家指導者はいませんよ、世界中どこを見ても。ですから、防衛のための戦いだっていうわけです。

Q.そうなると侵攻の長期化がどこまでいくのか先が見えない状態となります
フジテレビ解説委員 風間晋:
戦いが長期化すると、ロシアに対する経済制裁もその分長期化して強化されていくわけですよね。世界経済への影響も長引きます。少なくともエネルギー分野を中心に、脱ロシア化も進みます。
ということは、日本のガソリンとか、あるいは電気とかその他全般的な物価高っていうのはこれからもまだまだ続く可能性を考えなきゃいけない。円安も続いていきそう。では、いま日本は抜本的な政策を変更しなくていいのか、そういう圧力がこれから増していくと思いますよ

(めざまし8「#NewsTag」5月2日放送)